卑劣極まる愚行、キエーザの宿敵移籍で16歳弟に誹謗中傷 「金目当て」「裏切り者」
いつになっても、どの世界でも、このような行為はなくならないのか。
夏のマーケットでフィオレンティーナからユヴェントスに移籍したフェデリコ・キエーザの弟が、インスタグラムで誹謗中傷の被害に遭っていることが分かった。『レプッブリカ』や『ガゼッタ・デッロ・スポルト』、『コッリエレ・デッロ・スポルト』など、イタリア紙が報じている。
元イタリア代表エンリコ・キエーザの息子であるフェデリコは、父もプレーしたフィオレンティーナのユースで育ち、2016-17シーズンに18歳でセリエAデビュー。以降、着実に成長してイタリア代表にまでなり、フィオレンティーナの「顔」のひとりとなった。
ステップアップを望んでいたフェデリコは、昨年夏にもユヴェントス移籍に近づいた。だが、合意していた前オーナーがロッコ・コンミッソ現会長にクラブを売却。新オーナーは移籍を認めず、フェデリコはフィレンツェに残ることになった。
新型コロナウイルスによる経済打撃もあり、今夏もなかなか取引がまとまらず、開幕から3試合をフィオレンティーナでプレーしたフェデリコだが、最終日に両クラブは変則的な条件で合意した。
移籍は2年間の有料レンタルとなり、ユヴェントスがその後3年分割払いで買い取る権利(条件次第で義務に変更)を持つ。その際のボーナスも含めれば、総額最大6000万ユーロ(約74億8000万円)を5年で支払うかたちだ。
ユヴェントスは総額で大金を支払う。フィオレンティーナは支払いの長期分割を認める。双方が歩み寄るかたちで、移籍は成立した。
ただ、かつてのロベルト・バッジョの引き抜きを巡る因縁から、フィオレンティーナの一部サポーターにとって、ユヴェントスへの移籍は何よりも許されないタブー行為だ。案の定、フェデリコや現在は代理人を務める父親は、心ない者たちの罵声を浴びることになった。
さらに、フィオレンティーナ首脳陣とキエーザ親子の関係にも亀裂が生じていた。それは、移籍決定後のコンミッソやダニエレ・プラデーSDの発言からも明白だ。彼らは「重荷を降ろせた」「気分を害した」「こんな扱いは我々にふさわしくない」と、キエーザファミリーに不快感をあらわにしている。
それも影響したのだろうか。一部の怒りは、フェデリコの16歳の弟ロレンツォにも向けられてしまった。報道によると、フィオレンティーナのユースに所属する弟のインスタグラムに、誹謗中傷のコメントが寄せられたのだ。約1カ月前の最後の投稿に、数々の暴言が浴びせられた。
「金だけが目当てのこじき家族」
「兄貴に『売春婦の息子』と言っとけ」
「クソったれはフィレンツェから出ていけ」
「そのユニフォームを脱げ。お前の親父と兄貴はクソったれだ」
「お前も去ったほうがいい。オレたちはチームに別のキエーザがいるのを望まない」
「兄貴についてルヴェントス(ユヴェントスを揶揄)にいくほうがいい。お前らはもう終わりだ。お前の家の名前は、ここじゃもう無節操で裏切り者の、金目当ての傭兵なんだ。全員出て行け」
もちろん、これらの愚か者は一部に過ぎず、多くの真のサポーターはあきれ、嘆き、怒り、ロレンツォを激励している。当然だ。兄の移籍とロレンツォには何の関係もない。報道によると、クラブも愚か者の卑劣な行為には距離を置き、ロレンツォへのサポートを強調しているという。
ただ、わずかでも、誹謗中傷が16歳の少年の心を傷つけるのは変わらない。
SNSでの卑劣な誹謗中傷は世界的な問題だが、サッカー界も例外ではない。自身と家族が傷つき、時には脅迫の恐怖に怯えた選手も数多くいる。彼らが余計な心配をせずに済む日が早く訪れるのを願うばかりだ。