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危な気なく金メダルを獲得したドリームチームだが…

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 パリ五輪、男子バスケットボール決勝は、NBAのスーパースターを集めたアメリカ代表と開催国との対戦となり、98-87でドリームチームがフランスを一蹴した。

 試合終了まで残り2分58秒となった折、地国の大声援を背に受けるフランスの若きエース、ビクター・ウェンバンヤマ(20)のシュートが決まり、3点差まで詰め寄る。

写真:ロイター/アフロ

 だが、ここから千両役者ぶりを発揮したのがアメリカ代表の背番号4、36歳のポイントガード、ステフィン・カリーだった。最終Qの7分12秒、8分7秒、8分46秒、9分25秒と立て続けに3Pを決める。2015年、2017年、2018年、2022年とNBAチャンピオンとなり、2016年、2021年には得点王に輝いたキャリアは、大舞台でこそ生きた。

 決勝でのカリーは30分間コートに立ち、24得点5アシスト、2スティール。放ったシュート14本のうち、1本を除いて3Pという気の強さで、8本を成功させた。

写真:ロイター/アフロ

 両チーム通じて、最長のプレー時間でファンを魅了した“KING”レブロン・ジェームズは、14ゴール10アシスト6リバウンド。このゲームの先制点をダンクで挙げたように、ここぞという時に確実にゴールし、チームを牽引した。

 4度目のオリンピック金メダリストとなったケビン・デュラントも31分の出場。15得点4アシスト4リバウンドと、いぶし銀のプレーを見せた。

写真:ロイター/アフロ

 スターティングで起用された27歳のデビン・ブッカーも、15得点3アシスト6リバウンドと、すっかり代表のユニフォームが似合う男となった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ただ、KINGのレイカーズの同僚であるアンソニー・デイビス、そしてフランス国籍を得ながらもアメリカ代表チームを選んだことで、今大会中終始場内からブーイングを浴びていたジョエル・エンビードは精彩を欠いた。両者共に、フランス陣にスピードで振り切られるシーンが目立った。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 筆者は今年の1月22日、ジョエル・エンビードが70得点を挙げ、フランチャイズ記録を更新したゲームでウェンバンヤマとマッチアップする光景を会場の記者席から目にした。しかし、パリ五輪ファイナルではすっかり形勢が逆転していた。ウェンバンヤマの成長ぶりが、それだけ顕著な証だ。

 銀メダルとなり、涙を流す20歳のウェンバンヤマにとって、転機となるゲームになったのではないか。この悔しさを糧に、大いなる飛躍が期待できそうだ。

写真:ロイター/アフロ

 有終の美を飾ったアメリカ代表チームだが、それぞれのチームに戻ってNBAでの戦いが始まる。ここ数年、KINGは孤軍奮闘せざるを得ず、彼を生かすチームメイトの存在が無い。周囲に恵まれれば、今回のような結果を出せるだけに、レイカーズの補強に注目したい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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