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SNSの広告からだます手口は「有名人のなりすまし」だけではない 警戒すべき「違約金」詐欺の手口

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

SNSの広告から、お金をだまし取られて被害に遭うケースは、有名人になりすました人物から偽の投資サイトに誘導される形だけではありません。

「違約金」を請求される手口には警戒が必要です。

「画像を送るだけで報酬を得られる」にひそむ巧妙な罠

国民生活センターは、若者が注意するべきものとして「簡単に稼げる副業」をあげています。今年に入って、SNSの広告をきっかけにして寄せられた相談には次のようなものがあります。

「画像を送るだけで報酬を得られる」という広告を見つけた20代女性は、この仕事をやってみることにしました。通信アプリでメッセージのやり取りを行い、業者からは「指定された動画を視聴して、決まった時間内にその動画を視聴した証拠をスクリーンショットで送る」という作業を指示されます。
女性は何度かこの作業を行い、報酬を受け取りました。順調に仕事が進むなかで、さらに「高額な報酬を得られる」という動画を視聴してスクリーンショットを送ります。しかし業者からは「操作を失敗した」との連絡があり、違約金として10万円ほどを請求されました。

自分の操作ミスと思わせられ、さらにつけこまれる

女性は「自分の操作ミス」と思わせられていたために、お金を支払ってしまっています。業者はさらに追い打ちをかけます。

再び「高額の報酬が受け取れる」という連絡が女性のもとにあります。自分がミスをして払ってしまった違約金分を取り戻したい。そうした思いもあったに違いありません。同じ業者の仕事を再び行います。しかし今回も業者からは「操作ミス」を指摘されて、違約金50万円を払うことになりました。

さらに「30万円の報酬が得られる」という仕事が紹介されて行いますが、これについても三度「操作に失敗した」といわれて、違約金80万円を請求されます。ようやく女性はここで自分がだまされていることに気づきます。

なぜ、女性はお金を支払ってしまったのか?連帯責任の罠

なぜ、女性はお金を支払ってしまったのでしょうか?そこには業者側の巧みな手口がありました。

理由には、大きく二つあると考えます。

一つは、先に述べたように、失ったお金を取り戻したい思いにつけこまれたことです。業者の側にその気持ちを見透かされたと思われます。

もう一つは、グループのなかで作業をさせられていたことです。

女性によると、この仕事は4人ほどのグループで行っており、一人の「操作ミス」があると、全体の責任になる形だったといいます。女性は責任感が強い方だったのでしょう。自分のミスで仕事が失敗したために「共に仕事をしている他の方にも迷惑がかかると思ってしまい、銀行口座に振り込んでしまった」といいます。

まさに、違約金を支払わせるために、連帯責任という罠を仕掛けていたのです。

グループに誘ってだます手口は、有名人なりすまし詐欺にもみられる

ネット上のグループに、ターゲットにした相手を引き入れて、お金を出させる手法は、今、甚大な被害が発生している有名人をかたる投資詐欺にもみられるものです。

有名人の写真を勝手に使ったSNS上の広告から、相手を誘導して、まずLINEでその有名人と友達となり、メッセージのやりとりをさせます。そのうちに、その偽有名人は、自分の尊敬する先生が行っている投資グループを紹介します。そのグループに引き入れられると、投資で儲かることを煽られて、偽の投資サイトに登録させられてお金をだまし取られることになります。

20代の被害女性の場合は「違約金」名目ですが、やはりグループのなかに引き入れられて、お金をだまし取られています。

おそらく共に女性と仕事をしている人たちは、投資グループの書き込む人たちと同じようにサクラだと思われます。

国民生活センターの担当者によると、相手の業者名や連絡先は不明で「振り込んだ先は、個人口座だった」ということで、まさに有名人をかたる詐欺の振り込み先が個人口座であるところからも、手口が非常に似通っているといえます。

SNS上の広告の「簡単に稼げる」「うまい儲け話」は必ず疑うこと

同センターの担当者は「『簡単に稼げる』といった、うまい儲け話の広告を鵜呑みにしないでほしい」と注意を促します。

また、こうした副業などの仕事をする上では、やはり契約書をもらうなどして、相手の身元の確認をすることは必須です。これは有名人をかたる詐欺にもいえることで、必ず紹介された投資サイトの運営会社の連絡先を把握し、調べてからお金を出すかどうかを検討して下さい。
今の詐欺の主流はSNS上の広告からの誘導です。そして、グループに誘い込んで仲間にしてから、だまそうとしますので、十分な警戒が必要です。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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