イージス・システム搭載艦の新旧イメージ絵から設計変更の比較
7月12日、防衛省から令和6年(2024年)版「防衛白書」が発表されました。その中で「イージス・システム搭載艦」の新しいイメージ絵が公開されています。(令和6年版防衛白書の278ページに「図表Ⅲ-1-4-5 イージス・システム搭載艦の能力」が掲載)
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この記事では防衛省の資料から「イージス・システム搭載艦」の新旧イメージ絵から設計変更の比較を行います。なお旧イメージ絵は年代によって複数があり、今回の比較用には最新のイメージ絵の一つ前の旧いものを使用します。
「イージス・システム搭載艦」新旧イメージ絵の比較
新旧イメージ絵の変更点
- 艦首の上面が丸くなった→もがみ型護衛艦に似た設計
- 艦首の甲板が一層高くなった→もがみ型護衛艦に似た設計
- 艦中央のSSM発射筒が剥き出し式から箱型の形状に変更
- 艦後部側面にMk46に似た対水上小型艇用遠隔操作機関砲
- 電子戦装置や衛星通信装置など細部の装置の描写を追加
- 艦尾のLSO(ヘリコプター発着艦指揮所)の位置を修正
参考:ロッキード・マーティンのイージス・システム搭載艦イメージ絵
- イージス・システム搭載艦はロッキード・マーティン製SPY-7レーダーを採用しており(イージス・アショア選定時に購入したもの)、同社が日本防衛省の旧い方のイメージ絵をベースに独自に細かくディティールを追加して作成したイメージ絵。
艦首の上面が丸くなった→もがみ型護衛艦に似た設計変更
艦首の上面が丸く変更されています。これは海上自衛隊の最新鋭護衛艦「もがみ」型と同じ特徴となります。
参考:護衛艦「もがみ」の丸い艦首
艦首の甲板が一層高くなった→もがみ型護衛艦に似た設計
艦首の甲板が一層高くなっており、揚錨機が艦内に収納されてステルス性が高くなります。艦首の上面が丸くなったのもこの目的と連動した設計で、「もがみ」型と同じ特徴となります。
艦中央のSSM発射筒が剥き出し式から箱型式に変更
艦後部にMk46に似た対水上艇用遠隔操作機関砲を搭載
旧イメージ絵のSSM発射装置は発射筒が剥き出しの通常の設計でしたが、新イメージ絵ではSSM発射装置らしき箱型の構造物が配置されています。(※SSMとはここでは艦対艦ミサイルの略)
また新イメージ絵では艦後部の側面にMk46に似た対水上艇小型用遠隔操作機関砲らしき装備が見えます。旧イメージ絵では同じ場所に丸い構造物が配置されていますが、ディティールが荒いので砲身は見えていません。ただし旧イメージ絵を元にしたロッキード・マーティン社のイメージ絵では同じ位置に機関砲を確認できます。
参考:ロッキード・マーティンのイージス・システム搭載艦イメージ絵
ただしこちらの艦後部の側面に置かれた対水上小型艇用遠隔操作機関砲はMk46とは全く似ていません。また艦中央部のSSM発射装置は発射筒が剥き出しの形式です。
参考:Mk46(30mm機関砲)
参考:コンテナ式SSM発射装置
※海上自衛隊の計画している「コンテナ式SSM発射装置」はアメリカ軍のロッキード・マーティン製Mk70VLSとコンセプトが同様の発射装置である可能性が高い。ただしイージス・システム搭載艦用の箱型SSM発射装置と関連があるかは不明。
参考:ロッキード・マーティンのMk70VLS。Mk41のコンテナ型