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泡に包まれた無数の宇宙!?マルチバースとは何か?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「科学的に理解されているマルチバースの理論」というテーマで動画をお送りしていきます。

「この宇宙以外にも、宇宙は無数に存在するかもしれない。」

SF的な奇想天外な話ですが、そんな仮説は以前から物理学者の間で真面目に議論されています。

このような仮説や、複数の宇宙全体のことを「多元宇宙」や「マルチバース」と呼びます。

前提として、マルチバースという概念は様々な文脈で登場します。

一言で「マルチバース」と言っても、その意味合いは文脈によって異なります。

今回の動画では、マルチバースの存在が示唆される様々な理論や現象について、さらにそこから予想されるマルチバースの性質について、解説していきます。

●インフレーション理論とマルチバース

現在の物理学では、この宇宙は誕生直後、インフレーションというとてつもない速度の空間膨張を経験したとする、「インフレーション理論」が有力です。

そしてそんなインフレーション理論からは、様々な形のマルチバースの存在可能性が浮かび上がることになります。

○地平線の外に広がるマルチバース

私たちの宇宙はどこまで広がっているのでしょうか?

現在の宇宙の年齢は約138億年ですので、この時間に光が到達できる距離は約138億光年です。

しかし、光を発信した場所は宇宙の膨張によって現在はさらに遠くに位置しています。

このことを考慮すると観測可能な宇宙は地球から約465億光年の範囲内だと考えられます。

これより遠方の空間からは、地球に光が届いていません。

そのためそれ以遠の宇宙は光によって観測が不可能な領域です。

この観測可能な領域と観測不可能な領域の境界を「宇宙の地平線」と呼んでいます。

インフレーション理論によると、宇宙はこの地平線を越えてはるかに広がっているようです。

宇宙全体が無限の大きさを持っている可能性も否定することはできません。

ただし、宇宙の地平線の外側には光も情報も届かないので、何の影響も及ぼし合わない、因果関係を持たない世界が広がっています。

観測可能な宇宙の外にはまた別の宇宙が存在していると言ってもよいでしょう。

ところで、あらゆる物質は素粒子から出来ています。地球も、私たちの身体も素粒子が数多く集まって形作っています。

今ここに地球が存在し、あなたが存在するということは、今の地球を作っている素粒子の並び方や、あなたの身体を作っている素粒子の並び方がゼロではない確率で実現しているということです。

もし、宇宙の大きさが無限、または事実上無限といえるほど果てしなく広いなら、地球やあなたの身体を含む、この観測可能な宇宙全体と全く同じ素粒子の並びが実現した空間が、遥か彼方の宇宙で必ず存在しているはずです。

マサチューセッツ工科大学の研究者は、このような考え方にもとづいて、私たちが観測可能な宇宙と全く同じコピーの宇宙が、10の(10の118乗)乗先に存在すると述べています。

これは10の118乗という、想像を絶するほど巨大な数分だけ1の後に0を書くという、まさに現実離れしすぎて想像すらもできないような異次元の巨大数です。

その単位がmmだろうが光年だろうが、人間が数えられる程度に1の後に続く0の数が変わるだけで、元の数の大きさと比べれば誤差に過ぎません。

そのため距離の単位はもはや何でもよく、省略されることも多いです。

そのような超遠方の宇宙空間に存在するかもしれない、コピー宇宙の中には、全く同じ"もうひとつの地球"や"もう一人のあなた"も存在することになります。

○永久インフレーションと泡宇宙

前述のマルチバースは、いわば距離が宇宙の地平線を越えて果てしなく遠いだけで、同じ物理法則が成り立つ同じ「泡宇宙」に存在する空間に過ぎません。

インフレーション理論から発展して、この宇宙には異なる物理法則が成り立つ、無数の「泡宇宙」が存在する可能性が導かれます。

唱えられた当初のインフレーション理論は、宇宙の急膨張が発生することは自然に説明できても、それが停止し、現在の宇宙のような比較的緩やかな膨張速度に移行する過程については理論的に説明ができませんでした。

