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【知っておきたい震度の話】震度0の誕生と機械判定|阪神淡路大震災が変えた地震観測

栗栖成之防災士ライター
出典:イラストAC

今回は地震が起きた際の「震度」について、お伝えしていきましょう。

現在では当たり前のように使われている、地震時の揺れを表す『震度1~7』ですが、これは1996年(平成8年)4月から使われるようになった、比較的新しい表現です。

これには1995年(平成7年)1月17日に起きた、阪神淡路大震災が大きく関係しています。

以前は気象庁の職員が「自分の体感」で震度を決めていた

出典:PhotoAC
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現代では驚くかもしれませんが、1996年3月以前では気象庁の職員が「自分の体感」で震度を決めていたのです。

気象庁の説明でも、次のように解説されています。

震度は以前、気象庁の職員が自分の体感で決めていたため「地震のゆれを感じたら、落ち着いて座って、まわりの様子をよく見なさい。」と言われていました。

体感で決めていたころは、職員がいる気象台や測候所などでしか震度は観測できず、それ以外の場所では後から現地で調査を行い、被害状況や聞き取りなどを行って震度を推定していた。

引用元:仙台管区気象台 震度とマグニチュード 

従来の震度階級は8段階だった

出典:イラストAC
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1949年~1996年における震度階級は次のように8段階の設定であり、職員の体感や地震後の現地調査で決めていました。

そのため、平成初期にあっても各気象台から管区気象台が、震度情報を収集して規模などとともに発表するまでに、10分程度かそれ以上かかっていたのです。

  • 0 ⇒ 無感
  • I ⇒ 微震
  • Ⅱ ⇒ 軽震
  • Ⅲ ⇒ 弱震
  • Ⅳ ⇒ 中震
  • Ⅴ ⇒ 強震
  • Ⅵ ⇒ 烈震
  • Ⅶ ⇒ 激震

このように0と、ローマ字数字のⅠ~Ⅶで設定される8段階です。前述したとおりこの当時は、職員の体感で震度が決定されていました。

では「0⇒無感」は、からだが感じない揺れなのに、どうやって決めていたのか不思議ですよね。

そこで調査してみると、気象庁震度に関する検討会第2回の資料2-2に、次のように定義されていました。

●明治17年~昭和24年まで:吊り下げ物のわずかにゆれるのが目視されたり、カタカタと音がきこえても、体にゆれを感じなければ無感である

●昭和24年~平成8年:人体に感じないで地震計に記録される程度

つまり0「0⇒無感」とは、1949年(昭和24年)~1996年(平成8年)3月では「職員のからだには感じないが、吊り下げられた電灯などが揺れているため、地震計を確認すると揺れの記録があった」ことになります。

内容が矛盾するので再度調査してみた

これは、体感によって震度を決めていたことと矛盾するため、さらに調べてみました。

すると、1898年頃に発明された「大森式地震計」が、世界ではじめて揺れをもたらす地震波を、常時観測できる地震計だったようです。

ただし、高さ幅とも約2mある巨大なものでした。結果として当時は、地震計はあったものの全国の観測に使えるほど、大量に設置されていなかったことが分かりました。

このことから「0⇒無感」は、ごく限定的な地域でのみ観測されていたと推測できます。

出典:ウィキペディア・コモンズ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Oomori_style_se
出典:ウィキペディア・コモンズ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Oomori_style_se

現代の震度階級は10段階

出典:気象庁 震度について 震度階級
出典:気象庁 震度について 震度階級

1996年(平成8年)4月以降から、震度階級は上記のとおり「震度0/震度1/震度2/震度3/震度4/震度5弱/震度5強/震度6弱/震度6強/震度7」の、10段階となっています。

このときからはじめて、地震による揺れを感知し自動で震度を計算する「震度計」による観測が行われています。

また、震度0は「人は揺れを感じないが震度計では揺れを感知している」無感地震として設定されました。

震度5と震度6に「弱」と「強」があるわけ

出典:気象庁 震度について 震度階級を筆者加工
出典:気象庁 震度について 震度階級を筆者加工

前述したとおり1996年3月以前の震度階級は、震度5と震度6のみでした。しかし、1994年の三陸はるか沖地震と1995年の阪神・淡路大震災の被害調査により、同じ震度5や6の地域でも被害の程度に幅があることが判明したのです。

「弱」と「強」への変更の理由

震度5と6が「弱」と「強」の2つに分かれた理由は、次のとおりです。

・被害状況の詳細な把握: 同じ震度でも被害の程度に差があることが分かり、より細かい区分が必要となった

・震度計の全国設置: 阪神・淡路大震災を契機に、全国に震度計が増設。これにより、全国で統一された基準で震度を測定できるようになった

・情報の精度向上: より詳細な震度情報を提供することで、防災対策や被害予測の精度を向上させる目的がある

このような理由で、震度5と6については「強」と「弱」に区分されています。なお、「震度5弱」と「震度5強」、「震度6弱」と「震度6強」は、それぞれ全く異なる震度として扱われますから、当然揺れの程度も異なります。

出典:イラストAC
出典:イラストAC

大地震などによる大災害が起こる度に、観測体制や防災対策などがアップデートされます。今回取り上げた震度階級も、阪神淡路大震災などの災害が起きなければ、現在でも体感に頼っていたかもしれません。

まぁ、AIが活躍している現代では、それはあり得ないでしょう。しかし、過去のたくさんの大災害を教訓にしても、能登半島豪雨のように為す術もなく大災害が起きてしまうのが現実です。

いまのところ、震度7が最大の揺れとされていますが、もしかすると近い将来に震度7弱・強や、震度8が設定されるかもしれません・・そんな時代がこないことを祈りたいです。

防災士ライター

これまで、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2017年に防災士とひょうご防災リーダーの資格を取得。2014年からWEBライターとして活躍し、現在では経験と資格を活かしてさまざまなメディアに多ジャンルにて記事を投稿中!

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