10月26日は「柿の日」もっちりした市田柿の加工時に750トン発生する廃棄物を活かしたコスメティクス
毎年10月26日は「柿の日」。俳人の正岡子規が、明治28年(1895年)10月26日から旅行した奈良で、「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」を詠んだそうだ。そこから全国果樹研究連合会カキ部会が柿の販売促進を目的に定めたという。
2018年10月20日、長野県飯田市が主催した「くらしの学習交流 講演会」で、食品ロスをテーマに講演させて頂いた。
講演の前日に、株式会社マツザワを訪問したところ、この「柿」から発生する廃棄物を活かした商品がある、と教えて頂いた。
それが、「市田柿(いちだがき)コスメ」だ。
「市田柿(いちだがき)」とは、長野県下伊那郡高森町の市田地域で栽培されていたことからその名前がついた、渋柿の品種名だ。2006年に地域ブランドに登録された、南信州を代表する特産品である。近隣の天竜川から発生する霧により、市田柿特有の「もっちり」「ねっとり」した食感を生み出すのだという(JAみなみ信州のリーフレット「うまいん谷(だに)」より)。
この市田柿は年間1,250トン生産されるが、その量を生産するためには、750トンもの柿の皮が発生し、廃棄されるという(JAみなみ信州による)。
成分としては、タンニンやポリフェノールが含まれ、皮にはメラニン生成抑制効果があるそうだ(株式会社マツザワによる)。
この成分を使って生まれたのが、市田柿コスメだ。
フェイシャルマスク、スキンミスト、スキンクリームの3種類。
筆者も使ってみた。特にスキンミストは香りがよく、顔にかけると爽快感が得られる。
株式会社マツザワは、2015年11月12日から12月17日までの1ヶ月間、フェイシャルマスクに使っている美容液で、皮膚の水分量の変化の臨床試験を実施している。塗布していない箇所の1ヶ月後の水分量は、使用前と比べて87%と低下した。一方、塗布した箇所は、1ヶ月後に204.3%と増加した。
本来、捨てるのが当たり前だったものに着目し、それを活かしてビジネスチャンスに繋げる。株式会社マツザワは、昭和34年の創業以来、そのような精神で経営を続けてきた。
全国には、農産物の廃棄で悩んでいる農家も多いと聞いている。この市田柿コスメの事例が参考になることを願っている。