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カラオケ番組の"絶対女王"、城南海 奄美大島出身歌手としての矜持

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「先輩達が切り拓いた道の上を歩いているという感謝の気持ちを忘れてはいけない」

人気番組『THE カラオケ★バトル』(テレビ東京系)で、並みいる歌の達人を押さえ、番組最多の10冠を達成し、"絶対女王"と呼ばれているのが城南海だ。奄美大島出身の彼女の歌声は、2009年のデビュー以来多くの人の心を癒し、そして潤し続けている。そんな城の冬カバーアルバム『ユキマチヅキ』が11月22日に発売され、好調だ。思い入れのある楽曲、名曲の数々を圧倒的な歌唱力と、圧巻の表現力で歌っている。歌い手としてのプライド、そして歌を通して奄美の素晴らしさを伝えていくという奄美出身者としてのプライド、その両方が詰まった一枚だ。現在、初の全国ワンマンホールツアー『ウタアシビ2017冬』を敢行中の城に、このアルバムに込めた強い思いを聞いた。

「昨年ミュージカルに初めて挑戦し、刺激になった」

――城さんが出演した『THEカラオケ★バトル』に、ゲストで出演していた演出家の宮本亜門さんが城さんの歌声に惚れ込んで、2016年8月に宮本さん演出のミュージカル『狸御殿』への出演が決まったとお聞きしましたが、初めてのミュージカルは、シンガーにとってどんな刺激、影響がありましたか?

城 全て初めての事なので、最初は戸惑いましたが、亜門さんが私らしさをすごく大切にして下さって、歌の部分に関しても「自由に歌って下さい」と、カーテンコールの時にアカペラで「さくらさくら」を歌う場面があったのですが、そこも「その日の感覚でいいから」と、のびのびとやらせてくださいました。木の妖精役で、城南海としてじゃなく歌うのは初めてだったので、別の人格になれた感覚で面白かったです。舞台はいい緊張感の中で、助け合いながら作り上げていくものなので、クセになるのはわかりますね。

「『ユキマチヅキ』では、最近の曲というよりも、みんなで歌える、”親しまれている”曲をチョイスした」

――『THEカラオケ★バトル』の“絶対女王”として注目され、舞台でも注目を集め、そんな中での冬がテーマのカバーアルバム『ユキマチヅキ』が11月22日に発売されました。ファン投票も参考にしつつ、城さんが今歌いたい歌が詰まっている一枚という感じですか?

『ユキマチヅキ』(11月22日発売)
『ユキマチヅキ』(11月22日発売)

城 そうです。まだまだ知らないイイ曲がたくさんあって、今回は冬がテーマだったので、藤井フミヤさんの「Snow Crystal」も選曲の時に初めて出会って、“ひと聴きぼれ”しました。

――ユーミンの「12月の雨」やかぐや姫/イルカ「なごり雪」など、歌い継がれ、聴き継がれているスタンダードナンバーが多いですね。

城 最近の曲というよりは、親しまれている曲が多いですね。最近の音楽は多様化していて、例えばみんなでカラオケに行っても、みんなで歌う曲が少なくなってきた気がします。昔はそういう曲が多かったと思います。そんな中で大好きなMISIAさんの「Everything」は、カバーするのに勇気が必要でした。やっぱり親しまれている曲は原曲のイメージが強いので、どうしても比べられてしまいますが、春カバーと夏カバーでは、比較的原曲に忠実なアレンジで表現しましたが、今回はアレンジを変え、チャレンジしてみました。

「自分にとって特別な曲「ORION」(中島美嘉)は、思い入れが強すぎて、今回ようやく向き合う事ができた」

――一曲一曲の表現力が素晴らしいです。その曲の良さをきちんと伝えつつ、城さんならではの表現力で、歌に彩りを与えていますね。

城 歌い方も一曲一曲変えているのですが、アレンジャーさんが4人、ディレクターさんが3人参加してくださって、みんなで一曲一曲に向き合いながら作り上げていったので、色々なカラーが出ていると思います。自分自身でも歌っていてすごく新鮮でした。

――そんな中でも中島美嘉さんの「ORION」はやはり特別な存在なのでしょうか?親交があった川島なお美さんから譲り受けた衣装を着て、MUSIC VIDEOを撮影しました。

