【英会話】リスペクトし合おうよって言ったら、外国人にキョトンとされた。なんで?
え~、わたくし徳田孝一郎と申します。
元英会話スクールVice-presidentで、現在は独立して英語・英会話研修スクールを経営したり、英語をネタにしたエッセイや小説を書いたりしています。でも、学生時代から英語ができたわけではなくて、きちんと話せるようになったのは30代中盤でして。
元々英語ができなかった私のそれまでの失敗英語や、今も私の周りで起こっている英語にまつわる失敗談を、多少脚色も加えて笑いながら、英語を憶えていただこうというエッセイです。
リスペクトって言葉が日本語に根付いてだいぶ経ちますね。
「それって、超リスペクト」
とか、
「庵野秀明には石ノ森章太郎へのリスペクトを感じるねぇ」
とか、
ほめたり、尊敬したりする際に使われる言葉として定着してますが、これって、どうもNative English Speakerの使い方とは違うようです。
もう10年ほど前ですが、仕事帰りのPub でNative English Speakerたちとfootball 観戦してたときやらかしてしまったことがあります。みなさんもご注意を。
そのとき私はan English man とa German man とで、まさしく「イングランド対ドイツ」という対戦を観戦していたんです。
もちろん、試合も面白かったんですが、もっと面白かったのはふたりの罵り合いでしてね。こんな感じ。
「ドイツはロボットみたいにパワー頼みの攻撃をしやがって」
と、the English man が言えば、
「なに言ってやがる、イングランドこそ時代遅れの『キック・アンド・ラッシュ』じゃあねぇか。ルーニーが点を取れないのも、戦術が古いせいだ。かわいそうに」
と、the German man が返す。すると、
「言ってろ! 敵にガツンとぶつかってこそ、男になれるんだ!」
と、the English man。まぁ、このあたりまでは、football の話をしていたんですが、だんだん雲行きが怪しくなる。
「うるせえ、行列も作れないようなドイツ人に言われたくないね」
「なんだと、どんな料理だって焼き過ぎちまうイングランド人のくせに!」
と、まあ、最後はfootball は関係なくなってしまって、子供の喧嘩です。お互いの国の悪口を言い合っている。
そういう私は、いつも紳士なイングランド人といつも真面目なドイツ人の弾けるところを見て愉しんでいたのですが、よせばいいのにちょっと参戦したくなって、
「まあ、まあ、お互いにリスペクトし合おうよ」
と言っちゃった。
そしたら、二人ともキョトンとしましてねぇ。で、
「いや、おれたちは充分にリスペクトしてるよ、互いに」
ですって。
二人がキョトンなら、私は目をシロクロ。
『お互いに充分尊敬しあってる? 罵り合ってるのに?』
ちょっと頭の中がショート。
その場では、ショートしたままだったんですが、あとで友人のRich に聞いたところ、respect には確かに「尊敬する」って意味があるんだけど、もう一つの意味の方でよく使われるんだそうです。それは、
尊重する
って意味。
それを聞いて「ああ~」っと思いました。
尊敬する ってことは、相手の能力や実績に対して敬意をあらわすって意味が強く出ている言葉です。
それに対して、
尊重する は、相手の存在そのものを認めてるって意味の言葉。
だから、どんなfootball 戦術だろうが、行列を作れなかろうが、どんな食材でも焼き過ぎちゃおうが、相手を認める。
なるほど、確かに認め合っているからこその罵り合いのじゃれ合いです。そこに、認め合おうよ、なんて重ねるなんて野暮ったいったらありゃしない。
みなさんは、私みたいに野暮にならないよう、
日本語での「リスペクト」は、尊敬する
英語での"respect" は、尊重する
と使い分けてください。
と、こんな感じで、このエッセイではNative English Speakerたちとの失敗談をご披露したいと思っております。笑いながら(呆れながら)、きちんと伝わる英語を身に着けてください。
お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。
イラスト 大橋啓子