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清宮だけじゃない! センバツの主役/その3 三浦銀二・古賀悠斗[福岡大大濠]etc.

楊順行スポーツライター
2016年センバツ閉会式より(写真:岡沢克郎/アフロ)

Bブロックでは、昨秋九州地区優勝の福岡大大濠バッテリーがいい。エースの三浦銀二は九州大会で、夏の甲子園4強メンバーが多く残る秀岳館戦など、3試合連続完封。公式戦13試合の登板で6完封という、ミスターゼロだ。入学時、1学年上の濱地真澄(現阪神)の球威を見て愕然とした。当時、三浦の球速は120キロそこそこ。

「なにか武器を手に入れないと、試合で投げられない」

と、テーマにしたのが制球力だ。1試合あたりの四死球は2個強。しかも内外角の出し入れがうまく、球速だって144キロと、入学時からすれば20キロ以上もアップした。公式戦の投球回数110は32チーム中最多で、防御率1.64と安定している。神宮大会での明徳義塾戦では、またも4安打3四死球の完封劇。

「練習試合で対戦したときとは別人で、インコースをうまく使われた。頭のええピッチャーやね」

と甲子園の強者・馬淵史郎監督をも脱帽させている。ただ神宮では次戦、早稲田実に6失点で敗退した。三浦は清宮幸太郎に1安打4四死球、野村大樹に5打数3安打4打点と打ち込まれた。そこで、

「いい投手が打たれるのは、キャッチャーの責任です」

と反省しきりだったのが、古賀悠斗捕手だ。もっとも、1年時から三塁の定位置を獲得し、前チームでは遊撃手だった古賀の捕手転向は、夏の福岡大会敗退後。つまり転向したて、発展途上なのだ。だが、抜擢した八木啓伸監督さえ「3カ月でよく育ってくれた」と驚くほど、成長は急だ。九州大会では三浦の3完封をアシストし、打っても13打数4安打。神宮の明徳戦では、自身通算41号のホームランも放っている。

「監督が、自分の能力を見抜いてくださいました。肩の強さが僕の売りですから、捕手転向に迷いはなかった」

と古賀はいう。チームは、春夏通じて26年ぶりの甲子園。持ち前の柔らかいバッティングだけではなく、二塁送球1・85秒という強肩を披露してくれそうだ。初戦の相手は、最速145キロの好投手・難波侑平擁する創志学園である。

東海大市原望洋のミスター完投・金久保優斗

このゾーンでもう一人楽しみな投手は、東海大望洋市原の金久保優斗だ。昨秋はチーム公式戦14試合のうち13登板で10完投という、絶対的なエースである。中3夏には、佐倉シニアの柱としてジャイアンツカップを制覇。高校1年時、「テイクバックを小さくしてみた」ら速さと切れが増し、下半身の充実とともに最速は147キロまで伸びた。

ただ、昨秋。チームは、1次予選で志学館に敗れた。秋は敗者復活のある千葉県のこと、そこからなんとか関東大会準優勝までこぎ着けたものの、他県ならば一発でセンバツへの道が断たれかねない敗戦だった。

「あの試合では、球速を意識して力が入りすぎました。相川(敦志・前監督)先生から"まだエースになりきれていない。エースの責任を持て"といわれてから、力を抜き、切れとコントロールを重視しています」

現に関東大会では、完投した4試合とも最速が141キロである。秋の関東大会から就任した和田健次郎監督によると、「金久保がいるのが、このチームの強み」。佐倉シニアのチームメイト・鯨井祥敬、藤本誠啓、塚本翼とともに、中学に続くタイトルを取りに行く。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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