日本は33.2%…国民負担率の国際比較の実情をさぐる
消費税や社会保険料の料率や金額の動向が話題だが、これは生活に直結するお金関連の話だからに他ならない。これらの国や社会全体のための個人や組織の金銭負担は、他国と比べてどのような水準にあるのだろうか。OECD(経済協力開発機構)のデータベースOECD.Statの公開値(※)を基に実情を確認する。
最初に示すのは租税負担と社会保障負担を合わせた国民負担。単純な金額ではなく、それぞれの国の対GDP比率で算出している。要は国内で新たに生み出された商品やサービスの付加価値のうち、どれほどが国全体を支えるために徴収されているかを示したもの。直近値は2021年分だが、一部の国ではそれ以前の値までしか公開されていないため、その場合は一番新しい値を適用している。
国により社会保障制度には違いがあるため、同一基準で値を抽出すると社会保障負担率がゼロ、あるいはそれに近い値となる国がある。その国は社会保障が行われていないのではなく、租税からまかなわれているまでの話。
全体的な国民負担率で見ると、もっとも高負担なのはデンマークの46.9%、次いでフランスの45.1%。さらにオーストリアの43.5%と続く。OECD平均では34.1%。おおよそGDPの1/3が国全体を支えるために徴収されていることになる。
日本はといえば国民負担率は33.2%。意外かもしれないが、OECD加盟国の中では日本は国民負担率は低い部類に入る。
続いて租税負担と社会保障負担を分けて確認する。まずは租税負担。
社会保障負担が実質的に租税負担と合算されているデンマークが飛びぬけて高い値を示している。他方、同様の社会システムを採用しているニュージーランドやオーストラリアも高めだが、デンマークほどではない。OECD平均は25.0%。
日本はといえば19.8%で、OECD加盟国では下から7番目の低さ。消費税などの間接税を加えても、日本では租税負担は低いことが分かる。
他方、社会保障負担ではどうだろうか。
OECDの平均は9.0%。最大値を示すのはチェコとスロベニアの16.4%、次いでスロバキアの15.7%、オーストリアの15.4%と続く。日本は13.4%でOECD平均よりも高い値。
実質的な社会保障への資金の投入に関しては国ごとに仕組みが異なるため、単純な金額だけでの比較はリスクを伴うものになる(その発想ではニュージーランドやオーストラリア、デンマークは社会保障をまったくしていないことになるが、それは間違いでしかない)。他方、他国との比較の限りでは、日本は国民負担はどちらかといえば低いレベルでとどまっており、さらに租税負担は相当低い状態にあるのが現状ではある。
政府のそろばん勘定の上では、歳入が少ない以上、歳出も相応のものにする必要がある。詳しくは別途検証するが、足りない分を国債の発行などで補っているとはいえ、日本は実質的に「小さい政府」状態にある(むしろ逆で、歳入が少ないからこそ国債発行額が増えているとも表現できる)。国に何らかの施策上の改善を求める、必要とするのならば、税率の引き上げや経済そのものの拡大による歳入の増加を推し進める必要があるのだろう。GDPそのものが増加すれば、対GDP比はそのままでも金額は増えることになるからだ。
■関連記事:
【大きく増える社会保険料…70年あまりにわたる税金や社会保険料の負担の実情をさぐる(2022年公開版)】
※OECD.Statの公開値
言葉の定義は次の通り。国に対する金銭的な負担(国民負担)は大きく租税と社会保障に分けられる。図式としては国民負担=租税負担+社会保障負担。OECDでは社会保障負担に関して「Social security contributions」で定義をしているが、それによれば将来における何らかの不利益に対して国から便益(社会給付)を受ける資格を得るために必要な強制的支払いであると定義している。具体的には事故や障害、病気に対するサポート、老化や障害などに対する年金支払い、医療費などへの対応などが該当する。日本ならば健康保険料や年金保険料が該当する。会社組織の場合、従業員が支払う額に加え、会社側が負担する額も含まれる。社会保障や租税の仕組みは国々で異なるため、個々の値を単純比較するのは問題が生じるが、OECD側では極力同一の基準で合算し、比較ができるような値として公開している。また、租税負担には法人税や、間接税となる消費税なども含まれている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。