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「実力が足りないというのは一局指すごとに感じる」史上最年少四冠・藤井聡太新竜王(19)記者会見全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――藤井新竜王、おめでとうございます。

藤井聡太新竜王「ありがとうございます」

――竜王という最高峰のタイトルを今日(11月13日)手にされた。その感想を改めて聞かせてください。

藤井「はい。そうですね、まだ実感が湧かないところはありますが、竜王位というのは最高峰のタイトルですので、とても光栄に思っています」

――豊島竜王という強い棋士と今年度、ずっとタイトル戦を続けてきて、王位戦、叡王戦、竜王戦とすべていい結果が出た。その要因は?

藤井「豊島竜王との対戦、そうですね、本当に全体を通してけっこう押されている対局が多かったので、結果を出せたことは幸運だったのかな、と感じています」

――竜王獲得で序列1位。終局直後「それに見合う実力をつけていければ」と語っていた。これから棋士としてどのような方向性、目標を持ってやっていく?

藤井「今回、竜王を獲得することができて、やっぱり竜王位の重みというのは感じますし、それにふさわしい将棋を指していければというふうには思っていますが、目標としてはやっぱり、これまでと変わらず、強くなるということを目標に据えて取り組んでいければというふうに考えています」

――全棋士中の序列で1位となったことについて。

藤井「そうですね・・・。それについてはあまり、意識したことはなかったんですけど・・・。うーん・・・(長考)。そうですね、1位というのは光栄なことかなと思いますし、同時に身の引き締まる思いでもあります」

――王位戦七番勝負、叡王戦五番勝負、竜王戦七番勝負で合わせて豊島竜王と「十九番勝負」。得られたものは?

藤井「全体を通してこちらが気づいてない好手を指されたり、あるいは気づいてない間にわるくなってしまったりということがけっこう多かったので、やっぱり本当に、自分の課題を突きつけられたと同時に、とても勉強になったのかな、というふうに感じています」

――本日11月13日は師匠の杉本昌隆八段の誕生日。

藤井「師匠の誕生日というのはまったく知らなかったんですけど(微苦笑)。うーん・・・。そうですね、うーん・・・。本当にこれまでお世話になってばかりだったので、初めてそういうプレゼントのようなものができたのかな、とは思います」

――将棋界八大タイトルのうちの四冠を獲得した。「藤井一強時代」という声もある。

藤井「今期はこれまで結果が出せていますけど、内容的には課題が多いですし、自分としてはそういう印象はまったくなくて、まだ常に危機感をもってやっています」

――「竜王戦の賞金額っていうのは、将棋界の最高で4400万円なんですけれども、もし、あったらでいいんですけれども、この賞金額で、たとえばご自身にとって有意義な使い方、使えるようなビッグプランがありましたら、教えていただいてよろしいでしょうか?」

藤井「いや・・・(苦笑)。うーん・・・。いや、それはまったく考えていませんでした(苦笑)」

――「名古屋城を買うとか、そういうのはナシですね?」

藤井「そうですね、まあゆっくり考えたいと思います(苦笑)」

――強くなってる実感は?

藤井「今年は特に序盤について重点的に取り組んでいるので、そのあたり、以前より成長できたところはあるのかな、と感じています」

――本局の終盤はどのようなことを考えていた?

藤井「本局は封じ手のあたりは、けっこうまずまずなのかな、と思っていたんですけど、ちょっとそのあと具体的な手順がわからなくて。(104手目△8七飛成と)飛車を成ったところは、手順を尽くされたらやっぱり、厳しいのかな、と思っていたんですけど・・・。ただ、最後けっこう、お互いの玉が詰むか詰まないか、きわどい形が多いので、自分としては負けを読み切っていたというわけではなかったです。

――わからなかった?

藤井「そうですね。どちらといえばこちらが負けの変化が多いとは読んでいて思ったんですけど、ただ、先手(豊島側)がどの順が一番いいのかというところまでは、はっきりわかっていなかったです」

――どういうところで実力が足りないと感じる?

藤井「実力が足りないというのは一局指すごとに感じることで。やっぱり、本当に対局ごとにうまく判断できない局面というのがあるので、やっぱりそういう局面を減らしていかないといけないのかなというふうに感じています」

――現在、王将リーグを戦っている。5つめのタイトル挑戦、獲得に向けての抱負は。

藤井「王将リーグに関しては、ここまではいいペース(4勝0敗)で来れているので、残り2戦もしっかり集中して指せればとは思ってます」

――「竜王となられ、四冠となられましたが、将棋ファンにとっては、もっと藤井竜王の素晴らしい対局を見たいと思っていると思います。もしご自身で『こんなルールで対局してみたいな』っていう将棋はありますでしょうか?」

藤井「すみません、質問、もう1回お願いできますか?」

――「ええとですね。ご自身で『こんなルールで対局してみたいな』っていう対局とかは、将棋はありますか?」

藤井「あ、ルールですか?」

――「はい」

藤井「いや、そうですね・・・(微苦笑)。いや、ただ将棋っていうのはけっこう指すごとに本当に、現在のルールですごくバランスが取れているな、という印象ですので、おそらく、いまのルールが一番もっともバランスがいいのかな、とは思います」

――「はい。藤井竜王にとって将棋とはいったい、一言でいうとどんなもんなんでしょうか?」

藤井「ああ、そうですね・・・(微苦笑)。将棋というのは本当に奥が深くて、どれだけ考えてもわからないものではあるんですけど・・・。本当に指すごとに新しい発見を与えてくれるものなのかな、というふうには思います」

――「それでは、最後にですね、全世界の視聴者の皆さまとですね、本日誕生日である師匠にですね、後ろの手を振ってるカメラマンがいますので、竜王としてですね、ぜひ一言、お願いいたします」

藤井「本日も対局を観戦していただきまして、ありがとうございます。本局もけっこう終盤は苦しい局面が多かったと思うので、まだ実感が湧かないところではあるんですけど、今後竜王としてこれまで以上に精進して、より面白い将棋をお見せできるようにしたいというふうに思っています。今後ともよろしくお願いします」

(2021年11月13日夜、竜王戦七番勝負第4局終了後)

(ほとんどの質問については全体的に短くまとめ、適宜補足、編集した)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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