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シリアのNGOがJIM-NET寄贈の「赤べこ」に絵付けをしてくれました

青山弘之東京外国語大学 教授
絵付けされた「赤べこ」と子供たち(「私は夢を描く」協会提供)

シリアについて語るとき、私情を持ち込んだり、専門外のことを知ったかぶりするのは、プロ意識を欠くので避けてきたのですが、年末に嬉しい知らせが届いたので、雑文を書こうと思います。

念願のシリア訪問

昨年9月、フィールド調査や世論調査を委託しているシリア世論調査研究センター(SOCPS)の計らいで、首都ダマスカスとその郊外各所、そしてラタキア市を7年ぶりに訪れる機会を得ました。

「今世紀最悪の人道危機」と言われて久しいシリアでの紛争の被害の視察、そして復興に向けて活動するNGOや政府関係機関の訪問が目的でした。主な訪問・見学先はざっとこんな感じです。

  • 紛争地:ジャウバル区(ハンサー学校)、聖タクラー修道院
  • 避難民収容センター:バーブ・ムサッラー地区、ハルジャラ村
  • NGO:シリア国民信託、バスマ協会、「ボクラ・エルナー」(明日は私たちのもの)
  • 政府関係機関:外務在外居住者省、シリア赤新月社、シリア・サッカー協会、シリア・オリンピック委員会
  • シンクタンク:SOCPS、祖国文書
反体制派の地下トンネル施設の入口が見つかったジャウバル区ハンサー学校(ダマスカス県:筆者撮影)
反体制派の地下トンネル施設の入口が見つかったジャウバル区ハンサー学校(ダマスカス県:筆者撮影)
ハルジャラ村避難民収容センターの子供たち(ダマスカス郊外県:佐藤真紀撮影)
ハルジャラ村避難民収容センターの子供たち(ダマスカス郊外県:佐藤真紀撮影)
シリア国民信託で職業訓練を受ける女性たち(ダマスカス県:筆者撮影)
シリア国民信託で職業訓練を受ける女性たち(ダマスカス県:筆者撮影)
旧市街ハミディーヤ市場(ダマスカス県:筆者撮影)
旧市街ハミディーヤ市場(ダマスカス県:筆者撮影)

NGO「私は夢を描く」協会

これらの訪問・見学先はいずれも首都ダマスカスとその郊外にあるのですが、ラタキア市では、友人の一人で芸術家のヒヤーム・サルマーンさんが代表を務めるNGO組織「アルスム・フルミー」(私は夢を描く)協会が企画・共催していた子供たちの絵の展示会、郊外の「階段絵」、そしてアトリエを見学しました。「アルスム・フルミー」協会は子供たちに絵を教えるNGOです。

「私は夢を描く」協会が制作した「階段絵」(ラタキア市ビスナーダー地区:「私は夢を描く」協会提供)
「私は夢を描く」協会が制作した「階段絵」(ラタキア市ビスナーダー地区:「私は夢を描く」協会提供)

私にとって訪問の最大の目的は、20年以上のつきあいになる友人との再会だったのですが、同行頂いたJIM-NET事務局長の佐藤真紀さんから、絵付けされていない「赤べこ」を子供たちに色つけしてもらおうとの提案があり、2体(そして絵付けされた見本の「赤べこ」1体とイラクにいるシリア難民の子が作った「赤べこ」1体)をヒヤームさんに寄贈してもらいました。

ご存じの方も多いかと思いますが、JIM-NETは、福島支援、イラクやヨルダンのシリア難民支援の一環として、会津の伝統玩具「赤べこ」に絵付けをするという活動をされています。関心がある方はホームページフェイスブックを参照ください。

アトリエで「赤べこ」を受け取るヒヤームさん(佐藤真紀撮影)
アトリエで「赤べこ」を受け取るヒヤームさん(佐藤真紀撮影)

やはり専門外なので適切な言葉が思いつきませんが、とにかく感動

どんな絵付けをしてくれるのだろうと思いをめぐらせながら、帰国後の日々を過ごしてきたのですが、昨年末、ヒヤームさんから絵付けが済んだとの連絡があり、写真を送ってもらいました。

絵付けをしてくれたのは、マルヤム・ウスフーラちゃんとマーヤー・シャッブちゃんという二人の女の子。

マルヤムちゃんは「赤べこ」にアラブ風装飾をほどこしてくれました。

マーヤーちゃんは、シリア国旗をウガリット文字(世界最古の音素文字)をあしらって描いてくれました…。

…やはり、専門のことでないと、どう書いたら良いか分からず、適切な言葉がまったく思いつきませんが、とにかく感動です! 送られて来た写真をご覧頂き、私が伝えたかった絵柄、色づかいなど堪能頂ければ幸いです。

絵付けをするマーヤーちゃん(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをするマーヤーちゃん(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをするマルヤムちゃん(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをするマルヤムちゃん(「私は夢を描く」協会提供)
マーヤーちゃんが絵付けをする「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
マーヤーちゃんが絵付けをする「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
マルヤムちゃんが絵付けする「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
マルヤムちゃんが絵付けする「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをする2人(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをする2人(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをする2人(「私は夢を描く」協会提供)
絵付けをする2人(「私は夢を描く」協会提供)
マーヤーちゃんと完成した「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
マーヤーちゃんと完成した「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
マルヤムちゃんと完成した「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
マルヤムちゃんと完成した「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
完成した2体の「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
完成した2体の「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
完成した2体の「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
完成した2体の「赤べこ」(「私は夢を描く」協会提供)
東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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