シングルマザーボクサー吉田実代が世界初挑戦「子育ての経験が、私を強くしてくれた」
女子東洋太平洋&日本バンタム級王者吉田実代(31)が、6月19日に千葉・幕張メッセでWBO世界スーパーフライ級王座決定戦に出場する。
シングルマザーボクサーとして、初の世界挑戦となる。以前から親交がある筆者は、世界戦に向けて調整する吉田にインタビューをした。
世界戦に向けての意気込み
ーーー世界戦が決まりましたが、意気込みは?
吉田:大丈夫です。もうやる気しかありません。
ーーーいつ頃、世界戦の話があったんですか?
吉田:4月末ぐらいですね。
ーーー今回、階級を1つ下げたんですね。(スーパーフライ級)
影響はないですか?
吉田:もともと、バンタム級が合っていなかったので、そんなに影響はありません。
ーーー今回、井岡一翔選手、京口紘人選手とトリプル世界戦になりましたね。
吉田:はい。ビッグネームの2人と、一緒に試合をすることができて恐縮です。
幕張メッセという大きな会場で、女子の試合が組まれることや、タイトルマッチをさせてもらえることは、異例だと思っています。
期待に応えられるような試合をしなければならないので、嬉しいですが、プレッシャーもありますね。
試合までの調整について
ーーー今回の相手、ケージー・モートン選手はどんな選手ですか?
吉田:映像は見ました。ガードが堅く、手数も多く、ポイントを取るのが上手な選手です。
ーーー減量は、何キロぐらいしますか?
吉田:あと3~4キロです。最近は、勝手に落ちてしまいますので、あまり減量はしていません。
ーーー減量には、いつもそんなに苦労していない感じですか?
吉田:そうですね。そんなに苦労していません。
ーーーその辺は大丈夫ということですね。
吉田:はい。あと、筋トレをやめたからかもしれません。
ーーーやめたんですか。
吉田:はい。今はその時間を削って、技術の練習に変えています。そうすると、自然と要らないものが落ちてきます。
ーーー男子と女子で調整は変わるのですか?
吉田:そうですね。やはり生理があって、ホルモンバランスが変わってきます。
それに私には、子育てもありますから。減量でメンタルがゆらゆらしている場合ではないので、ウエイト管理は慎重になります。
ーーー節制は普段からやっていますか?
吉田:そうですね。ガチガチに節制しているわけでもなく、食事管理は程よく、しっかりと考えて、楽しくやっています。
ーーー僕もですけど、ボクサーは甘いもの好きが多いですよね。
吉田:そうですね。エネルギー源となる糖質を取ってから動きたい、というのがありますよね。
ーーー今回の挑戦で特別意識していることや、今までと変えることはありますか?
吉田:試合中の配分やスタミナの出し方です。モートン選手は、タイトルマッチを含めて10ラウンドの試合を、2~3回していると思うのですが、私は8ラウンドまでしか経験していません。
また、今までは自分より大きい選手ばかりでしたが、今回、ゴツくて小さいという感じです。
自分より6センチぐらい低いので、そういう選手にスパーリングをお願いしています。
女子ボクシングを盛り上げていきたい
ーーー海外に比べて、日本の女子ボクシングは盛んですか?
吉田:盛んだと思います。技術も高いしチャンピオンも多いですし、もっと注目されてもいいのにな、と思います。
ーーー今は、女子格闘技が盛り上がっていますので、ボクシングでも、もう少し盛り上がって欲しいですね。
吉田:そうですね。同じことをしているのに、盛り上がりが違って、悔しいです。ボクシングも役者がそろっていると思いますので。
ーーーそうですよね。
吉田:はい。ですから、もっと盛り上げて、注目度を上げていきたいです。
ーーー女子ボクサー同士は仲がいいのですか?
吉田:べったり、というわけではないのですが、「ボクシング女子会」のようなものがあって、私も入れてもらっています。
月1回集まって、女子ボクシングをどうやってメジャーにしていくか、などを話し合っています。
会に出ることで、もっと、女子ボクシング会のために頑張ろう、と思うようになりました。
チャンピオンになってからの変化
ーーーでは、日本チャンピオンになって意識が変わりましたか?
吉田:そうですね。だいぶ変わりました。私が日本タイトルに挑戦した時は、ライバルだった高野人母美さんがすごく注目されていました。
階級もフライでもバンタムでも行けたのですが、高野さんは絶対バンタムに来ると見越して、バンタムにしました。
ーーー高野さんと戦いたかったんですね?
吉田:はい。それで、高野さんに勝ち、バンタム級でチャンピオンになって、そのままバンタムでやっています。
ーーー日本チャンピオンになって、変化はありますか?
吉田:あります。メディアの取材を受けるようになりました。チャンピオンになってから、多くなりましたね。
ーーーチャンピオンになって、周りの人も喜んでくれたでしょう。
吉田:そうですね。私は格闘技歴が今年で11年になります。
21歳から始めて31歳ですので、昔から知っている人達には、「やっとここまで来たか」「感慨深いな」と言われて嬉しかったです。諦めずにやってきてよかったと思います。
今が一番いい時期
ーーー練習で一番重視するポイントはありますか?
吉田:その日の体調に応じて、メニューを変えています。
すごく体が動くときはスタミナ系を重視しますし、逆に体が動くけれども頭が回らないときは、単純な追い込みをしたり、
体も心も元気なときはスパーリングをします。
ーーーボクシングでの自分のやり方が、できている感じすか?
吉田:そうですね。ボクシングとキックボクシングは全然違いますが、試合に向けての調整は同じですから。
ーーーでは、今はキャリアの中でも一番いいときですか?
吉田:そうですね。一番いいと思います。
ーーー乗っている感じですね。
吉田:はい。体力も今年、来年ぐらいがピークですね。
心も、子育てを経験したことで、強くなりました。
ーーーメンタルはボクサーにとって重要な要素ですよね。
吉田:私は「メンタルが弱い」と周りに言うのですが、「絶対に弱くないだろう」と言われます。試合よりも、日常でメンタルを鍛えてきた感じがあります。
ーーー本当にそうですね。
吉田:本当に、好き勝手に生きてきていますので(笑)
好きなことを一生懸命できて、それが、仕事として成り立つようになったのは嬉しいです。