10年前に首位打者を「辞退」した選手が引退。その年に首位打者を獲得した選手も…
メルキー・カブレラが、引退を表明した。
ドミニカンのメルキーは、2005年から2019年まで、メジャーリーグで外野手としてプレーした。2020年はニューヨーク・メッツとマイナーリーグ契約を交わしたものの、開幕直前に解雇。昨オフと今オフは、ドミニカン・ウィンター・リーグの試合に出場した。
メジャーリーグ15年の成績は、打率.285と出塁率.334、OPS.751。ホームラン144本、三塁打45本、二塁打383本を含め、1962本のヒットを打ち、101盗塁を記録した。最初の1シーズンと最後の2シーズン以外は、ほぼレギュラーながら、タイトルは獲得しておらず、安打や二塁打などがリーグ1位のシーズンもない。
だが、メルキーは、首位打者を辞退している。今から10年前のことだ。
2011年のオフ、2選手と交換に、メルキーはカンザスシティ・ロイヤルズからサンフランシスコ・ジャアイアンツへ移った。そして、4月は打率.300、5月は打率.429、6月は打率.304を記録し、ファン投票により、最初で最後となるオールスター・ゲームに選ばれた。そこで、ホームランを含むヒット2本を打ち、MVPを受賞した。
後半戦に入っても、調子を落とすことはなく、8月14日にジャイアンツが117試合目を終えた時点の打率は.346。ピッツバーグ・パイレーツのアンドルー・マッカッチェン(打率.359)に次ぐ、リーグ2位に位置していた。ちなみに、オールスター・ゲームで、メルキーはマッカッチェンと交代した。
ところが、薬物検査の陽性反応により、メルキーは8月15日に50試合の出場停止を科された。一方、その直後から、マッカッチェンの打率は下降線を描き始めた。
シーズン規定打席の502に対し、メルキーは501打席。不足分の1打席を凡退として計算しても、打率はほとんど変わらず、.3464…から.3456…となるだけだ。出場しないので、そこから打率が下がることはない。首位打者を獲得する可能性も、大いにあった。
薬物違反で出場停止中の首位打者となれば、批判は必至と考えたのだろう。メルキーは、自分を首位打者の対象から外すことを申し出た。MLB機構と選手会は、それを受け入れたことを9月21日に発表した。この前日の時点で、マッカッチェンの打率は.339。メルキーがトップに立っていた。
結局、この年のナ・リーグの首位打者は、マッカッチェンではなく、メルキーとチームメイトのバスター・ポージーが獲得した。ポージーの打率は.336。マッカッチェンは2位の打率.327。どちらも、メルキーの打率.346よりも低かった。ポージーの首位打者は、この年のみ。メルキーと同じく、マッカッチェンも首位打者は獲得していない。
今オフ、ポージーは、メルキーよりも一足早く、引退を表明した(「バスター・ポージーは殿堂入りするのか。ジャイアンツの名捕手が34歳で引退」)。マッカッチェンは、フィラデルフィア・フィリーズに球団オプションを破棄され、FAになっている。