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人気脚本家・旺季志ずかが語るコロナ禍でSNSを遠ざけた理由

中西正男芸能記者
アイドルグループ「吉本坂46」のメンバーとしても活動する脚本家の旺季志ずかさん

 「カラマーゾフの兄弟」「特命係長只野仁」「ストロベリーナイト」など多数のテレビドラマを手がけてきた脚本家・作家の旺季志ずかさん。2018年からは「吉本坂46」のメンバーとしても活動し、同グループの配信公演「抱腹絶倒コメディ『夢かリアルか!?』」(2月26日、3月5日)もプロデュースしています。あらゆる形でエンターテインメントに深く関わる旺季さんですが、これまで情報発信の場として力を入れてきたSNSを新型コロナ禍を機に遠ざけたと言います。その理由とは。

ブログを遠ざける

 2018年から「吉本坂46」のメンバーとしても活動するようになりました。

 アイドルモードの自分を出すことで、脚本家とはまた違う顔を認識することにもなり、まさに発見の日々です。人間としてのキャパシティーが広がったと感じています。

 私が「吉本坂46」に入れたきっかけはブログだと思っています。ありがたいことに読者の方がたくさんいてくださって、その方々が応援してくださったからメンバーになれた。

 ただ、コロナ禍で、その大切なブログを遠ざけてみようと思ったんです。何か告知ごととかがあれば、投稿はしてるんですけど、その際も私が原稿をスタッフさんに渡して代理投稿してもらってるんです。

 なぜ、そうするようにしたのか。

 コロナ禍で大きく時代が変わる中で、競争意識をかき立てられることが、今後、自分を苦しめるという感覚が強くなってきたんです。そして、競争意識を最もかき立てられるのがSNSだと思ったんです。

 人が何をしているのか。それが出ているのがSNS。そこをシャットダウンすることで、人がどうこうではなく「自分は何をしたいのか」を突き詰める。自分との対話の時間を増やそうと思ったんです。

 観念的なことになりますけど、外ではなく、自分の中にもっと深く潜ろうという気持ちがすごく強く出てきたんです。

 実は2年ほど前から「SNSを休んで自分に戻るべき」というようなシグナルは来ていたんです。合図は来ていたけど、SNSを手放すのは怖い。やめたらファンの人がいなくなるんじゃないか。大きなものを失うんじゃないか。そういう思いがずっとあったんです。

 今もまだ怖いですし、不安はあります。ただ、SNS疲れということだったんでしょうね。実際に休んでみると、得ているものが大きいことも感じています。まだ道半ばですけど「人は人」。そこの感覚は確立されつつあると思います。

 あと、一番顕著なのは時間です。よく考えたら、相当時間を取られていたなと。私は通勤に片道1時間半くらいかけているんですけど、これまでは電車の中でずっとブログを書いたりしていたんです。その時間に本を読んだり、別のことができる。細かいことかもしれませんけど、自分にとってはそれがすごく楽しいんです。心が穏やかになりました。

 SNSって、生活の中の“キラキラした部分”だけを書くんですよね。

 朝から夫婦げんかしてても「今日は夫とディナー」みたいにワイングラスの写真をアップしていたら、載っているのはほんの一部のキラキラなのに、その人の生活全体がキラキラしたものに見える。

 そんな仕組みは、十分に分かっているんです。キラキラが全てじゃないし、仕事がうまくいっていたり、良い作品ができたことなんかが綴られていても、当然、その裏には生みの苦しみがイヤというほどあるんです。

 それが分かっていても、キラキラばかりを摂取していると、どこかで焦って、どこかで不安になるんですよね。「私も、もっとやらないと」という風に。だから、一回、完全にその摂取を辞めてみようと思ったんです。

自分がやりたいこと

 あと、時間を作ることへの思いもコロナ禍であったんです。

 というのは、少し前から舞台でのお芝居に比重を置きたいとも思っていたんですけど、コロナ禍で劇場も閉まってしまった。

 やりたいと思っている対象が、いつまでもあるわけじゃない。「いつかやろう」ではダメ。それを痛感したんです。

 やりたいことを今やっておく。そのためには時間を作らないといけない。そんな思いもあって、SNSを遠ざけた部分もあるんです。

 コロナというものは、本当に大変なことではあるんですけど、それを機に、否応なく変わらないといけない部分もある。その流れを使って、本当に自分がやりたいことを模索できている感覚はありますね。

 あと、コロナ禍で思いっきり運動不足になったので、ウォーキングも始めました。

 もちろん、運動になるという意味合いもあるんですけど、歩いている時って、結構アイデアが出てくるんです。

 この前も、以前からやりたいと思っていたお仕事があって、そのことを考えながら歩いていたら、1時間の散歩で10分くらいのお芝居は完成していました。

 これも、自分の中で「1時間の散歩=10分の芝居」というレートというか、方程式というか、実績もできましたので、健康のためだけでなく、何か新しいものを作る時には、積極的にウォーキングも活用していきたいと思っています(笑)。

(撮影・中西正男)

■旺季志ずか(おうき・しずか)

徳島県阿南市出身。立教大学卒業後、脚本家になる。「特命係長只野仁」「カラマーゾフの兄弟」「ストロベリーナイト」「屋根裏の恋人」「女帝」「佐賀のがばいばぁちゃん」など多数のテレビ脚本を手がける。また小説「臆病な僕でも勇者になれた七つの教え」「モテ薬」や、古事記ミュージカル「天の河伝説」の作・演出も務める。2018年からはアイドルグループ「吉本坂46」のメンバーとして活動している。配信のみのプロデュース公演「抱腹絶倒コメディ『夢かリアルか!?』」(2月26日、3月5日)も開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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