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朝番組の生放送中、女性天気予報キャスターに肌を隠させたのは、性差別か、宣伝行為か?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
KTLA

ロサンゼルスのローカルTV局のお天気お姉さんが、一夜、いや一朝にして、全米の有名人になった。

米西海岸時間14日(土、)同局のお天気キャスター、リベルテ・チャンは、朝の番組に、夜のカクテルパーティを思わせる、露出度の高い黒のミニドレスで登場。だが、彼女が予報を伝え始めてまもなく、画面の右から、男性アンカーのクリス・バローズが、グレーのカーディガンを差し出した。チャンは、笑顔を保ちながらも、「何?これを着ろというの?どうして?寒いから?」と質問。彼は「メールがたくさん来ているんだよ」と答えた。言われるとおりにカーディガンを着た彼女が、「まるで図書館員みたいだわ」と言うと、バローズは、「それでばっちりだ」とコメントしている。

この出来事の直後、チャンは、ツィッターで、その前に考えていた服は、グリーンスクリーンの前に立つ上でうまくいかなかったため、この黒のドレスに変えたのだと説明。「朝早い時間だけれど、ビーズ付きの黒のドレスを着たかったのよね」と告白した。

同時に、ソーシャルメディアでは、一般人の論議が飛び交い始める。チャンを弁護する人たちは、「ニュースの歴史で、男が生中継中に服を変えろと言われたことはある?」「彼女の服のどこがいけないんだ。メールを送った奴らは、ほかにやることを見つけろよ」「彼女は美しい人。文句を言った人は、彼女に嫉妬しているんだろう」「性差別だ」などのコメントを投稿。KTLAの天気予報コーナーで男性レポーターの背後に水着姿の女性ふたりが立っている過去の場面写真を見せつつ、「矛盾している」と批判するコメントもあった。一方で、「露出が多すぎるというわけじゃないにしても、朝にはふさわしくない」「L.A.で6番目のTV局で仕事をしていたら、知名度を上げるために、何だってするだろう。でなければ誰も見てくれていないんだから」「全部、宣伝目的でやったこと」といった声も出ている。

一夜明けた15日(日、)チャンは、問題がここまで大きくなったことに驚いているとし、「人はこれを性差別だと言ったけれど、私はむしろ、笑える出来事だと思った。全然嫌な気持ちはしていない。性差別だったとは思わない。個人的な意見だけれど」とFacebookに投稿した。バローズは、ツィッターで、チャンに生中継中に恥をかかせてしまったと謝罪している。

チャンは、2ヶ月前にも、間違った服を選んで騒動を起こしている。

このワンピースは地図を写しこんでしまった
このワンピースは地図を写しこんでしまった

この時は、薄いグリーンに赤の模様が入ったミニドレスで登場し、ドレスの色がグリーンスクリーンに噛み合わず、服の上にアメリカの地図が映されてしまった。これを見たバローズは即座に自分のジャケットを手渡し、状況を乗り切っている。

ここでやや不思議に感じられるのは、KTLAが、彼女の服の選択について、事前に何も言わなかったのかどうかだ。天気レポーターに対して一定のドレスコードがあることは、昨年秋、全米各地で20人以上のお天気お姉さんが同じ服を着て登場したのがきっかけで、ちょっとした話題になっている。彼女らが着たのは、amazon.comで買える、23ドルの、体にフィットする、膝下丈で、袖丈は肘よりやや長いドレスだった。

大勢のお天気お姉さんに愛された23ドルの服
大勢のお天気お姉さんに愛された23ドルの服

女性天気予報レポーターらが作るFacebookのページでひとりがこれを勧め、多くが同じものを注文したことから起きた現象らしいが、彼女らはそれを恥じることなく、みんなの写真をコラージュにして発表することまでしている。このコラージュをネットに投稿したフォックスのダラス局のジェニファー・メイヤーズは、「天気予報を伝える女性が着られる服は、限られている。柄物はもちろん、レースがついているのもだめ。緑色はいっさいNG。ミニ丈も、胸の谷間が見えそうなものも」と、このドレスが仲間内で大人気になった理由を説明。その投稿に対して寄せられたあるコメントへの答で、天気予報レポーターが着る服は自腹で、ヘアメイクもたいていは自分でやることも明らかにしている。

つまりKTLAは、天気予報レポーターに自由を許す稀な局ということか。チャンが着たのと同じエイダン・マトックスのミニドレスは、サックス・フィフス・アベニューのサイトに、385ドルで出ている。23ドルで買える素敵な服を日々探し回っているほかの局の同業者は、うらやましいと思っているのだろうか、それとも、不快に感じているのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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