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女性カリスマ起業家が説く「働き過ぎず、より多くの成功を収める」10の法則

木村正人在英国際ジャーナリスト
英国の女性カリスマ起業家、シャー・ワズマンドさん

頑張りすぎて、疲れていませんか。忙しく働いているのに、成果はもう一つ上がらない。そんな経験はありませんか。朝から晩まで走り回っても空回りの連続。1日1本ブログをアップするのを目標にしている筆者も一生懸命書いた割には読まれないという日が少なくありません。

インターネットのテレビ電話会議サービスを使って筆者が主宰するメディア研究会「つぶやいたろうラボ」(旧つぶやいたろうジャーナリズム塾、現在7期生)でも「日本と同じように夜遅くまで働いたら、外国人の上司から『どうして仕事が時間内に終わらないの』と注意された」という悩みを打ち明けられることがあります。

筆者は毎朝起きたら、その日にやるリスト作ります。そして原稿の作成や写真の撮影、オンライン上での編集でストレスを感じたことをメモにします。こうしたら、もっと原稿が分かりやすくなる、写真がきれいに撮れる、スムーズに編集できるといった気づきを大切にしています。無駄なクリックを省略するにはどうしたら良いのか。

毎日のことなのでクリック1つの余分もバカにはできません。

シャー・ワズマンドさん(筆者撮影)
シャー・ワズマンドさん(筆者撮影)

日々、試行錯誤の連続ですが、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに英国の女性カリスマ起業家が講演に来ると聞いて早速、出かけてきました。起業家を支援するサイト「Smarta.com」を設立、『話すのをやめて行動しよう(Stop Talking, Start Doing)』でベストセラー作家になったシャー・ワズマンドさん(43)。今年、大英帝国勲章を受章しました。

「祖母と母親、息子の3人を連れてエリザベス女王に謁見しました。祖母の年代の人にとって女王に会うというのはE.T.に会うのと同じぐらいの感動です」とシャーさんは巧みな話術で会場を惹きつけます。

LSEの学生だった21歳のシャーさんは英国のボクサーで世界ミドル級王者クリス・ユーバンクにインタビューするチャンスを勝ち取ります。自信に満ちた態度を気に入ったユーバンクはシャーさんをアシスタントとしてスカウトします。

3年後、PR事務所を設立して独立。シャーさんは日本でも販売されているダイソン製掃除機の発売を手掛けます。ダイソンは吸塵力が低下しないようサイクロン式粉末分離器を使っていますが、当時は誰も知りませんでした。創業者のジェームズ・ダイソン氏(68)と5年間、キッチンテーブルを挟んでシャーさんはビジネスのノウハウを叩きこまれました。

1997~2000年のドットコム・バブルに乗って、旅行サイトのダイレクターを務め、そのサイトに最高2千万ポンド(約37億円)の価値がついたこともあります。10代のライフスタイル・サイトも成功を収め、衛星放送・通信会社スカイに数百万ポンドで売却します。

10代向けのソーシャルネットワーク・サイトのダイレクターに就任。このサイトは8億5千万ドル(約1024億円)で米大手インターネットサービス会社AOLに買収されます。シャーさんはストック・オプションで大金を手にします。

「多忙の女王」を自認していたシャーさんが自分の働き方とライフスタイルを見直したのが今年6月に出版した『働き過ぎず、より多くの成功を収めよう(DO LESS GET MORE)』です。1人息子のジェットくんが「どうしてママはいつも忙しくしているの」という一言がきっかけでした。

シャーさんが悟った10の法則とは――。

(1)要らないものを減らせば、あなたもクリエイティブになれます

身の回りに半年から8カ月の間、まったく使っていないものはありませんか。そうした不要品を片付けて、本当に自分が手に入れたいものを創造するためのスペースを作りましょう。新しいスタートを切るために身軽になりましょう。身の回りには愛用の品だけを置きましょう。

