なぜレアルは“失速”したのか…ベンゼマの代役を確保しなかった代償とカゼミロが残した大きな穴。
突如として、ブレーキがかかった。
リーガエスパニョーラ第7節、レアル・マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウでオサスナと対戦した。試合は1ー1の引き分けに終わり、今季全勝していたマドリーに初めて土がつけられた。
この結果を受け、バルセロナ(勝ち点19)が首位に浮上した。マドリー(勝ち点19)と同じ勝ち点ながら、得失点差でバルセロナが上回っている。10月16日にはクラシコが控えており、その前の手痛いドローだった。
オサスナ戦で象徴的だったのは、カリム・ベンゼマのPK失敗だ。
チャンピオンズリーグのセルティック戦で負傷していたベンゼマは、オサスナ戦で戦列復帰を果たした。だが試合を通じて好パフォーマンスを披露したとは言い難く、終盤にはまたもGKセルヒオ・エレーラを前にPKを失敗している。
■ベンゼマの代役
マドリーは今夏、ベンゼマの代役を確保しなかった。当初、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)の獲得を目指していたものの、最終的にはエムバペがパリSGとの2025年夏までの契約延長で合意して、トップクラスのアタッカーを引き入れられなかった。
ガブリエウ・ジェズス(現アーセナル)、エディン・ジェコ(インテル)、クリストファー・エンクンク(ライプツィヒ)…。多くの名前が補強候補に挙げられ、現れては消えた。ヴィニシウス・ジュニオールのEUパスポート取得が遅れた背景(9月2日に取得)もある。しかし、結果的にマドリーにCFは到着しなかった。
カルロ・アンチェロッティ監督はベンゼマ不在の解決策を考えなければいけなかった。現有戦力でやり繰りしながら、である。そこで試されたのがエデン・アザールやロドリゴ・ゴエスのゼロトップだった。
「ロドリゴはインテリジェントな選手だ。オフ・ザ・ボールの動きが良く、技術を備えている。すべてのポジションでプレーできる。CFでのプレーには慣れていないかも知れない。けど、彼は賢いので、すぐに学ぶはずだ」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
ロドリゴはライプツィヒ戦とアトレティコ・マドリー戦で得点を記録した。“場当たり的”な解決としては、一案となった。ただ、ベンゼマ不在の時、またベンゼマが不調な時の解決策というのは、本当の意味ではまだ見つかっていない。
■カゼミロの残した穴
問題はそれだけではない。
マドリーは今夏、カゼミロを放出した。マンチェスター・ユナイテッドの移籍金7000万ユーロ(約98億円)のオファーを前に、マドリーに断る理由はなかった。
新加入のオウリエン・チュアメニが奮闘してはいる。だが、カゼミロの残した穴は大きい。
トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、カゼミロはマドリーで盤石の中盤を築いた。クロースとモドリッチがゲームをコントロールして、彼らの「背後」をカゼミロがカバーするやり方が染み付いていた。
クロースとモドリッチがゲームメイクに集中できたのは、カゼミロがいたからである。フェルラン・メンディやダニ・カルバハルが高い位置を取れたのも同様で、カゼミロのカバーリング能力があってこそ、サイドバックが積極的に攻撃に参加できた。
そのカゼミロがいなくなり、アンチェロッティ監督は中盤の再構成を強いられた。
クロース、モドリッチ、チュアメニに、ダニ・セバージョス、エドゥアルド・カマヴィンガを加えながら3選手の組み合わせを熟慮している。フェデリコ・バルベルデをミドルゾーンで配置するため、右ウィングで使い難くなるというジレンマも生まれている。
「言い訳はできない。素晴らしいメンバーが揃っている。試合は我々が望むようなものにならなかった。それでも、PKを決めていれば、勝てた試合だった。ここまで、チームは非常によくやっていると思う。(オサスナ戦の引き分けに)ラ・リーガでは、こういうことが起こり得る」
「我々には改善の余地がある。良いサイクルと流れに乗っていたが、今後、再びそれを探そう。このチームは、勝利できない時、決して満足しない。ドローは悲しい結果だ。しかし我々は即座にリアクションする」
これはアンチェロッティ監督の言葉だ。
ベンゼマの不在時・不調時のオルタナティブ(代案)は依然として必要だ。
チャンピオンズリーグ、クラシコとビッグマッチが控えている。状況は待ったなしだ。欧州王者が、次のフェーズに向かう。