「宗教2世問題ネットワーク」が設立 個の力が結集しての新たなスタート!ぜひとも、社会の力を!
12月10日、異例となる土曜国会が開かれて、被害者救済法が成立しました。
一方で、消費者問題に関する特別委員会にて「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」及び「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」に対する附帯決議もなされています。
注目するのは、宗教2世に関するものです。
7.親権者が寄附をしている場合には未成年の子が債権者代位権を行使することは困難であることから、未成年者の子の援助を充実すること。
10.親族間の問題、心の悩み、宗教二世を含むこどもが抱える問題等の解決に向け、法的支援にとどまらず、心理専門家によるカウンセリング等の精神的支援、児童虐待や生活困窮問題の解決に向けた支援等を一体的・迅速に提供するなどの支援体制を構築すること。成人した宗教二世についても、親子間の葛藤や心の悩み、就職等も含め社会参画の困難性を抱えていることから、同様の支援や、就労の支援等の支援体制を構築すること。
附帯決議には、法的な拘束力はありませんが、現法律の運用や改善、将来の立法に向けての要望を示すもので、これを尊重しなければならないことになっています。今後の実効性のある被害救済に向けての重要な表明だと思っています。
今、宗教2世一人一人のあげた声が、着実に国に届いてきています。
「宗教2世問題ネットワーク」の設立会見
12月7日、宗教2世11人による「宗教2世問題ネットワーク」(監事:阿部克臣弁護士)が設立され、厚生労働省にて、宗教2世3名による記者会見が行われました。
同団体は、宗教2世問題の防止啓発活動を行い、宗教2世の権利擁護をはかり、その生きづらさの緩和と解消を目指して、宗教2世問題の根絶を目指すことを設立活動の目的にしています。
同団体の代表である団作さん(活動名)は「宗教2世とは信仰を持つ親や家族のもとで育ち、その信仰の影響を受けて成長した者及び現に成長している者であり、宗教2世問題とは、一部の宗教2世が親や家族、親や家族と同じ信仰を持つ信者から受ける、信仰を理由とした児童虐待やその他の人権侵害、及び生きづらさのこと」と説明します。
そして今、宗教2世が個人でメディアの取材や国政関係者の対話に応じることでの新たな問題も浮上してきているといいます。
「個々に(メディアなどとの)連携を取りながら、自らの生活を犠牲にしながら活動を継続しているのが実態であり、個人としての活動は限界を迎えつつあります。今後も、被害者が継続的に国との対話や要望を続けていくためにも団体を設立しました」とその経緯を話します。
2世の方は自らの時間を使い、時にはお金を持ち出して取材を受けることもあるでしょう。何より、自らの辛い体験を話さなければならず、精神的にも大きな負担を抱えることになります。
これまでは、ネットなどを通じて、各人がバラバラに宗教2世の問題を発信していましたが、彼らが相手にしているのは、宗教団体という巨大組織です。しかもカルト思想を持つ集団となると、反対する者をサタンとみて、攻撃する現役信者も多くいて、個人で立ち向かうには、限界が出てきています。そうした意味で、個人が結集して大きなうねりになることは何より大事なことです。
30年以上前から放置された宿題を後世に残さない決意
旧統一教会の2世であった副代表の山本サエコさん(活動名)は「“親泣かせ原理運動”に始まり“青春を返せ訴訟”などのように、30年以上前から放置された宿題を後世に残してはいけません」と話します。
30年以上前からこの問題が放置されてきた宿題……。1世の元信者としては大変に耳の痛い言葉ですが、その通りです。今後の課題として残すことなく、必ず解決しなければならないことです。
すでに、同団体は消費者庁の担当者に「被害者の声のさらなる収集や弁護団からの法案の実効性についてヒアリングなどをして頂き、検討会を立ち上げ『1年後』を目処(めど)に、被害者救済法の見直しをしてほしい」との「宗教2世問題ネットワーク」としての要望書を手渡しています。
その際「いまだ問題が山積してることや、被害者救済法の可決をもって被害者救済が全て完了するものではないというところは、消費者庁も、同席して頂いた自民党の山田太郎議員も共通の認識でした。消費者庁からは『どんどん言ってほしい。被害実態を教えてください』と言われました。問題への取り組みのスタンスがわかったので、安心しました。私自身は、救済に向けて、めばえた芽をつぶしてはいけないと考えており、現在の被害者救済法は、まずはできるところから、着実に救済を進めていくという、スモールステップ法だと思っています」(山本さん)
なぜ、会の代表は旧統一教会2世ではないのか?
記者からは次のような質問もありました。
代表である団作さんは、エホバの証人の2世として育っています。なぜ今、話題になっている旧統一教会2世が代表ではないのでしょうか?
旧統一教会2世である高橋みゆきさん(活動名)はそれに対して、次にように話します。
「団作さんは、(安倍元首相の銃撃事件の)7月前から宗教2世に対しての問題意識を持っていて、地方の政治家や行政などに、虐待の問題を精力的に訴えてきました。しかし、一人だけの力では、宗教2世の問題は社会に響くことはありませんでした。団作さんは、2年ほど前から、長く放置されてきたこの問題を解決するためには、組織として継続的に訴えていくことが大事だと考えていた方で、実は『団体を作りたい』という思いから、その頃から『団作』の名前で活動していました。その考えに、私たち旧統一教会の2世が相乗りさせて頂いたというところです」
よくわかる内容でした。
以前から、宗教2世が声をあげながら、それに耳を傾けない社会であったことは、本当に私たちは反省をしなければなりません。その長く失われた時を、一刻も早く取り戻すことが必要です。
何より、宗教2世の問題は旧統一教会だけの問題ではなく、他のカルト思想を持った団体の信者の子供も同じ悩みや問題を抱えています。それが現在進行中ですので、今後はそうした人たちの声を広く集める必要もあり、旧統一教会以外の2世の方が代表になるのは、とても良いことだと思います。
国は動き出している
厚生労働省は、12月までに児童相談所などにおける対応点をまとめた「宗教2世への虐待対応Q&A」を作成するとの発表をしています。
さらに今月15日には、政府は関係府省庁連絡会議にて「宗教2世」の虐待への対応も明記し、児童虐待相談に対応するため、全国約230カ所の児童相談所(児相)の体制強化に向けた新プランを決定しています。
「宗教2世」虐待への対応明記 児童相談所の体制強化―政府 (時事通信社)
宗教2世のあげた声が国に届き、結実しつつありますが、何より継続性が課題になります。
同代表は「被害を受けた宗教2世の当事者が集まり立ち上げた団体は、今回が初めてだと思うので、『こういった意見は伝えたい』とか『あまり有名な宗教ではないけど、こんなひどい被害もある』という2世の方がいれば、その声を寄せて頂き、できるだけ団体を通じて、国政へ届けていきたい。この活動に一人でも多くの方が参画して、私たちの団体を活用してくれればと思っています。正直なところ、宗教2世が一人でメディアと、ずっとつながり続けるのは厳しいと思うので、その橋渡しもできれば」とも話します。
子供の頃から様々な被害を受けてきた宗教2世たちがタッグを組んで立ち上がり、今も苦しむ2世たちが声をあげやすい場を一致団結して作ろうとしています。当然、彼らを敵とみた宗教団体からの攻撃もあろうかと思います。
そうなれば、すでに被害に遭った2世が、再び被害を受けることになります。それは絶対に許してはならないことだと思います。
ぜひとも、社会の人々が彼らのファーストステップとなる取り組みに対して、陰になり日向になり、力を貸してあげてもらえればと思います。