(2)スケジュールを減らして、何かをする喜びを大きくしましょう

スケジュールが詰まり過ぎていませんか。次から次へと予定に追われる日々を送っていませんか。家と職場の往復、運動に子供の宿題の手伝い。あなたより上手に安くできる人がいたらアウトソースしましょう。絶対に家を掃除してくれる人を雇いましょう。それで時間を作ることができます。

帳簿を自分で監査してもご褒美はありません。誰かを雇いましょう。外注のコストと節約できる時間を天秤にかけてみましょう。次にあなたが本当にしたいことからスケジュールを作りましょう。私が一番最初に書き込むスケジュールは息子や親友とのホリデーです。

(3)プロジェクトの数を減らして、もっと前に進みましょう

私が速く働き、短期間に多くのことを成し遂げることができるのは、注意深く選んだプロジェクトにエネルギーを集中させる方法を身につけたからです。2~3のプロジェクトにこだわり、注意を集中させましょう。リストに書き込むのは3つまでです。2週間以上たってもできないものは捨ててしまいましょう。

(4)人間関係を絞って、より実りある関係を築きましょう

ビジネスにおける「80/20の原則」を聞いたことがありますか。20%の友達があなたの喜びの80%を生み出しています。みんなとコーヒーや昼食をとったり、スカイプで話したり。誰と過ごしたときが、一番有意義だったか考えてみましょう。誰が自分にとって大切か優先順位をつけましょう。

(5)選択肢を絞り込めば、もっと考えて選ぶことができます

選択肢が多くなれば良いかというと、実際にはそうではありません。選択肢が多いときは上手く行かない傾向があります。選択肢を絞りこみなさい。

(6)量より質にこだわれば、もっと幸せになります

新しいものを手に入れると幸せになると考えて、常に新しいものを買うワナにハマるのは簡単なことです。チョコレートをもう一つ、新しい雑誌をもう1冊とか。気に入った服なら、いつまでも着るはずです。もしあなたが本当に愛する質の高いものを持つことに焦点を当てるなら、もっと幸せを感じることができるでしょう。

(7)ストレスをためないことが健康につながります

タバコは健康に悪いと知りながら、ついついみんな口にしてしまいます。NHS(国営医療制度)によれば、英国では仕事に関連した病気の40%はストレスが原因です。ストレスを減らす方法を見つけましょう。あなたの残りの人生を車輪の中を走り続けるハムスターにしないように。

(8)「はい」という回数を減らしましょう

どれだけ多くの回数、義務感から「はい」とうなずいているか考えてみましょう。もしあなたの周りに境界を設けなかったら、周りの人があなたからすべての時間を奪ってしまうでしょう。あなたが何かに貢献しないからと言って世界が終わるわけではありません。

(9) 期待値を下げれば、より多くの自由が手に入ります

誰か他の人の期待に縛られるワナに陥るのは容易なことです。そうすれば、がんじがらめになってしまいます。時間とお金は本当に自分が手に入れたいもののために使いましょう。

(10)働く時間を短くすれば、仕事の質が上がります

自分が思っていたより実は少ない時間でやり遂げられます。私が請け負います。週5日、1日8時間労働は工場の組み立てラインで働く人たちの作業効率を上げるためにデザインされたものです。あなたが好きなことをするために、休んで再充電しましょう。

シャーさんの話はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した「パレートの法則」に基いています。法則というより経験則に近く、たとえば「仕事の成果の80%は費やした時間の20%の間に生み出されている」と言われたりします。つまり100%やろうとはせずに、20%に集中しようと言うことです。

「あなたはすべてに取り組むことができます。しかし同時に全部をしようとしてはいけません」。20%の強さと80%の弱さがあるなら、20%の強さに集中しよう。今は書くことに集中しているシャーさんはこう締めくくりました。「ベストセラーを書くことと、ベストセラーを作ることは違います。それを理解しないとベストセラー作家にはなれません」

もっとやろうとせずに、選んだ20%にエネルギーを傾けよう。理屈は簡単でしたが、本当に勉強になりました。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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