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スマホは絶対にダメ? 飲食店の食事デートで好印象を与えるマナーと考察

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

デートの食事マナー

ある程度の年齢に達していれば、デートで飲食店に訪れたことはあるかと思います。

ホットペッパーグルメ外食総研が、デートの食事マナーについてアンケートを行い、2024年9月26日に結果を掲載しました。

デート最大のマナーはコミュニケーション!? 飲食店デートで「マナーだと思う」「した方がよいと思う」ことランキング/ホットペッパーグルメ外食総研

デートにおける15の場面を挙げて、「マナーだと思う」「マナーとまでは思わないが、した方がよいと思う」「どちらでも特に気にならない」「むしろマナー違反だ」の中から1つ選択。

結果を考察していきたいと思います。

スマートフォンをいじらない

男女ともに1位となったのが、「極力スマホをいじらない」(男性 1位 79.3%、女性 1位 90.2%)です。

一部のファインダイニングでは、スマートフォンを使うことはおろか、テーブルに出すことも禁止されています。しかし、ほとんどの飲食店では、スマートフォンの使用は何も制限されていません。

「極力スマホをいじらない」は、調査の趣旨とも相まって、飲食店への配慮ではなく、デート相手に対して向けられた気遣いです。

わざわざ飲食店へ訪れて、ふたりだけで食事するのは、その相手と体験を共有したい、コミュニケーションをとりたいということです。もしも、デートではなかったとしても、飲食店ではなかったとしても、食事ではなかったとしても、誰かとふたりだけでどこかに行くのであれば、その意図は多かれ少なかれ、同じようなものではないでしょうか。

できるだけスマートフォンを見ないのは、同席者に最優先に意識を向けるということなので、男女ともに1位となっているのは、非常に納得できます。

ただ、男性の約21%はデート相手がいても、スマートフォンの利用を気にしていません。これは思ったよりも多いのではないでしょうか。

感想をいう

「食べたものの感想を相手に言う」(男性ランク外、女性2位 45.0%)は、男女の差が顕著でした。先に述べたように、ふたりだけで食事に行くのは、体験を共有したいという想いがあるはずです。

食事の主役は食べ物なので、食べものについて感想を伝え合うのは、非常に自然なこと。映画を観に行ったら、その映画の感想を口にするのと同じです。

「おいしかった」と互いに共感し合ったり、自分の好みと相手の好みの違いを比べたり、提供された料理にまつわる過去の体験談を披瀝したりと、食べたものを軸にして様々なものを共有できます。

男性の「食べたものの感想を相手に言う」はランク外なので、10位の42.7%より割合が少ないです。「マナーだと思う」だけではなく、「マナーとまでは思わないが、した方がよいと思う」も選ばれなかったということなので、約6割以上の男性は、同じものを食べていても、それを話題にする必要性を感じていないことになります。

男性が女性をリード

男性が女性をリードする項目が目立ちます。

「男性がドアを開けてあげる」(男性 2位 62.5%、女性 4位 39.2%)、「男性が店員を呼ぶ・注文する」(男性 4位 59.0%、女性 5位 38.0%)。「男性がお店の予約をする」(男性 7位 48.2%、女性 9位 27.0%)、「男性がお店の看板メニューなどの下調べをしておく」(男性 8位 45.8%、女性 10位 22.8%)がランクインしているのです。

男性が事前に下調べをしておいた上に予約し、入店する際にはドアを開けるなどして女性を気遣い、食事中はスタッフとのやりとりを積極的に行うことがマナーだと考えられています。

食通は男性に多いかもしれませんが、全体的に女性の方がデートに訪れるような飲食店に慣れているのではないでしょうか。ただ、男女の割合を比べてみると、どの項目でも、男性の方が女性よりも多いので、男性が自身で女性をリードしなければと思っているようです。

男性が食べるペースを合わせる

一般的に、食べるペースや分量は、男女で大きな差があります。

「男性が食べるペースを女性に合わせる」(男性 5位 55.5%、女性 6位 36.5%)は、その男女差を男性がカバーするべきということです。男性が5位、女性が6位と、順位は近いですが、割合は男性55.5%、女性は36.5%と、20%ほども開きがあります。

コースであれば、2人とも食べ終えなければ次の料理は提供されないので、男性だけがどんどん食べ進んでいって、先に食事を完了してしまうことはありません。また、2人で話をしながら食べていれば、男性も自然と食べるペースが落ちるので、ラーメンや牛丼をかき込んで食べるようなスピードにはならないでしょう。

女性の方が割合が低いのは、女性の方がデートでの食事の実態を知っており、冷静に状況を捉えているからかもしれません。

ドリンクは男女差があまりない

「ドリンクの減り具合を見て次に何を頼むか聞く」(男性 3位 59.2%、女性 3位 43.2%)と「ドリンクの追加注文のペースを相手に合わせる」(男性 9位 43.3%、女性 7位 29.9%)は、どちらとも、男性が女性をリードするものにはなっていません。

食べ物は、男性の方が女性よりも、食べるボリュームが多く、スピードも早いですが、ドリンク、特にお酒となると、個人的な体質に依るところが大きくなるからです。

お酒を飲める人は、男女に関係なく、何杯でも飲むことができます。相手の杯が空になったら、次のドリンクを促すのは、気遣いの表れです。

「ドリンクの減り具合を見て次に何を頼むか聞く」が「ドリンクの追加注文のペースを相手に合わせる」よりも上位にあるので、相手のペースを気にすることなく、自分のペースで遠慮なく飲んでほしいことを示しています。

支払いに関して

SNS上では、食事は男性が女性にご馳走するのが普通か、割り勘でいいのかと、よく議論されています。

この調査では「男性が食事代を全て出す」(男性 6位 48.7%、女性 7位 29.9%)がランクイン。ただ、割合を見てみると、男性が48.7%と半分程度ですが、女性は29.9%になっており、7割の女性は男性が全て支払うものではないと考えています。

そのため「会計は女性がトイレに行っている間に男性がする」(男性 10位 42.7%、女性 ランク外)では、女性がランク外。男性は42.7%になっているので、「男性が食事代を全て出す」と考えている男性の9割近くは、同時にスマートに会計するべきだとも考えています。

食事デート

飲食店でのマナーは時代によっても変わりますが、男女の価値観がからむデートになると、さらに複雑になります。

マナーは共通の約束事なので、はなから無視するのはよくありませんが、気にしすぎると食事を楽しめなくなり、せっかくのデートが台無しになってしまうかもしれません。

食事は、人間関係の潤滑油となり、人と人との絆を深めるもの。マナーを適度に守りつつ、素晴らしい食体験によって、ひとつでも多くの食事デートが成功することを願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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