村上雅則からダルビッシュ有へ!日本人投手40人が繋いできたMLB通算1000勝までの系譜
【ダルビッシュ投手が日米通算3000奪三振を達成】
ダルビッシュ有投手が現地時間の9月2日にドジャース戦に登板し、MLB屈指の強豪打線を相手に7回を2安打無失点の好投を演じ、チームを勝利に導くとともに自身も今シーズン12勝目を飾った。
またこの日の試合で9奪三振を記録し、登板の前に残り6個まで迫っていた日米通算3000奪三振を達成することに成功。野茂英雄投手以来史上2人目の金字塔を打ち立てた。
この記録については、パドレス広報がメディアに配布するゲーム・ノート(試合用資料集)に明記していたこともあり、達成と同時にSNSで拡散されていったので、タイムリーで記録達成を知った方も多かったのではないだろうか。自分もその1人だ。
【さらに日本人投手にとって大きな節目も達成】
ところがこの日のダルビッシュ投手は日米通算3000奪三振に止まらず、とんでもない記録を達成していた。
個人的にはダルビッシュ投手が登板後にツイートするまでまったく気づいていなかったのだが、これまでMLBに挑戦してきた日本人投手たちが繋いできた大きな節目といえるものだ。
ダルビッシュ投手本人が説明しているように、この日彼が挙げた今シーズン12勝目は、日本人投手によるMLB通算1000勝目でもあったのだ。
この事実を知り、20年以上にわたりMLBの舞台で数多くの日本人選手を取材してきた身として感慨も深く、改めて1000勝に携わった全日本人投手を確認しその系譜を辿ってみた。
【記念すべき初勝利は1964年の村上雅則投手】
まずMLBファンなら常識だと思うが、記念すべき日本人初勝利を挙げたのは誰なのかという点だ。
ただ大谷翔平選手の活躍でMLBに関心を持つようになった昨今の若者ともなると、現在の日本人選手がMLBに挑戦する道をこじ開けた野茂英雄投手がパイオニアとして認知されているだけで、彼が日本人最初の勝利を挙げた人物だと勘違いされている方もいるのではないだろうか。
実は野茂投手が海を渡った1995年からさらに遡ること1964年のこと、当時南海(現ソフトバンク)に所属していた村上雅則投手が、最初の勝利をもたらしている。その始まりは、彼がチームから他2選手とともにジャイアンツに野球留学するように指示を受けたことだった。
渡米後の彼らの待遇は当然のごとくマイナー選手扱いで、キャンプ終了後1Aに配属されシーズンを迎えることになった。その後村上投手は左の中継ぎ投手として唯一頭角を現し始め、9月1日のロースター枠拡大に伴いメジャー昇格を果たすことになった。
そして昇格直後の9月1日にメジャー初登板を果たすと、自身6度目の登板となる同22日のコルト.45s(現アストロズ)戦でまず初セーブを記録している。
さらに7度目の登板となった同29日のコルト.45sとの再戦で、同点で迎えた9回から2番手でマウンドに上がり、3回を1安打無失点3奪三振の好投を演じ、チームの延長サヨナラ勝ちに貢献。これが記念すべき日本人初勝利となった。
ちなみに村上投手は、ジャイアンツの要望を受け翌年もチームに残留し、結局通算5勝を記録した後1966年に南海に復帰している。
【30シーズンにわたり計40人の投手が通算1000勝に携わる】
そして野茂投手が野球留学というかたちではなく、本人の意志を貫きMLBに挑戦したのを機に、他の日本人選手たちにも門戸が開かれていき、野茂投手ただ1人だった1995年から現在に至るまで、毎シーズン欠かすことなく日本人投手がMLBのマウンドに立ち続けた。
こうして通算1000勝は、村上投手の2シーズンと野茂投手から始まり現在に至るまでの計30シーズンにわたり繋いできた金字塔だ。
これまでMLBの舞台で勝利を記録した日本人投手は、全部で40人存在している。勝利数順に全投手をまとめているので別表に目を通していただきたい。併せて投手たちの在籍シーズンも表記しているので参考にしてほしい(マイナー在籍時のシーズンは対象外)。
【これまでMLB挑戦を続けた全日本人選手に敬意】
残念ながらこの表には登場していないが、勝利こそ挙げることはできなかったもののMLBのマウンドに立った日本人投手が他にも存在している。
自分が確認した限りでは、桑田真澄投手、小宮山悟投手、野村貴仁投手、高橋健投手、福盛和夫投手、牧田和久投手、村田透投手──の7人だ。彼らもMLBで日本人の歴史を紡いできた大事な選手たちに他ならない。
最早MLBは日本人選手にとって遠い存在ではなくなっているものの、今でも取り巻く環境、文化は日本とは異なり、むしろ思うような活躍ができなかった選手の方が多かったように思う。
そうした先人たちの苦労を知りながらもMLBに挑戦し続けた選手たちがいたからこそ、通算1000勝まで辿り着いたのだ。
改めてMLBに挑戦してきた全日本人選手たちに敬意を表するとともに、これからもMLBの舞台で日本人選手の歴史を繋ぎ続けてほしいと願うばかりだ。