自前の配送網を構築するアマゾン、外部業者への依存度低下を狙う
米ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、米アマゾン・ドットコムと米宅配・航空貨物大手UPSの関係が、ここ最近悪化しているのだという。
長年の友がライバルに
ネット通販大手のアマゾンはUPSの最大の顧客。UPSがアマゾンとの契約で得る収入は今年10億ドル超に上り、10年前の約5倍に拡大したという。
だがアマゾンは都市部などの人口の多い地域ですでに自前の配送網を構築している。自社でトラックを持ち、ドライバーや配達要員を雇い入れているほか、将来的にはドローン(無人機)を使った宅配サービスも実現したいと考えている。
さらにアマゾンは過去3年で、UPSから管理職や経営陣を40人以上引き抜いている。今年9月にはUPSで16年間、配送網のエンジニアリングを担当していたベテランが、アマゾンの仕分けセンターのエンジニアリング担当ディレクターに就任したという。
両社はかつて、配送経路のデータを共有するなど、良好な関係を持っていた。だがアマゾンの計画が今後進めば、UPSにとってアマゾンはもはや重要な同盟ではなく、自社の事業を妨害するライバルになる可能性があるとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
増加するコストと遅延の問題を解決
アマゾンがこうして代替配送手段を模索する背景には、2つの理由があると言われている。
1つは増え続ける配送コストの問題。例えばウォールストリート・ジャーナルの記事が引用したアマゾンの資料によると、2009年に20億ドルに満たなかった同社の配送コストは、2014年に87億ドルに拡大している。
また今年7〜9月期のアマゾンの全売上高に占める配送コストの比率は11.7%となり、1年前の10.4%から上昇した。
もう1つは、配送遅延の問題。
同紙によると、UPSの配送は2年連続で年末時期に遅延があり、アマゾンが顧客に約束していたクリスマスまでに商品が届かなかった。このためアマゾンは顧客に送料を払い戻し、ギフトカードを贈って謝罪したという経緯がある。
同社はこうした問題を解決すべく、UPSなどの業者への依存度を減らしたいと考えるようになったのだという。
アマゾン、自前の空輸業務を計画中
なお、このウォールストリート・ジャーナルの報道に先立ち、米シアトル・タイムズなどのメディアは、アマゾンが、航空機を使った自前の輸送業務を始める計画を立てていると報じた。
それによると、アマゾンは現在、複数の航空貨物会社と約20機のボーイング767を賃借する契約について協議しており、来年1月下旬にも自前の空輸業務を始めたいと考えている。
また同社はオハイオ州ウィルミントンの航空貨物会社、エア・トランスポート・サービシズ・グループ(ATSG)と提携しており、空輸業務の試験運用を始めている。
このATSGは、貨物機のリースや運航サービスのほか、保守などの関連サービスを航空会社などの外部企業に提供している。アマゾンもこうした一括サービスを利用し、自社の空輸業務を本格展開するものと見られている。
シアトル・タイムズの記事も、そのアマゾン目的について、コスト削減と遅延問題の解決と伝えている。
同紙によると、UPSやフェデックス(FedEx)などの既存の輸送サービスは、急速に伸びる電子商取引事業の成長を妨げる要因になるとアマゾンは考えている。同社はこうした外部企業への依存を減らし、自社で輸送業務を管理したい考えだと、同紙は伝えている。
(JBpress:2015年12月25日号に掲載)