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【相模原市】本当にあった「雨乞いの石」、それはそれは興味深いパワーストーンだった

旅人間はらぺこライター

はらぺこライターの旅人間です。今回は神奈川県相模原市から興味深い話を紹介しましょう。それは雨を降らしてくれる不思議な石のお話です。

その石とは「雨乞いのばんばあ石」のこと。

ここは相模原市中央区水郷田名にある「田名八幡宮」です。

相模原市を横断するように流れる相模川、その周辺に生息する淡水魚などの水族館として人気ある「ふれあい科学館」から歩いてスグの場所に位置しています。

鳥居をくぐり、本殿に参拝し、奥に進んで行くと…

その奥まった場所に天地大明神が祀られ、その傍らに「ばんばあ石」「じんじい石」「代理石」の姿があります。

この左端の石が「雨乞いのばんばあ石」です。

ばんばあ、じんじい…と来れば、「お婆ちゃん、お爺ちゃん…ご夫婦の石かしら?」と想像できますが、この代理石って…なに?

ま、まさか三角関係?

この地には不思議で興味深いお話が残っています。

その由来については諸説ありますが、その一例として以下に紹介してみましょう。

「ばんばあ石」のいわれ

むかしむかしの話です…。

ある夜、信仰心の厚い男の夢枕に神様が立ったそうな。

その神様は、自分自身が石(ばんばあ石)であることを伝え、今は相模川の水中にいて、夫である石(じんじい石)を探しているという。

その夫は遠く離れた江の島の方に、しかし、この先は川の流れが浅くて先に進めない。「私を八幡宮の境内まで連れていって欲しい」と…。

神様の言葉を聞いて、その信仰心の厚い男は相模川の水底を探しに行くと、老婆らしい細長い石が見つかり、川の中から取り出して八幡宮の境内に安置したという。

その後…

ある年に日照りが続き、田畑は枯れ、村人たちは雨乞いをするも効き目はありません。そんなある夜、「ばんばあ石」が再び夢枕に立ちました。そして…

「お前の志に答えるため、良い事を教えてやろう」
「私を一ノ釜に入れよ。きっと雨を降らせる」

その男は村人たちに夢の話を伝え、お告げの通り「ばんばあ石」を一ノ釜に沈めると…、雨が降り出し、作物は元気を取り戻したという。

そして、その後も「ばんばあ石」は村を何度も救ったのだとか。

代理石のいわれ

さて、気になる「代理石」ですが、この石は色々な解釈があるようです。

ある日、雨乞いとして「ばんばあ石」が川に沈められた際、見張りの者がおらず、石はどこかに流され行方不明になってしまったという。

そこで仕方なく、「じんじい石」の横に ”代わりの石” として置いたのが ”めかけ石” とも呼ばれている「代理石」です。

その後、「ばんばあ石」は見つかりますが、代わりに祀った石を捨てることは出来ないと、現在も一緒に祀られています。

また一説には「ばんばあ石」が行方不明になった時、「じんじい石」が ”さみしい” と言ったので代理石を置いたという話もあります。

他にも、「じんじい石」がいつ江の島からこの地に迎えられたのかは定かではありませんが、水中で見つかった際、「じんじい石」と「代理石」は既に一緒にいたという話も…。

とは言え、「代理石」の複雑な立場を考えると、「なんとも…」と言った心地になります。せめて、もう少し愛嬌のある名前にしてあげたいと個人的に感じたりもします。

雨を降らすのは「じんじい石」?

この雨乞いについて、次のような話も…

それは「ばんばあ石」を人柱として相模川に沈め、仲の良かった老夫婦の間を裂き、悲しんで嘆く「じんじい石」の流す涙が大粒の雨となって雨を降らすという。

真相は分かりませんが…

どの話でも「ばんばあ石」が可愛そうになってきます。

せめて、ここだけでもツーショットで。

この話の背景を知ると「ばんばあ石」の優しさ、人情味、懐の大きさを感じてきませんか。そして親しみが沸いてきます。

世の中にはパワーストーンと呼ばれる石は数多くありますが、この「ばんばあ石」もその一つではないでしょうか。雨は豊穣と実りをもたらす生命の源、それを司る石がここにあります。静かに手を合わせると不思議なご利益を頂けるかも。

尚、「ばんばあ石」による雨乞いは、昭和24年の夏を最後に途絶えたそうです。

田名八幡宮
住所:神奈川県相模原市中央区水郷田名1‐8‐28
地図(外部リンク)
取材協力:相模原市
参考文献:「さがみはら石仏夜話」丸井図書出版

はらぺこライター

旅行好きのライター。各地に伝わる伝説や民話、古くから地元で大切にされているモノを親しみやすく紹介したい|地元で人気の食堂やレトロな喫茶店巡り|”思わずクスッと笑ってしまうような”珍スポット探し|目標は個性的でヘンテコな旅本の出版|フォローして頂けたら嬉しいです。

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