自宅で過ごす時間が長くても、インターネットにはまっているとは限らない
仕事をしていない(失う)と孤独になっていくのか。若年無業者白書・その実態と社会経済構造分析を制作するとき、知りたいテーマのひとつだった。
支援機関に相談に来られる若者の話をまとめていくと、仕事を失うことでさまざまな資本のなかでも、関係資本が下がっていくことは暗黙知として理解されている。最初は、周囲に失業したことや、就職先を探していることを打ち明けていくが、長期化すると何となく話しづらくなり、また、周囲の心ある助言が、時に苦しいものとなり、距離をおくようになる。
求職活動が花開けばいいが、1年を越えても採用まで至らないと、求職行動も少しずつ減っていく。履歴書を何十社と出しても面接までいけない。それが継続すると履歴書の作成もつらい作業となる。その間に、履歴書の空白期間は長くなるばかり。気がつくと、家族以外、時には家族とすらコミュニケーションを取りづらく、取らなくなっていた。非常によく耳にするパターンだ。
実際、若年無業者は、就職活動している「求職型」。働かなければと思いながらも、その活動量が減り、活動しなく(できなく)なってしまった「非求職型」。働くことも考えられない状況となった「非希望型」にわけられる。
※母集団(育て上げネットが運営する支援機関へ相談に来られた若者)
求職型:733名 非求職型:636名 非希望型:367名
(出典:若年無業者白書)
実際に、「日々の過ごし方」を見ても、友人知人と会うなど集団で行動することは少なく、求職型であっても41.5%はほとんど家で過ごしている。非希望型では70%近くが自宅で過ごしており、ひとりであっても外出すること(活動量)が少なくなっている。
無業だから孤立するという因果関係の特定はできないものの、相関関係が無いとは言えないのではないだろうか。友人や知人と会わないのか、会えない(会いづらい)のかは、当事者でない限りは想像力を働かせるしかない。
この活動をしていると、「ひきこもっている人間はずっとネットで遊んでいるんですよね」「ネット依存なんじゃないの」と言われることが多々ある。実際にひとりで自宅にいればネットに費やす時間が長いタイプもいれば、そうではないタイプもいるはずだが、「自宅にいる=ネット」という印象論は強いのではないだろうか。
(出典:若年無業者白書)
では、自宅で彼ら/彼女らはどういう過ごし方をしているのだろうか。上図は「家事や家の手伝い」と「ネット検索」を図でまとめてみたものだ。
3類型によって違いがあるが、特に「ネット検索」に注目すると、求職型でも55%程度、非希望型になると22%しかネット検索をして過ごしていると解答していない。先の「日々の過ごし方」を見ると、非希望型の若年無業者は、70%近くが日常を自宅で過ごしている。
厳密に言えば、若年無業者の非希望型=ひきこもり状態ではない。しかし、自宅で過ごす時間が長いという意味において、それを”ひきこもり状態”と考えるひとは少なくないだろう。残念ながら、家でネット検索をして過ごしている若者の「ネット接続時間」まではわからないが、少なくとも、自宅で過ごす時間が多い若者が、常時ネットに接続した状態で生活しているとは言えないのではないだろうか。
※ちなみに、同じ母数データにおいて、「自宅でインターネットが使える」環境についての項目は下記のようになっている。
求職型:73.3%
非求職型:72.1%
非希望型:58.5%
NPO法人「育て上げ」ネット
理事長 工藤 啓