Yahoo!ニュース

酒気帯び運転事故からの復帰戦、エロール・スペンス・ジュニアがWBC/IBFウエルター級タイトル防衛

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
写真:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 2019年10月10日、午前2時53分、酒気帯び運転で、愛車、フェラーリ488スパイダーのハンドルを握っていたエロール・スペンス・ジュニアが大事故を起こした。

 当然のことながら、飲酒運転の罪に問われ、逮捕された。

Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 事故以来14カ月ぶりの試合ということで、ダメージを懸念する声も上がっていたが、現地時間の12月5日、12回フルにWBC/IBFウエルター級タイトルマッチを戦い、116-112、117-111、116-112でワンサイドの判定勝ちを収めた。

Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 試合開始からスペンスのジャブが光り、ガルシアの左目が腫れていく。そして挑戦者は中盤以降に失速した。

 スペンスは、ハードヒットは勿論、随所に効果的なボディブローを浴びせ、ペースを握った。

Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 試合後、勝者、スペンスは語った。

 

「ウエルター級でベストファイターが誰であるか、を証明できたね。ダニー・ガルシアは偉大なチャンピオンだ。だからこそ、トレーニング段階で自分を限界まで追い込めた。チューンナップ試合はやりたくなかったんだ。ハードなキャンプを乗り越え、100%の自分を築けた。

 何だか、現実じゃないみたいだ。事故後、ずっとリングに立つことを思い描いて来たからね。やっと、もやもやとした気持ちを払いのけたよ。カムバックを飾れたし、次の試合は120%の自分で臨む」

Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 自身の戦績を27戦全勝21KOとしたスペンスは、次の対戦相手に誰を選ぶか? 37戦全勝28KOのWBO王者、テレンス・クロフォードとの統一戦が最も魅力的だ。あるいは、WBA王者の、マニー・パッキャオ戦が決まるか。

 いずれにしても、2021年のウエルター級は熱い。

Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 一方、36勝(21KO)3敗となったガルシアは言った。

 「今夜のスペンスが自分より優秀だったということ。言い訳はしない。自分は難しいファイトを懸命に戦った。彼のジャブは俺には無い、見事なものだった。それが試合のカギとなり、明暗を分けたね。

Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
Photo:Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 自分を再建し、次に向かう。全力で戦った自分を誇りに思う」

 煌びやかなウエルター級が戻って来た。コロナ禍で沈んだ空気を吹き飛ばせ!

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事