Yahoo!ニュース

Apple、有利な判決勝ち取るも上告検討中 Fortnite訴訟、米控訴裁も独占認めず

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米アップルのアプリ配信サービス「App Store」を巡り、人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」の開発元とアップルが争っていた反トラスト法(独占禁止法)訴訟で、米連邦控訴裁判所(日本の高裁に相当)は4月下旬、アップルによる市場独占を認めなかった一審の判決を支持した。

10項目中9項目でアップルに有利な判決

争点となっていた10項目のうち9項目で再びアップルに有利な判決が下された。これを受け、アップルの広報担当者は「アップルが州と連邦レベルで反トラスト法を順守しているという判決が2年で2回下された。この訴訟におけるアップルの圧倒的な勝利を再確認するものだ」と述べた。

この法廷闘争の発端は2020年8月だった。フォートナイトの開発元である米エピックゲームズは、アップルが徴収しているApp Storeの手数料が法外だとし、課金を回避するため独自決済システムへのリンクをアプリ内に設けた。アップルはこれが規約違反にあたるとしてフォートナイトを配信停止にする措置を取った。その直後にエピックがアップルを提訴。アップルは同年9月にエピックを反訴した。

エピック側は裁判所に対し、モバイルアプリ市場におけるApp Storeの独占を認定するよう求めていた。だが、連邦地裁判事は、争点となる市場を「モバイルゲーム」に限定。同市場におけるアップルのシェアは50%台程度にとどまるとした。そのうえで「アップルは高い利益率の恩恵を受けているものの、これらの要素だけで反トラスト法違反を証明することはできない。成功は違法ではない」と結論づけた。

再び「外部リンク設置」容認命じる

その一方で、「アプリ開発者が利用者をアプリ外決済システムに誘導すること」をアップルが制限している行為はカリフォルニア州の不当競争法(UCL)に違反するとし、アップルに対し全米で外部リンクの設置を容認するよう命じた。

エピックとアップルはいずれもこの一審判決を不服として控訴していた。第9巡回区連邦控訴裁判所は23年4月24日、これらの地裁判決を支持した。今回控訴裁は、アプリ外決済システムへの誘導をアップルが制限している行為についても地裁の判決を支持した。CNBCなどによると、これについてアップルは「同意しない」とし、最高裁への上告を含むさらなる措置を検討していると述べた。

一方、エピックのティム・スウィーニーCEO(最高経営責任者)は、「アップルは勝訴した。だが、開発者は消費者を自社のウェブサイトに誘導し、そこで彼らと直接取引できるようになる。我々は次のステップに進んでいる」などとツイッターに投稿した。

一定の譲歩で批判かわす

アップルはこれまで、App Storeに対する批判をかわすために一定の譲歩を示してきた。21年9月には、App Storeを調査していた日本の公正取引委員会と和解したことに伴い、世界各地で規約の一部を改定した。

これにより22年3月30日から、「リーダーアプリ」と呼ばれる雑誌、新聞、書籍、動画、音楽などの閲覧・視聴用アプリに限り、外部ウェブサイトへのリンクの設置を認めた。利用者は外部決済サービスで支払いを済ませられるようになり、これらアプリの開発者はアップルが徴収する手数料を回避できるようになった。

21年8月には、アプリ開発者らが起こしていた集団訴訟で和解。開発者が、アカウント登録を通じて入手した利用者の電子メールアドレス宛てにメッセージを送り、他の決済方法を案内することを容認した。21年1月にはApp Storeで得た年間収益が計100万ドル(約1億4000万円)以下の開発者を対象に決済手数料の料率を30%から15%に下げた。

22年12月、米ブルームバーグやロイターは、アップルが欧州連合(EU)域内のデジタル市場法(DMA)を順守するため、スマートフォン「iPhone」とタブレット端末「iPad」で他社のアプリストアを容認する方針だと報じた。

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年4月26日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

小久保重信の最近の記事