その後、自然とインフレーションが終わって現在のような宇宙となった過程を上手く説明可能な、拡張的なインフレーション理論が続々と登場しました。

その中の1つに「永久インフレーション理論」があります。

永久インフレーション理論では、「宇宙全体ではインフレーションは現在も続いており、量子ゆらぎという現象が原因で、ごく一部の領域でのみインフレーションが終了した」と考えます。

偶然にもインフレーションが終了した各領域は「泡宇宙」と呼ばれます。

私たちの住む「観測可能な宇宙」は、インフレーションが続く広大な宇宙全体の中で偶然にもインフレーションが終了した、1つの泡宇宙の中のごく一部の領域に過ぎません。

このたった1つの泡宇宙がとてつもなく広ければ、その中に先ほど登場したマルチバース、つまり私たちが住む「観測可能な宇宙」と全く同じ素粒子の配列が実現した別の宇宙空間が存在する可能性もあります。

泡宇宙は「観測可能な宇宙」を含むもの以外にも無数に存在すると考えられます。

このことから、泡宇宙という概念もマルチバースの一種と言えます。

スタンフォード大学の研究チームによると、泡宇宙は「10の(10の10000000乗)乗個」存在する可能性があるようです。

これは先ほど登場した「10の(10の118乗)乗」という数値とも比較にならない巨大な数となります。

ただしこれらの数値は理論的に導かれたものとはいえ、推測の部分を多く含む点に注意が必要です。

また、異なる泡宇宙では、異なる物理法則が成り立つ可能性があります。

この「観測可能な宇宙」を含む泡宇宙は、インフレーションが終了した際に生じたエネルギーによって超高温、高エネルギー状態(ビッグバン)となり、そのエネルギーをもとに現在知られている素粒子が誕生しました。

物理法則とは、根源的にはこれらの素粒子の振る舞い方や相互作用を記述しているものと言えます。

つまり異なる泡宇宙ではインフレーションが終了した際の初期条件も異なるため、異なる素粒子が誕生し、ゆえに物理法則も異なっている可能性があります。

●量子力学とマルチバース

ここまで見てきたインフレーション理論と関連が深いマルチバースとは、少し違った意味合いのマルチバースに関する仮説があります。

それは、ミクロの世界の物理学である量子力学の解釈から生まれたマルチバースです。

量子力学の標準的な解釈によると、ミクロの世界の出来事は、決定論的に予測することができず確率に支配されています。

例えば、ヨウ素131という放射性物質は、放っておくと自然に崩壊しキセノン131という別の物質に変わります。

この崩壊がいつ起きるのか、はっきりと予測することはできません。

できるのは「8日後までに50%の確率で崩壊する」という確率を示すことだけです。

一方、量子力学においてミクロな現象に対する解釈の仕方に、「多世界解釈」というものもあります。

仮に8日後までにあるヨウ素131の原子が崩壊したとします。

多世界解釈においては、このときにヨウ素131の崩壊が起きなかった世界も、崩壊が起こった世界と並行して実在しているというのです。

「多世界解釈」では、このような現象が起きるたびにどんどん世界が枝分かれしていくことになります。

時間が進むごとに可能性の数だけ宇宙がさらに増えていくのです。

マルチバースは本当に実在するのでしょうか?

現在の科学では、このような世界が存在する可能性があるということしかできませんが、この謎がいつか本当に解き明かされる日が来るかもしれません。

https://en.wikipedia.org/wiki/Multiverse
https://en.wikipedia.org/wiki/Eternal_inflation
https://phys.org/news/2009-10-physicists-parallel-universes.html
https://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/0910/0910.1589v1.pdf
https://www.ipmu.jp/ja/20201224-PBH-multiverse
https://gendai.media/articles/-/104052

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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