城 そうですね、個人的に思い入れが一番ある曲ですね。『THEカラオケ★バトル』で2015年に初めて100点を獲得した曲でもありますが、その時はいっぱいいっぱいでこの曲への想いを語る事もできませんでした。でも2年経って改めてこの曲と向き合って、先日川島なお美さんの三回忌も終わり、冬の曲でもあるので今回カバー集に入れる事にしました。

「「Snow Crystal」(藤井フミヤ)と"出会ってしまった"事も、今回の大きなトピックス」

――「ORION」以外も名曲揃いですが、今回歌ってみて、特に残っている曲を教えて下さい。

城 先ほど出た「Snow Crystal」はやはり「出会ってしまった!」という感じでした。最初、仮歌の時に自分流に歌ったら、ディレクターさんから「まっすぐ、淡々と歌ってみて」と言われ、そうやって歌うと曲の世界観とマッチしました。この曲に関しては歌い上げるのではなく、淡々と歌う事で表現でき、新鮮でした。

――「淡々と」って難しいですよね?

城 そうなんですよ。でもアレンジもピアノとストリングスだけのシンプルな構成で、一発録りしました。クリックなしで、皆さんの息遣いを感じながら、ライヴみたいな感覚でレコーディングできました。

「美しい日本語を受け継ぎ、守り、そして伝えていきたい」

――今回のアルバムは、オリジナル曲の「サヨナラよりも伝えたかったこと」も含めて、歌詞にほとんど英語詞が使われていない楽曲ばかりですが、やはり日本語への、言葉へのこだわりはふだんから強いのでしょうか?

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城 学生時代は英語の授業も好きでしたし、洋楽もよく聴きますが、自分にできる事というのを考えた時、日本語を美しく伝えたいという思いがすごくあります。それは私は奄美大島の出身なので、シマ唄が自分のルーツとしてあって、シマ唄で使われている言葉ってすごく美しいんです。でもその7割は日本から消えてしまった古語なんだそうです。それを知った時に、奄美は、人として忘れてはいけないものがすごく詰まっている場所なんだと気づきました。常に感謝の気持ちを忘れない奄美の人たちの精神、美しい日本の言葉を受け継いで守っていくという姿勢は、見習いたいと思いますし、美しい日本語を伝えていく事が、私にできる事だと思っています。

「歌を通して、奄美の素晴らしさを世の中に伝えていくというプライドを持って歌っている」

――デビュー8年。10周年が近づいて来ていますが、シンガーとしての心の持ち方というか、カバーシリーズもその一環だと思いますが、いい歌詞、いいメロディ、いい歌を後世に残していかなければいけないという、その使命感がより強くなっている感じでしょうか?

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城 そういう気持ちを持ちながら歌っていますし、同じ奄美出身の元ちとせさんや中孝介さん、カサリンチュさんや全てのミュージシャンに共通しているのは、鹿児島でもない沖縄でもない奄美なんだという独自のプライドと、アイデンティティがあって。私が中学生の時に元さんの歌が大ヒットして、そこから奄美の良さ、奄美の音楽、歌手の素晴らしさが世の中に広がっていきました。シマ唄をやっていた人が、新しい道を切り拓くのは本当に大変だったと思います。私はその先輩達が切り拓いてくれた道の上を進んでいると思っているので、東京に出てきて、歌を通して奄美の素晴らしさを世の中に伝えていくというプライドを持って、歌っている部分もあります。

「奄美出身者は、今があるのは先輩たちのおかげという精神をみんな持っている。私も歌でもっと奄美を盛り上げたい」

――奄美出身の方の歌には郷愁感があって、癒されるしパワーをもらえるし、独特のエネルギーがありますよね。このアルバムも普通のカバーアルバムとは違う肌触りです。

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城 こぶしが入ったりしていますからね。懐かしさはみなさんおっしゃってくれます。島の風景とか育った環境が声に出ているのだと思います。島のおじいちゃん、おばあちゃんたちは、本当に苦しい時代を経験して、それを乗り越えてきて、今があるのは先輩達のおかげという精神がみんなあります。それを今の若い人たちが引き継いで、盛り上げていかなければ、という気持ちが溢れています。来年はNHK大河ドラマ『西郷どん』が始まりますし、夏には奄美群島が世界遺産登録される事を目指していて、奄美に注目が集まる年になると思います。奄美が認められてきたという事が、島人の自信につながっているので、私ももっともっと奄美を盛り上げるために、歌で頑張りたいと思います。

城南海オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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