「コメダ」参戦でコッペパン戦国時代へ突入か?
コッペパンは日本生まれのパン
日本人なら誰もが一度は食べたことがあるであろう「コッペパン」。コッペパンはかつて戦後高度成長期において、学校給食には欠かせないパンだった。街のパン屋さんやコンビニのパン売り場には必ず置かれているコッペパン。私たちの日常に当たり前のように存在しているコッペパンは、実は大正時代に日本で生まれた日本オリジナルのパン。日本で初めてドライイーストの製パン法を考案し「丸十製パン」を創業した田辺玄平氏が、大正8年に陸軍の糧食嘱託となり、食パンより携帯に便利なコッペパンを開発し納入したものが最初とされている(参考資料:全日本丸十パン商工業協同組合ホームページ/株式会社マルジューホームページ)。
そんな長い歴史を持つコッペパンだが、今空前のコッペパンブームが到来している。そのきっかけとなったのは、2013年東京亀有にオープンしたコッペパン専門店「吉田パン」のブレイクだ。岩手盛岡でソウルフードのように愛されている「福田パン」で修行したオーナーによる店で、焼き立ての大きなコッペパンに甘いジャムや惣菜などを目の前で挟んで提供するスタイルで、常時40種類近いメニューが揃い大人気店となった。
大手が続々とコッペパン市場に参戦
「吉田パン」のブレイクをきっかけに、都内を中心に急激に増えている「コッペパン」専門店。個人店を中心に増えていった中で、後発ながらも続々と大手がコッペパン市場へと名乗りを挙げた。創業500年を誇る老舗和菓子店「とらや」もコッペパン市場に参入。新業態「TORAYA CAFE AN STAND」にて、オリジナルのあんペーストとクリームチーズを挟んだ「あんコッペ」を販売。季節の素材を使ったシーズナル商品も展開するなど、女性客を中心に人気を博している。
さらに、店舗展開を進めている「パンの田島」(ドトール・日レスホールディングス)や、千葉駅構内で人気の「カワシマパン」(川島屋)などはいずれも別ブランドで名が知られている大手ばかり。また「コッペんどっと」(横浜市)「(食)盛岡製パン」(市川市ほか)「月刊アベチアキ」(相模原市)などはそれぞれ別の店舗ではあるが、すべてベーカリー専門のコンサルティング会社「ジャパンベーカリーマーケティング」がプロデュースした店だ。
「コメダ珈琲店」もコッペパン業態を展開
そんな中、人気コーヒーチェーンの「コメダ珈琲店」(株式会社コメダホールディングス)も、2017年よりコッペパン商戦に参入。まずはテイクアウト専門業態の「コメダ謹製『やわらかシロコッペ』」を名古屋や都内のデパートを中心に期間限定で出店し、満を持して2018年3月にコメダ初となるセルフサービス型店舗「コメダスタンド」を、池袋サンシャインシティ・アルパ内にオープンした。
「都会の山小屋(アーバンヒュッテ)」をテーマにした店舗は、カウンターでオーダーしてスタンド席でイートインするスタイルながら、丸太や石造りによる山小屋風の内外装で居心地の良さを演出。コメダの既存店舗とのイメージにも合致する店舗デザインになっている。「コメダ珈琲店」と「コメダ謹製『やわらかシロコッペ』」の2業態をミックスさせたスタイルにより、コメダならではのコーヒーと人気のコッペパンを楽しめる業態を生み出した。コーヒーもコッペパンも価格が250円からあるので、両方合わせてもワンコインから楽しめるという価格設定は分かりやすく実に戦略的だ。
気になるコッペパンのラインアップは、名古屋ならではの組み合わせである「小倉マーガリン」をはじめ「ポークたまご」や「クッキー&バニラクリーム」など、期間限定アイテムなども含めて常時15種類以上を用意。コッペパン専門店のように揚げ物などの惣菜色が強いものを外すことで、厨房設備やオペレーションの軽量化も果たしている。テイクアウトにもイートインにも対応することで、従来テイクアウトが主であったコッペパン専門店との差別化にも成功した。
また、前述した「TORAYA CAFE」同様、あくまでもコーヒースタンドのメニューとしてのコッペパンという位置づけにしているため、例えば人気商品の「シロノワール」なども追加投入しやすく、さらにコッペパンブームが去ったあとでもメニュー転換が容易なスタイルになっているのはさすがだ。
高級ブーランジェリーのハードパンや、高級食パンブームの反動のように興った、昔懐かしいコッペパンの再評価。パンは一種類でも中身を変えることで様々な個性を打ち出せるのは、作り手にも食べ手にも魅力的。大手参入によってコッペパン戦争はますます激しさを増しているが、今後生き残っていくのはどの店になるのか。またコッペパンブームはいつまで続くのか。今後も注視していきたいと思う。
※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。