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マールボロ・マンがフィールドに帰ってくる―WBCの監督として

宇根夏樹ベースボール・ライター
ミゲル・カブレラ(左)とジム・リーランド APRIL 10, 2013(写真:ロイター/アフロ)

マールボロ・マンがフィールドに帰ってくる。4月15日、来年のワールド・ベースボール・ベースボール・クラシック(WBC)でチームUSAの指揮を執る監督が、ジム・リーランドに決まった。

リーランドは71歳。捕手としてはマイナーリーガーで終わったが、監督としてはメジャーリーグの4チームで指揮を執った。22年間で歴代15位の1769勝を挙げ、地区優勝はピッツバーグ・パイレーツ(1990~92年)とデトロイト・タイガース(2011~13年)で計6度。1997年はフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・マーリンズ)を球団初のワールドチャンピオンに導き、タイガースでは2006年と2012年にリーグを制した。1990年と1992年、2006年はリーグ最優秀監督に選出。2013年を最後にタイガースの監督を辞任し、現在はタイガースでスペシャル・アシスタントを務めている。

40歳でパイレーツの監督に就任する前には、同じ1944年生まれのトニー・ラルーサが指揮を執るシカゴ・ホワイトソックスで、三塁コーチとして働いていた。監督の実績はラルーサに及ばないとはいえ、リーランドも将来、ラルーサのように殿堂入りする可能性はある。2人は2006年のワールドシリーズで対戦しており、この時は優勝した方が、両リーグでワールドチャンピオンに輝いた史上2人目の監督となることが決まっていた(1人目はスパーキー・アンダーソン)。その栄誉はラルーサに譲り、2012年のチャンスも逃して3人目にもなれなかったが、両リーグの監督としてワールドシリーズで采配を揮い、そこで少なくとも1度優勝しているのは、スパーキーとラルーサ、リーランドの他に3人しかいない。

マールボロ・マンのニックネームは、チェーンスモーカーのリーランドが嗜むタバコの銘柄に由来する。2010年5月にミシガン州の法律が施行され、タイガースの本拠地コメリカ・パークでも喫煙が禁じられた時は、リーランド監督がタバコを喫えなくなることが、いくつもの記事で報じられた。2012年にデトロイトのバー「ダーティ・トリック」が22ドルで売り出したTシャツには、タイガースのキャップをかぶり、口に銜えたタバコから煙を燻らせるリーランドの顔がプリントしてあった。また、2013年にリーランドは、試合前の打撃練習中にダグアウトでタバコを喫う姿を目撃されている。

タイガースのビートライターであるジェイソン・ベックは、数年前にリーランドとラルーサのこんなエピソードをブログに綴っている。ラルーサはかつて「私の目標は、彼にタバコをやめさせて豆腐を食べさせることだ」と語っていた(2人が監督とコーチだった1980年代のことだろう。ラルーサはベジタリアンだ)。その後、ラルーサが「彼はタバコをやめずに豆腐を食べるようになった」と言うと、リーランドは「タバコを喫うようになったのは、君のところでコーチになってからだ」と返したという。

WBCにおいて、リーランドがタバコを喫う姿が見られるかどうかと同じように、リーランドがチームUSAを優勝に導けるかどうかも、まだわからない。監督とともに5人のコーチング・スタッフも発表されたが、肝心の選手は決まっていない。過去3度のWBCは、バック・マルティネス、デービー・ジョンソン、ジョー・トーリがチームUSAを率いて、第2ラウンド敗退、準決勝敗退、第2ラウンド敗退という結果に終わっている。2013年は、リーランドが監督を務めるタイガースからジャスティン・バーランダーを呼ぼうとし、本人も参加に前向きな姿勢を示していたが、結局はMLBのシーズンを優先させて辞退した。一方、チームメイトのミゲル・カブレラは3度ともベネズエラ代表として出場しており、来年のWBCにも出場することを表明している。ただ、ベネズエラの結果もUSAと似たようなもので、第2ラウンド敗退、準決勝敗退、第1ラウンド敗退だ。こちらは、第1回大会から指揮を執っていたルイス・ソーホーに代わり、現タイガース一塁コーチのオマー・ビスケルが采配を揮う。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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