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卑劣極まる愚行、キエーザの宿敵移籍で16歳弟に誹謗中傷 「金目当て」「裏切り者」

中村大晃カルチョ・ライター
10月2日、セリエAサンプドリア戦でのフェデリコ・キエーザ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

いつになっても、どの世界でも、このような行為はなくならないのか。

夏のマーケットでフィオレンティーナからユヴェントスに移籍したフェデリコ・キエーザの弟が、インスタグラムで誹謗中傷の被害に遭っていることが分かった。『レプッブリカ』や『ガゼッタ・デッロ・スポルト』、『コッリエレ・デッロ・スポルト』など、イタリア紙が報じている。

元イタリア代表エンリコ・キエーザの息子であるフェデリコは、父もプレーしたフィオレンティーナのユースで育ち、2016-17シーズンに18歳でセリエAデビュー。以降、着実に成長してイタリア代表にまでなり、フィオレンティーナの「顔」のひとりとなった。

ステップアップを望んでいたフェデリコは、昨年夏にもユヴェントス移籍に近づいた。だが、合意していた前オーナーがロッコ・コンミッソ現会長にクラブを売却。新オーナーは移籍を認めず、フェデリコはフィレンツェに残ることになった。

新型コロナウイルスによる経済打撃もあり、今夏もなかなか取引がまとまらず、開幕から3試合をフィオレンティーナでプレーしたフェデリコだが、最終日に両クラブは変則的な条件で合意した。

移籍は2年間の有料レンタルとなり、ユヴェントスがその後3年分割払いで買い取る権利(条件次第で義務に変更)を持つ。その際のボーナスも含めれば、総額最大6000万ユーロ(約74億8000万円)を5年で支払うかたちだ。

ユヴェントスは総額で大金を支払う。フィオレンティーナは支払いの長期分割を認める。双方が歩み寄るかたちで、移籍は成立した。

ただ、かつてのロベルト・バッジョの引き抜きを巡る因縁から、フィオレンティーナの一部サポーターにとって、ユヴェントスへの移籍は何よりも許されないタブー行為だ。案の定、フェデリコや現在は代理人を務める父親は、心ない者たちの罵声を浴びることになった。

さらに、フィオレンティーナ首脳陣とキエーザ親子の関係にも亀裂が生じていた。それは、移籍決定後のコンミッソやダニエレ・プラデーSDの発言からも明白だ。彼らは「重荷を降ろせた」「気分を害した」「こんな扱いは我々にふさわしくない」と、キエーザファミリーに不快感をあらわにしている。

それも影響したのだろうか。一部の怒りは、フェデリコの16歳の弟ロレンツォにも向けられてしまった。報道によると、フィオレンティーナのユースに所属する弟のインスタグラムに、誹謗中傷のコメントが寄せられたのだ。約1カ月前の最後の投稿に、数々の暴言が浴びせられた。

「金だけが目当てのこじき家族」

「兄貴に『売春婦の息子』と言っとけ」

「クソったれはフィレンツェから出ていけ」

「そのユニフォームを脱げ。お前の親父と兄貴はクソったれだ」

「お前も去ったほうがいい。オレたちはチームに別のキエーザがいるのを望まない」

「兄貴についてルヴェントス(ユヴェントスを揶揄)にいくほうがいい。お前らはもう終わりだ。お前の家の名前は、ここじゃもう無節操で裏切り者の、金目当ての傭兵なんだ。全員出て行け」

もちろん、これらの愚か者は一部に過ぎず、多くの真のサポーターはあきれ、嘆き、怒り、ロレンツォを激励している。当然だ。兄の移籍とロレンツォには何の関係もない。報道によると、クラブも愚か者の卑劣な行為には距離を置き、ロレンツォへのサポートを強調しているという。

ただ、わずかでも、誹謗中傷が16歳の少年の心を傷つけるのは変わらない。

SNSでの卑劣な誹謗中傷は世界的な問題だが、サッカー界も例外ではない。自身と家族が傷つき、時には脅迫の恐怖に怯えた選手も数多くいる。彼らが余計な心配をせずに済む日が早く訪れるのを願うばかりだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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