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21世紀枠最終候補決定。2017センバツ、"清宮世代"の主役候補 その3

楊順行スポーツライター
最終学年を迎える清宮幸太郎のライバルをさがせ!(写真:岡沢克郎/アフロ)

「その1」「その2」に続いて、残るは3地区。両地区で出場5枠の中国、四国からは、秋季地区大会優勝の宇部鴻城、明徳義塾が出場確実、準優勝の市呉、帝京五もほぼ当確だ。両地区の力関係から微妙な5校目だが、四国では明徳義塾が準決勝で済美にコールド勝ちし、帝京五との決勝も大差をつけた。これと比較すると、中国の準決勝で宇部鴻城と接戦を演じた創志学園が滑り込むか。

さて、中国地区の主役候補は宇部鴻城の嶋谷将平遊撃手。本人が「自信がある」というように、とにかく守備がうまい。

「エラーはほとんど見たことがない」

とは尾崎公彦監督で、なんでも、

「表現するとしたら、打球がグラブに入る前から送球が始まっている感じ。彼には、好きなように守りなさい、といっています」

魅せたのが中国大会の準決勝だ。創志学園に1点差に詰め寄られた9回裏。嶋谷は、三遊間寄りの左打者の打球を軽いステップで処理すると、一塁に送球して試合終了。もし抜けていれば、二塁走者に同点の生還を許していたかもしれない打球だが、嶋谷は「(振り出しの)タイミングが遅い。逆方向に来る」と的確に判断。ミート直前に三遊間に1歩寄ったことが、美技の伏線にあった。

この試合の嶋谷は、四番に座る打撃でも4打数3安打。市呉との決勝では2本の二塁打含む4の4、2打点と気を吐いた。中国大会の通算では16打数10安打の打点7で、

「打席では重心を落とし、下半身を意識しています。そのためには体幹を鍛えて、バットのヘッドを走らせるようにしたい」

と本人は語る。あこがれは、同じショートを守る北條史也(阪神)。そういえば光星学院時代の北條は、「ふつうならショーバンになる送球が伸びてくれる」と、甲子園で分泌するアドレナリンについて語ってくれたものだ。「スタンドの"うまいなぁ"という声が快感」という嶋谷が、その大舞台でどんなプレーを見せてくれるか。

21世紀枠は不来方、洛星、高千穂あたりか?

九州地区優勝の福岡大大濠では、九州大会で3試合連続完封を演じた三浦銀二もさることながら、古賀悠斗捕手の存在が際立った。1年時から三塁の定位置を獲得し、前チームでは遊撃手としてプレー。春季九州大会優勝に貢献した。だが主戦・濱地真澄(阪神指名)を擁しながら夏の福岡大会で初戦敗退すると、捕手にコンバート。

「(八木啓伸)監督が、自分の能力を見抜いてくださいました。肩の強さが僕の売りですから、迷いはなかった」

すると、その八木監督さえ「3カ月でよく育ってくれた」とびっくりするほどの成長だ。九州大会では、三浦の3試合連続完封をアシストしながら13打数4安打。神宮大会の明徳義塾戦では、自身通算41号を放つとともに、三浦をまたも完封に導いている。早稲田実戦との準決勝は、清宮幸太郎に1安打4四死球、野村大樹に5打数3安打4打点と粉砕され、「いい投手が打たれるのはキャッチャーの責任」と唇をかんだが、冬を越してどこまで成長するのかが楽しみな捕手だ。

九州からはこの福岡大大濠に東海大福岡、秀岳館、熊本工と、福岡&熊本からのアベック出場が有力だ。そして、どのチームが選考されるか予想のむずかしい21世紀枠だが、見てみたいのは部員10人の不来方、これも部員10人のスーパー進学校・洛星、それに高千穂あたり。選考委員会は、来年1月27日である。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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