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史上最高勝率ペースの藤井聡太棋王、防衛か? 伊藤匠七段、1勝を返すか? 3月17日、棋王戦第4局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月17日。栃木県日光市・日光きぬ川スパホテル三日月において第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局▲伊藤匠七段(21歳)-△藤井聡太棋王(21歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。

 五番勝負は第1局で持将棋(引き分け)が成立。第2局、第3局は藤井棋王が勝ち、2勝0敗1持将棋としています。

 第4局で藤井棋王が勝てば防衛、2連覇。史上初の八冠制覇を達成した今年度を、八冠のまま終えることになります。

 先手の伊藤七段が勝ってカド番をしのげば、決着は第5局(3月26日、東京・東郷神社)以降へと持ち越されます。

ハイアベレージ同士、直接対決の星には片寄り

 両者はこれまで10局戦い、対戦成績は藤井9勝1持将棋です。

 トップクラス同士の対戦としては、かなり星が片寄っている例ともいえます。

 伊藤七段が棋士になって以来の通算勝率は0.758(138勝44敗1持将棋)。これは100局以上を指している現役棋士の中では、2位のハイアベレージです。

 その伊藤七段が唯一、なかなか勝てない相手が藤井棋王。通算勝率は現代将棋史上で断然1位の0.838(363勝70敗1持将棋)です。

藤井棋王、史上最高勝率の可能性

 藤井棋王の今年度成績は45勝7敗1持将棋(勝率0.865)です。

 勝率0.865は中原誠五段(現16世名人)が1967年度に記録した史上最高勝率0.855(47勝8敗)を上回るペースです。

 3月17日の午前中にはNHK杯決勝、佐々木勇気八段戦が放映されます。

 日曜日、テレビではNHK杯、ネットでは棋王戦を観戦という将棋ファンの方も多いことでしょう。

 藤井棋王はNHK杯決勝で勝って優勝。さらに夕方から夜にかけて決着がつく棋王戦第4局でも勝って防衛を果たせば、勝率0.870(47勝7敗1持将棋)で史上最高勝率記録を更新します。

 逆に藤井棋王はNHK杯決勝で敗れた場合には、その時点で新記録、およびタイ記録の可能性もなくなります。

 順位戦でC級2組からC級1組への昇級を決めた藤本渚新五段は、すでに最高勝率記録を更新する可能性はなくなっていますが、藤井棋王の成績次第では、逆転で勝率1位になる可能性が残されています。史上空前のハイレベルな勝率1位争いといえるでしょう。

タイトル戦の連覇、連勝記録

 勝つたびになんらかの記録が更新されていく藤井棋王。全タイトル戦を通じての番勝負連覇記録は現在、史上最高の20連覇中です。

 もし棋王を防衛すると、21連覇へと伸びます。

 またタイトル戦での一局単位の連勝記録は現在13連勝中。これは大山康晴15世名人が無敵時代に達成した17連勝に次ぐ、2位タイ記録です。

 もし第4局で勝つと歴代単独2位の14連勝となります。

充実の伊藤七段

 伊藤七段の今年度成績は49勝16敗1持将棋(勝率0.754)です。

 現時点でのランキングでは、対局数(66局)、勝数(49勝)の両部門で1位。連勝(14連勝)では2位。勝率では4位。充実の成績といえるでしょう。

 順位戦ではC級1組からB級2組への昇級を果たしました。

 叡王戦では挑戦者決定戦まで勝ち上がっています。

 3月19日の結果次第では、年度が明けてからまた、藤井-伊藤の五番勝負が見られます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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