サイドローディングで脅かされる「我が子の個人情報」
政府・デジタル市場競争会議による「モバイル・エコシステムに関する競争評価最終報告(案)」に対するパブリックコメントの締め切りが8月18日に迫っている。
この報告書案では、アップル・iPhoneのアプリ配信ストア「AppStore」とは別にアプリを配布できるサービスを作る、いわゆる「サイドローディング」を実現すべきと言う方針がまとまっている。
政府としては、アプリ開発者に対しての手数料が高いと問題視しており、他のアプリ配信ストアが参入することで、競争が促進され、手数料が値下がりするのではないか、という目論見があるよううだ。
ただ、実際にアプリ開発者に話を聞いても「確かに値下がりすれば嬉しいが、いまの値付けには満足しており、高いとは思わない」という声が多い。アプリ開発者とすれば、AppStoreでアプリを配布すれば、世界中のiPhoneユーザーに使ってもらえるだけでなく、課金だけでなく返金の手続きなども実に簡単であり、課金プラットフォームとしては満足しているようなのだ。これが、クレジットカード課金ともなれば、返金が必要な際には世界中の言語で個別に対応しなくてはならず、手間がかさむ。そのあたりをアップルがしっかりとやってくれることもあり、アプリ開発者から不満の声はほとんど聞かれないのだ。
そんななか、サイドローディングに危機感を示しているのが、教育関係者たちだ。
仮にサイドローディングが実現した場合、アップルが審査をしない「野良アプリ」が出回ることになる。
将来的に「あのゲームがなぜか課金せず無料で使える」といった怪しいアプリが、謎のアプリ配信サイトから配布。子どもたちが喜んでダウンロードするようになるのだろう。
個人情報の保護などを全く無視し、スマートフォンに入っている個人情報はダダ漏れになる可能性が高い。特定の人の位置情報を追い続けるアプリなんかも配布されることも考えられる。
これまでアップルがAppStoreで配布してきたアプリはすべてアップルが審査し、個人情報やプライバシーをしっかりと守ったものしか流通しなかった。
これがサイドローディングが実現すれば、子どもの個人情報を狙ったアプリがスマートフォンにはびこることになるだろう。
「日本でそんな危険なアプリ配信サイトは出てこないのではないか」とは言い切れない。サイドローディングが実現すれば、海外のアプリ配信サービスがきちんと日本語に対応した上で、日本市場に向けてサービス提供してくるだろう。そうなれば、子どもたちの個人情報は海外に流出することになる。
単にiPhoneだけが標的になるというわけではなさそうだ。
現在、日本の教育現場では「GIGAスクール構想」として、すべての児童や生徒にタブレット端末が配布されている。
Windows、Chromebook、さらにiPadが配布されているのだが、サイドローディングが実現すればiPadも標的になるのは間違いない。
これまですべての児童や生徒にタブレット端末が配布されてきたが、特にiPadに関しては「アップルがきちんとアプリを審査している」ということもあって、とても安心して使えた。
本来、親としたら、どんなデバイスで、どんな設定をしているか、フィルタリングはきっちりとかかっているかを把握した上で、タブレットを持たせるべきなのだが、ほとんどの親が「よくわからない」と学校や自治体に任せっきりとなってしまっている。
これまでのiPadであれば、親が学校や自治体にまかせっきりであっても、キチンと子どもの安全は確保できた。しかし、サイドローディングが実現したら、親は自分で調べて子どもを危険なアプリから守らなくてはいけないのだ。