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「コロナで入院中の飼い主から連絡がない」ペットシッターさんが猫の行く末を憂慮...思わぬ展開へ

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

コロナ感染者が増えたので病床がひっ迫し自宅療養になるケースが多くなっています。変異株の感染力が強いため、だれが感染してもおかしくない状態になっていますね。

そんななか、熊本市で一人暮らしの基礎疾患があったコロナ感染者が自宅で亡くなったとのことです。保健所が入院をすすめましたが「猫を飼っていて預け先がない」ことなどを理由に拒否したといいます。

猫は家族の一員なので、猫を置いて入院できなかったことは、わかりますね。現実問題、コロナ感染者の猫の世話をすることは難しく、その猫を預かってくれるところも少ないです。

いまの状態だと猫や犬を飼っている人は、もし自分がコロナで入院が必要になったときの受け入れ先を考えておく必要があります。今日は、コロナで入院した飼い主と連絡が取れなくなった猫のお話を紹介します。

もう、1カ月以上、飼い主から連絡がないの

写真:アフロ

筆者の愛犬は、今年の春19歳になる前に亡くなりました。最期の半年は、鳴いたりウロウロしたりするので、24時間目を離すことができない状態でした。それで数時間留守をするときに、ペットシッターの鈴木さん(仮名)に来てもらっていました。

その鈴木さんから「コロナで入院中のSさんの猫・ミオちゃん(仮名)のシッターに行っています。Sさんは一人暮らしで、1カ月以上連絡が取れないのです。どうしたものかと悩んでいます。それで、Sさんの安否がわからず、警察に出向き相談しましたし、保健所にも問い合わせしましたが、個人情報だからといって教えてくれませんでした。普段は、こんなことはしないのですが、引き取ってもいいかな、と考えています。ミオちゃんがかわいそうで。うちにも猫がいるので、連れて帰るにしてもミオちゃんを一度、診察してもらえますか」とメールが届きました。

いろいろなペットシッターさんがいますが、鈴木さんは動物が好きなので、この仕事をしているという感じの人でした。

筆者の愛犬も丁寧にお世話をしてくださり、オムツの交換も快く引き受けてくださいました。鈴木さんは、そんな人なので、Sさんと連絡が取れないからといって、ミオちゃんの世話を放置するわけにはいかなかったのです。

普段通りミオちゃんのシッターをして、時間を見つけて診察に連れてきました。

待合室にやってきたミオちゃんは、初めてきた動物病院なので、鳴いて興奮気味でした。連れてくる前に鈴木さんからアレルギーを持っていることを伝えられていました。主に顔が痒いので、24時間エリザベスカラーをつけっぱなしでした。ミオちゃんの血液検査をしました。結果は以下の通りです。

□腎臓の値は正常値

□肝臓の値は正常値

□FIV(いわゆる猫エイズ)は陰性

□FeLV(猫白血球ウイルス感染症)は陰性

でした。

なにかのアレルギーは持っていましたが、それは経済的なこともあり、後日検査することにしました。アレルギーの薬を持って、ミオちゃんは自分の家に帰りました。

鈴木さんは、自分の家でも猫を飼っているので、これで他の猫への感染症の心配もなくなったので、片付けてミオちゃんのいる場所を作っていました。

集中治療室から出られました

ミオちゃんを連れて帰る準備を鈴木さんがしていました。Sさんと連絡が途絶えて1カ月が過ぎた頃「Sさんは集中治療室にいたようです。それで連絡ができなったと。やっと携帯に触れる状態になり連絡がきました」と鈴木さんから筆者の元にメールが届きました。

Sさんはミオちゃんのことを気にかけていたらしく、携帯に触れるようになってすぐに鈴木さんに連絡をしたそうです。それでも、すぐに退院できるわけではないので、もうしばらく鈴木さんが、ミオちゃんの世話をしないといけなかったのです。

しかし、Sさんの安否がわからないときは、鈴木さんも私も気を揉んでいました。

鈴木さんは、ミオちゃんの薬を取りに来られていました。

「本当によかったです。一時はどうなることか、と思いました」と笑顔でいわれました。

飼い主の安否確認ができなくても、猫の世話をしないと命にかかわります。今回は、一人暮らしのSさんが、ちょこちょこペットシッターである鈴木さんに、ミオちゃんの世話を頼んでいたからよかったですが、そうじゃなかったらと考えるととても不安になりますね。

Sさんがミオちゃんを連れて来院

「あのときは、お世話になりました」と見慣れない男性が笑顔で動物病院に現れました。筆者は、ケージに入ったミオちゃんを見て、Sさんだということを理解しました。

Sさんは、顔色もよく動きも機敏でした。もちろん、Sさんは全快ではないかもしれません。

しかし、ミオちゃんを連れてこようと思うほど元気にはなられていました。ミオちゃんの顔の赤みは薬と鈴木さんのお世話で、ずいぶん引いていました。

「よかったねミオちゃん」といいながら、診察を終えました。

ミオちゃんは、Sさんが入院するときは、鈴木さんに面倒を見てもらっていました。それに加えて、鈴木さんの善意で頼まれていない期間もしっかり面倒を見てもらっていたので、命をつなぐことができたのです。

写真:アフロ

猫や犬を飼うということは、もし自分が入院したらどうするか、ということも考えることが必要な時代になりました。ペットシッターは、やはり料金が発生しますが、なにかあったときに、面倒を頼んだペットだと機転をきかせて動いてくれる人もいます。

ペットシッターでなくても、愛猫や愛犬を託すことができる人を普段から見つけておいて、有事の際は面倒を見てもらうという対策は必要ですね。

猫や犬を飼うことは、飼い主になにかあったときも守ってあげられることを普段から考えておくことも大切な時代になりました。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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