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サンウルブズ唯一の海外ツアーフル参加。浅原拓真の地球探訪。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は初年度5月のシンガポール遠征でのシーン。ストーマーズと17―17でドロー。(写真:Haruhiko Otsuka/アフロ)

 国際リーグのスーパーラグビーへ参戦3季目のサンウルブズは、目下、南アフリカ遠征中だ。帯同メンバーの1人である浅原拓真は、これまでのサンウルブズの海外ツアーすべてに参加した唯一の選手である。いわばツアーマスターだ。

 北九州での開幕前合宿をしていた2月5日、この浅原が単独取材に応じている。3月21日に発売(書店では3月24日から)される『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』のためのインタビューで、内容は過去の遠征の思い出や辛苦についてだ。

 ディズニーの人気映画「トイ・ストーリー」の主要キャラクター、「バズ・ライトイヤー」に似ているから愛称は「バズ」。身長179センチ、体重113キロと国際舞台にあっては小柄な右プロップだが、低いスクラムの姿勢には定評がある。苦境を楽しもうとする気質も際立っていて、取材時もアルゼンチンでの蚊の大量発生や長距離移動について、ユーモアを交えて素直に振り返っていた。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――サンウルブズ、1年目と2年目の違いは。

「1年目は、皆、本当に(勝手が)わからない。ハマー(マーク・ハメット初代ヘッドコーチ)がよく言っていたんですけど、『お風呂に入る時、足元を確認しながら入るのと同じ状態だ』と。確かにそんな感じだなと自分でも思っていて。2年目は筋トレ、食事なども色々なものが管理してもらい始めたという感じですかね。ジョンジー(サイモン・ジョーンズ現S&Cコーチ)が入ってきたり、(当初は各自に任されていた)朝食が出る日があったり」

――それにしても、浅原選手は過去2年であった海外遠征はすべて帯同しています。推定総移動時間は250時間(トランジットを含む)!

「自分は全部、ついていきましたね。皆で楽しくやろうという意識が強く、楽しかったんですけど、移動距離が…。去年、チームのミーティングで、全チームの移動距離を見比べることがあって。サンウルブズは一番少ないチームの3倍くらいでした」

――改めて伺いたいのは、2年目の春にあったニュージーランド・アルゼンチン遠征でのことです。

「楽しかったっす。試合後は皆でワイワイ飲んだりして。本当に色んな所へ行けて、戦う相手はめちゃくちゃタフ。(序盤は)練習の強度も高かったけど、ニュージーランドでやれることがなかなかなかったですし」

――「練習の強度も高かった」のは、クルセイダーズに3―50で敗れた4月14日の第8節の前ですね。長期ツアーに向けた体力づくりの意図があったのでしょうか。ちなみに、その時の宿泊施設が特殊な場所だったようですね。

「湖のほとりで、すごく広いコテージでした。ただ、僕らが一番欲しかったwi-fiが本当に弱くて…」

――それでは、コーチやスタッフは大変そうですね。

「そうですね。連絡、できないですからね。でも、楽しかったですよ」

――アルゼンチンでは。

「グラウンド異常気象で蚊が大量発生していて、やばかったです! 当時の通訳の方は女性(大機幸恵)だったんですけど、その時の蚊は女性がかかったらややこしい病気を持っているらしく、めちゃくちゃケアしていました。僕らのところにも20匹くらいワーッと来るから、練習どころじゃない。何か、(太ももやひざなどの)裏っ側を刺してくるんですよ。気持ち悪かったぁ。黒いものを着てケアするようになって。…でも、アルゼンチンも何だかんだで楽しかったです。めちゃくちゃ怖かったですし、帰りもどんだけ飛行機に乗るの? みたいな感じだったんですが」

――帰国までに要した時間は24時間超、と言われています。

「リオデジャネイロで飛行機に乗ったままで2~3時間、トランジットがあって。そこから直で(日本まで)。日本に帰れると思うから『早く着け』と思うじゃないですか。だから、遠かったなぁ…。ただ、エミレーツエアラインのビジネスクラスに乗せてもらっていたんですが、後ろの方にバーがあったんですよ」

――どんな状況でも何かいいところを見つけられるのですね。ちなみに、何度も行かれた南アフリカでの思い出は。

「南アフリカのヨハネスブルグで、モンテカジノという施設に泊まることがあって。そこにはショッピングモールが併設されているんですよ。そこでよく具智元、庭井祐輔、松島幸太朗とかとお茶していて。これは7月だったかな。海外では、お茶して、お茶して、お茶して…という感じです」

――6月のウィンドウマンス明けにあった南アフリカでのライオンズ戦は、7―94で大敗しています。

「ジェイミー・ジョセフ(日本代表ヘッドコーチ。今季からサンウルブズの指導も兼ねる)がよく言うんですが、『スーパーラグビーはマラソンだけど、テストマッチはスプリント』。テストマッチって、テンポが上がるんですよ。6月の遠征に行った選手は疲れが出るんです。なので、そこからスーパーラグビーのチームに戻る…それがきつかったですね」

――タフなツアーに出かけている選手にとっては、国内滞在組が国内でのホームゲームに出場することへのジレンマも抱えてもおかしくありませんが。

「遠征に行っている方がきついに決まっています。そこで帰ってきたらメンバーが代わって…。でも、それは、しょうがないですよね。人が入れ替わるのはわかっていたし、皆(国内にいる選手)も仲間ですし。大丈夫でした」

 今季の浅原は当初スコッド外も、1月下旬、追加招集に応じる形で「4週間契約」を締結。その期間が過ぎたいまも、他選手の事情を受けて滞在期間を延長させている。今年の9月に31歳となる「バズ」は、おおらかさと闘志としぶとさで世界に爪痕を残す。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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