Yahoo!ニュース

エディー・ジョーンズ、古巣・日本代表の苦境をどう見る?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
イングランド代表は今年6月、アルゼンチン遠征で主力欠くも2連勝。(写真:ロイター/アフロ)

現イングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズは7月8日、都内で日本人指導者向けのコーチングセミナーを開催。終幕後はメディアの取材に応じ、2015年まで約4年間指揮を執った日本代表について語った。

ジョーンズは日本代表において、テストマッチ10連勝やワールドカップイングランド大会3勝などの偉業を達成。「JAPAN WAY」「ハードワーク」などの代名詞とともに、ファンの支持率を高めていた。

一方、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ率いるいまの日本代表は、苦境に立たされている。スーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズと連携を取りながらも、今年6月のツアーを1勝2敗で終えた。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――休む間もありませんね。

「ちょうどイングランド代表のシーズンを終えまして、選手は5週間の休みに入りました。私はニュージーランドへ行ってブリティッシュ&アイリッシュライオンズの試合を観ていました。日本のラグビーのために何かできればということはいつも考えているので、(今回のセミナーは)何年もやっていきたい。私の知識を、日本のコーチと共有する機会です。驚いたのが、かつて選手として指導していた人がコーチとしてここに参加していたことです。新しい世代のコーチが生まれている」

――さて、いまの日本代表についてはどうご覧になっていますか。

「ジョセフにとっては難しいが、これから厳しいセレクションの判断をしていかなくてはいけない。年齢の上がった選手を何人かキープしないといけないでしょうし、もっと若いチームにするという判断もしないといけないのかもしれない。私のアドバイスは、何かをするのだとしたらそれを早くすべきということです。時間は早く過ぎてしまう。ワールドカップまであと2年です」

――「何か」は、何だと思いますか。

「セレクションです。2019年のワールドカップのスコッドがどうなりそうかを、近々固めないといけないでしょう。そこに向けて、いまのスコッドを構築しないといけない。いまはベストではないとしても、2年後はベストになっているだろうという選手(もリストアップする)。最近では、フッカーの庭井祐輔に感心しました。いまのベストなフッカーではないかもしれないですが、潜在的に2年後はベストになるかもしれない」

――「2年後はベストになるかもしれない選手」には、2年間かけてどんなアプローチをしてゆきますか。

「まずはスコッドを決めないといけません。そのうえで各選手に何が必要かを考えます。より強くなるべきなのか、速くなるべきなのか、改善すべきスキルレベルがあるのかを見ていかないといけない。その課題に対して、選手は取り組まないといけません。鉄則として、ワールドカップ時には少なくとも総スコッド数600キャップ(テストマッチ出場数)は必要です。経験が必要。計画を立てないと、そのようにはできません」

――ジョセフの提唱するラグビーへの選手の習熟度については。

「時間はかかると思います。契約上、ジョセフはいまの職務には1年弱しかついていないという段階。来年は、ジェイミーの考えるようなプレーができるチームになるのではと思います」

――もし2016年以降もジョーンズさんが日本に残っていたら、サンウルブズという機関をどう活用しますか。

「サンウルブズを作ったのも、代表をサポートするのが目的でした。まずは日本代表の選手に何試合プレーして欲しいかを考えていきます。6月に3試合、11月に3~4試合のテストマッチがあります。そうなると、年間7つのテストマッチがある。それでは、不十分。私は年間12~15くらいのテストマッチがおこなわれて欲しいと思っていますので、6月までの間に4~5試合はテストマッチを入れて、スーパーラグビーが終わるあたりにまたテストマッチを入れる。それを踏まえ、ここから逆算してスケジュールを組むと思います」

――スーパーラグビーのシーズンと並行して身体を作り上げる。難しいのでは。

「言い訳は何でもできる。それをする違った形を見つけないといけない」

――2015年のワールドカップでヒーローとなった五郎丸歩選手が、1年半ぶりに日本に復帰しました。当時以来の代表復帰に向けては。

「彼次第です。これから本当にハードワークをするかどうか。彼は十分にいい選手なので、意欲を持てるかどうか、です」

現場サイドにとって口惜しい点のひとつは、いまでも前指揮官の発言にメディアやファンが注目していることだろう。いまならではのプランニング、いまならではのハードワークが待たれる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事