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ジェフ・ゴールドブラム: 60過ぎで父になった心境、おしゃれへのこだわり、「インデペンデンス・デイ」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX FEATURES/アフロ)

少し怖いと感じるほどの強烈なカリスマと、とてつもなく温かいオーラ。そんな矛盾するふたつの雰囲気を兼ね備えたジェフ・ゴールドブラムは、身につけるものにも、アーティストらしさが光っている。ウェス・アンダーソンのような個性派監督に愛される一方、「ジュラシック・パーク」や「インデペンデンス・デイ」など大型娯楽作品にも出演してきた彼は、ジャズミュージシャンとして、L.A.のクラブでたびたびライブ演奏も行っている。

まだまだ若いエネルギーに満ちあふれる63歳の彼は、2014年11月、体操選手のエミリー・リビングストンと三度目の結婚をし、昨年7月4日、初めての子供を授かった。言うまでもなく、7月4日は独立記念日。その時、ゴールドブラムは、今週末日本公開となる「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」を撮影していた。その偶然を、彼自身は、心底、おもしろがっているようだ。

L.A.で単独インタビューの時間を取ってくれたゴールドブラムに、20年を経て再び「インデペンデンス・デイ」に出たこと、62歳で初めて父になったこと、ファッションへのこだわりなどを聞いた。

いつも思うことですが、今日もまた、とてもおしゃれですね。

ありがとう。昔からとくにファッションに興味があったわけじゃないんだけどね。衣装は、演技の一部。衣装デザイナーとの細かい打ち合わせという過程を、僕はいつも楽しむ。そのキャラクターは、どんな靴を履くのか。履き心地はどうなのか。それによって歩き方も変わるんだよ。そういう部分を考えるのが、おもしろいんだ。それに、僕はもともと繊細なほうで、身につける服の色で気分が変わったりするんだよね。あと、正直に言うと、物を集めたりするのも好きで。

たとえばどんな物を集めていますか?男性は腕時計にこだわる人が多いですが、あなたも腕時計とか?あるいは今も帽子を被っていますけど、帽子もでしょうか?

ああ、腕時計は大好きだ。今日つけているこれはマックスビル。ドイツのブランドだよ。シンプルに見えるけれど、特徴がある。マックスビルは、もうひとつ持っているよ。帽子もだ。「正しい帽子を見つければ演技は簡単」と言った人がいる。誰だったか覚えていないけれど。僕が出た最初の映画は「狼よさらば」だった。あの役のために、僕はすごく独特な帽子を被った。僕はたくさん帽子を持っているよ。クラブでジャズ演奏をする時に素敵な帽子を被りたくて、個性的なデザイナーに作ってもらったりしたんだよね。あと、僕は近眼でメガネをかけるから、メガネにもこだわる。でも、日本の人はみんなすごくファッションを重視するようだよね。

ウェス・アンダーソンやデビッド・クローネンバーグの映画に出る一方、「ジュラシック・パーク」や「インデペンデンス・デイ」のような夏の娯楽大作にも出てきたあなたのキャリアは、若い俳優にとって、あこがれではないかと思いますが。

このキャリアを始めた時、僕には戦略なんてなかった。でも、当時、もし誰かが「あなたの将来はこんなふうになりますよ」と言ったら、信じなかっただろう。僕は、本当に幸運だったんだ。そして、今ようやく、僕は、自分の実力を最大に発揮できる段階になったとも感じている。僕は遅咲きなんだよ。だから、今、仕事がおもしろくてたまらない。すごく満足いく仕事をできていると感じていたら、初めて父になることにもなった。その子はなんと独立記念日に生まれたんだよ。

それも、「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」の撮影中だったのですよね?

そうなんだよ!ありえないよね!僕にとっての初めての赤ちゃんは、独立記念日に生まれたんだ!予定日は7月4日と言われた時は、「まさか」と思ったが、プロデューサーたちは、それに備えて、その周辺の数日は僕が撮影しなくていいようにスケジュールを組んでくれた。そして本当に息子は7月4日に生まれたんだよ。

62歳で父になったのは、どんな気分でしたか?今こそ正しい時だと感じますか?

ああ、そう感じる。今だったことをうれしく思う。エミリーは最高の母で、最高の妻だ。

父になったことで、自分について、あるいは人生について、何か発見はありましたか?

イエス、イエス、イエス!! 発見だらけさ。出産に至るまでの期間にも、相当に新しいことを学んだよ。また結婚しようと決めて、子供を作ろうと決めたら、すぐに妊娠したんだ。それで急に、妊娠中に気をつけるべきこととか、いざ生まれたらどうするかなどについて、学ぶことになったんだよ。息子が生まれてからは、もちろんすべてが変わった。

長いキャリアの中で、あなたが個人的に最も誇りに思っている作品はどれでしょうか?

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さっきも言ったけれども、僕は遅咲きで、どんどん良くなっていったと思っているので、最近のものかな。最近出たテレビの「Portlandia」も気に入っている。ウェス・アンダーソンのは全部好きだし、この「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」も。

「インデペンデンス・デイ」の続編ができるというのを聞かされたのは、いつでしたか?'''

(監督の)ローランド・エメリッヒと(プロデューサーの)ディーン・デヴリンは友達だから、連絡はずっと取り合っていた。2年くらい前に、ローランドが「続編はやりたくないと思っていたんだけど、アイデアが浮かんだんだよね。一緒にディナーをしないか」と電話をくれたんだ。その席で、彼らは僕に続編のストーリーを教えてくれて、僕はそれをすごく気に入ったというわけさ。

今回の大統領選でも明らかですが、今、アメリカは、二極化しています。しかし、「リサージェンス」では、エイリアンと戦うために、地球がひとつになっている状況が描かれるのですよね。タイムリーな話だと思いますか?

ああ、今ほどこの映画が公開されるのにふさわしい時はないと思うね。ふさわしい時はほかにもたくさんあるだろうが、今は絶対にそうだ。君も言ったとおり、アメリカは二極化している。宗教の違いとか、くだらない国家主義、欲、愚かさをみんなが捨てて、ひとつになれることを、僕は夢見るよ。ジョン・レノンが言ったように。

親になった今、地球の将来について、楽観していますか、悲観していますか?

子供を作ったということ自体が、楽観していることの証拠じゃないかな(笑)。人類は、いろいろな試練を乗り越えてきた。僕は、人類はなんとかやっていけるものだと思っている。人間のバカさ加減に悲観させられることはたしかにあるが、人生は山あり谷ありだ。僕自身の人生もそうだったし、僕は、そう受け入れているよ。

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ジェフ・ゴールドブラム Jeff Goldblum:1952年ペンシルバニア州ピッツバーグ生まれ。「狼よさらば」(74) で映画デビュー後、「SF/ボディ・スナッチャー」(78)、「再会の時」(83)、「ザ・フライ」(86)、「ディープ・カバー」(92)、「ジュラシック・パーク」(93)、「9か月」(95)、「ライフ・アクアティック」(05)、「グランド・ブダペスト・ホテル」(13)、「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」(15)などに出演。

「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」:舞台は、オリジナルの20年後。エイリアンを撃退して以来、世界は協力しつつ、次の攻撃に備えてきた。だが、いざやってきたエイリアンは、人々の想像をはるかに超える進化を遂げていたのだ。監督/ローランド・エメリッヒ、出演/ジェフ・ゴールドブラム、リアム・ヘムズワース、マイカ・モンロー、ビル・プルマン、シャルロット・ゲンズブール他。今月9日全国ロードショー

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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