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この夏にもエルニーニョ発生か 台風に影響も

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
【海面水温の基準値との差予測図】2023年5月~7月(豪気象局ホームページより)

 気象庁は10日、この夏にもエルニーニョ現象(以下、エルニーニョと記載)が発生する可能性が高くなったと発表しました。発生確率は60%で、前回予想よりも10ポイント高くなっています。

 不確実性が高いこの時期としては異例の高確率で、この夏の天候や台風の発生に注目が集まっています。

南米沿岸で水温が急上昇

 3月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値より0.4度高くなり、2020年4月以来、約3年ぶりにプラスとなりました。ラニーニャ現象は今年2月に終息し、現在は平常の状態ですが、南米沿岸では水温が急上昇しています。

南米ペルー沖の海面水温の比較:上図は2022年12月、下図は2023年3月(米海洋大気庁気候予測センターCPC/NOAAより、筆者加工)
南米ペルー沖の海面水温の比較:上図は2022年12月、下図は2023年3月(米海洋大気庁気候予測センターCPC/NOAAより、筆者加工)

 エルニーニョとは南米ペルー沖の海面水温が通常よりも高くなる現象で、世界規模で異常気象を引き起こすことが知られています。

 仮にエルニーニョが発生したら、2019年春以来4年ぶりとなり、夏に発生した場合は日本では冷夏や天候不順のおそれが高くなります。

梅雨前線活発、大型台風も

 最近では2015年の夏があります。この年は6月に梅雨前線の活動が活発になり、鹿児島市では一か月で1,300ミリもの雨が降りました。1,300ミリというと東京の年間雨量に匹敵する雨量で、極めて珍しい。今もこの記録は破られていません。

2015年7月16日、上陸直前の台風11号(ウェザーマップ作画)
2015年7月16日、上陸直前の台風11号(ウェザーマップ作画)

 また、エルニーニョは太平洋赤道域の海面水温を大きく変えるため、台風の活動にも影響があります。台風の発生位置が南東にずれ、寿命も長くなる特徴があり、台風が大型化しやすいと思います。

 ラニーニャが発生していたこの3年で、強い勢力以上で上陸した台風はわずか1つです。そういう意味でも、今年はこれまでとは違った台風シーズンとなる可能性があるでしょう。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.367)、2023年4月10日

気象庁ホームページ:エルニーニョ/ラニーニャ現象

米海洋大気庁(NOAA):April 2023 ENSO update: El Niño Watch、APRIL 13, 2023

豪気象局(BoM):El Niño WATCH continues、11 April 2023

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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