天気の周期変化 日本列島を襲った黄砂のち強雨のち再び黄砂
黄砂の観測体制
黄砂の地上での観測は、観測者による有人観測(目視観測)です。
測候所の無人化が進んだ昨今では、有人の気象官署数が約3分の1の59カ所に減っており、地方気象台等の観測の自動化も進んでいますので、黄砂などの目視観測は全国の11カ所しかありません。
このため、黄砂観測の平年値は、平成22年(2010年)までの旧平年値と、令和2年(2020年)からの新平年値では観測回数が大きく違っています(図1)。
旧平年値も新平年値も4月が一番多いのですが、旧平年値は9.0回、新平年値は6.2回と約68パーセントに減っています。
中国内陸部では砂漠化が進み、黄砂が大量に巻き上げやすくなっていますので、黄砂日数が増えてもおかしくないのですが、国内で黄砂を観測する地点数が大きく減ったために観測回数としては減っているのです。
ただ、月別には4月が一番発生が多く、次いで3月であることや、春だけでなく晩秋にも黄砂が飛来することがあるなど、定量的には同じ傾向を示しています。
とはいえ、気象衛星ひまわりは、静止気象衛星としては世界で初めてカラー画像でも観測を行っていますので、黄砂や火山の噴火などの観測も可能となっています。
平成26年に打ち上げられたひまわり8号以降は、現在使われているひまわり9号も含めて、可視光の3つの色(青、緑、赤)で観測して合成し、トゥルーカラー画像と呼ばれる、実際の見た目での観測が加わっているのです。
テレビなどで、「ひまわりでは黄砂がはっきり映っている」という報道がなされていますが、昔から黄砂がはっきり映っていたわけではありません。
令和5年(2023年)の黄砂
令和5年(2023年)4月12日~14日にかけて、日本列島は移動性高気圧におおわれ、上空は下降流になっていました。
このため、中国内陸部で巻き上げられ、偏西風にのって日本付近に飛来していた黄砂が地表付近に降下しました(タイトル画像参照)。
今回の黄砂では、那覇を除く10地点(札幌、仙台、新潟、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島)で黄砂を観測しています(表)。
黄砂によって視程が10キロ未満になった時間帯が5時間を超えていたのは、高松と札幌、新潟、名古屋で、ほとんどの時間帯の視程は10キロ以上でした。
中でも、黄砂の飛来が少ない札幌で、視程が10キロ未満だったのがのべ10時間10分もあり、最小視程は5キロというのが目立ちました。
なお、大規模な黄砂の場合などは、各気象台の判断で目視観測を実施し、地方情報や府県情報に付して発表することになっており、今回も地方気象台等で黄砂を観測しています。ただ、自動作成される観測原簿では煙霧(ちりや煙、黄砂、降灰などが大気中に浮かび大気が濁って視程が濁った状態)と記されています。
高気圧と低気圧が交互に通過
日本付近は高気圧と低気圧が交互に通過するという春に多い天気となっており、高気圧が日本のはるか東海上に去った4月15日には、低気圧が本州南岸を通過する見込みです(図2)。
低気圧や前線が通過する影響で全国的に雨となり、風も強まる見込みです。
太平洋側では50ミリ以上の雨となり、短時間で強く降るおそれがありますので、最新の気象情報に注意してください(図3)。
また、雨によって気温はあがらず寒い一日になる見込みです。
東京の15日の最低気温の予想は13度ですが、これは朝の最低気温の話です。日中はもっと気温が下がり、10度近くになりますので暖かさに慣れた体には非常に寒く感じると思います(図4)。
南岸低気圧の通過後
南岸低気圧の通過後は、これまでと違い、高気圧がすんなりと出てこない見込みです(図5)。
三陸沖に低気圧が進んだ後、その西側は気圧が低くなっており、小さな低気圧がいくつもできる予想となっており、上空の黄砂を地表付近に運ぶ高気圧の張り出しは東ではなく、南東です。
このため、次の黄砂は、4月12日~14日に黄砂を観測しなかった那覇や西日本が中心となる見込みです(図6)。
冬から春を通り越して初夏へ
今年の冬も、最高気温が氷点下という真冬日は3月の最初で無くなり、最低気温が氷点下という冬日もかなり少なくなってきました(図7)。
春本番というところでしょうが、気象庁の一か月予報によると、今後も暖かい日が多い見込みで、春を通り越して初夏になりそうです。
タイトル画像、図3、図6の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図2、図5、表の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図7の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。