キヤノンEOS R50はこれからの時代の初心者定番一眼カメラになる
キヤノンから新しくミラーレス一眼カメラ「EOS R50」が発表。2023年3月下旬発売予定です。キヤノンの人気シリーズ EOS Kiss に相当するような内容の製品で注目を集めています。
ニュースリリース:ミラーレスカメラ“EOS R50”と“RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM”を発売|ニュースリリース|企業情報|キヤノンマーケティングジャパングループ
筆者はさっそく新製品が展示されているキヤノンフォトハウス大阪まで行って「タッチ&トライ」に参加。EOS R50 の試写をさせてもらいました。ショールームでのハンズオン体験や報道発表をもとに、EOS R50 の注目ポイントについて解説します。
初心者層に訴求する「手のひら本格ミラーレス」
EOS R50 は約2420万画素の APS-C サイズセンサーを搭載したレンズ交換式ミラーレス一眼カメラです。キヤノンの EOS R シリーズのカメラのなかでは最も小型で軽量、さらに低価格のエントリー向けの製品です。
カメラの重さはホワイトが約376g、ブラックが約375g(バッテリー、カード含む)。ボディ単体の価格が 111,100円、標準ズームレンズキットの価格が 126,500円です(いずれも税込でキヤノンオンラインショップの定価)。
キヤノンは2022年に EOS R7 や EOS R10 などの APS-C サイズのカメラを発売しましたが、EOS R50 はそれらの機種よりもさらに低価格帯のカメラです。これから本格的な一眼カメラを始めたい初心者層で、予算を抑えたいのであれば EOS R50 は最有力の機種と言えます。
参考までに、EOS R10 の価格がボディ単体で132,000円、RF-S18-45 IS STM レンズキットが148,500円。EOS Kiss M2の価格が126,500円(ダブルズームキット)で、一眼レフカメラの EOS Kiss X10 が104,500円(EF-S18-55mm レンズキット)となっています。
初心者向けの機種でありながら、最新のオートフォーカス機能(デュアルピクセルCMOS AF II)を搭載しているので、人や動物、乗り物などの被写体を自動で検出して適切にピントを合わせてくれます。これは EOS R や EOS RP などの上位機種を上回るAF性能です。連写性能は電子先幕で最高 約12 枚/秒、電子シャッターで最高 約15 枚/秒。
また写真だけでなく動画性能にも配慮。新たに搭載された「レビュー用動画モード」では、自撮りしながら商品を紹介する際に手前の商品にすばやくピントが切り替わります。カメラの扱いに不慣れな初心者でも直感的にカメラを扱えるように様々なサポート機能が充実しています。
筆者も実際に「レビュー用動画モード」を試してみたところ、高速でスムーズにピントが切り替わる様子を確認できました。動画画面から簡単に切り替えることができて、扱いやすいです。ふつうの標準設定のAFではどうしても人物の顔を優先してピントを合わせるので、状況に合わせて簡単にAFの挙動を切り替えられる仕組みは初心者に優しいと思います。
EOS M シリーズは販売継続だがいずれは…
今回の EOS R50 の発表はキヤノンの今後のカメラ製品の展開を予想するうえでとても重要な意味を持っています。EOS R50 登場は、「EOS Kiss」の名前や「EOS M シリーズ」の終息を予感させる発表となりました。
EOS R50 は EOS R シリーズのなかで最小・最軽量なボディですが、それだけにとどまらず EOS Kiss M / M2 などのカメラと比較してもさらに軽いカメラです。つまり「軽量なカメラがほしい」というニーズにおいて EOS R50 は EOS Mシリーズの最人気機種を凌駕してしまっているわけです。
画像: キヤノン公式サイト より
価格は EOS R50 がやや高値ではあるものの本体価格がちょうど10万円ほどで初心者層にアピールする値段です。性能で見ると EOS R50 は EOS Kiss M2 などの旧世代のカメラよりAF性能や動画性能の面などで大きく向上していることもあって、この性能のカメラが10万円で買えるのであればお買い得といえるでしょう。レンズのバリエーションも次々と増えており、安価な望遠ズームレンズ「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」も EOS R50 にあわせて新発表となりました。
こうなってくると初心者層を中心に好評だった EOS M シリーズは独自のメリットがほとんどありません。これからEOS M シリーズのカメラを買う人がいるとすれば、EOS M シリーズの見た目が好きな人や、EOS M シリーズ専用レンズを使いたい人、あるいは中古市場なども含めて低価格のカメラを選ぶ人などに限定されることでしょう。
一方で EOS R シリーズはキヤノンが最も精力的に製品の開発や販促キャンペーンを進めています。EOS R シリーズのカメラやレンズを対象としたキャッシュバックキャンペーンも実施されているので、多くの人は EOS R50 などの EOS Rシリーズのカメラを選ぶはずです。
参考:キヤノン ENJOY CAMERA キャッシュバックキャンペーン ―POWER UP 応援祭―|キャンペーン概要
筆者は 2022年の EOS R7 や EOS R10の登場にともないキヤノン一眼レフカメラシリーズの存在感が小さくなったことを以前書きました(参考:もう一眼レフはいらないかも。キヤノン新発売のミラーレスEOS R7とEOS R10がちょうど良い理由(Aki)- Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラム )。そして今度は EOS R50 の発売により EOS Mシリーズの存在意義がいよいよあやしいものとなってきました。
名称の統一は EOS R シリーズへの集約の布石か
キヤノンは「EOS R50 は EOS Kiss M2 の後継機ではありません」と述べています。しかし、カメラのコンセプトや実際の性能を見れば、EOS R50 は実質的に「EOS Kiss R」あるいは「EOS Kiss M3」とも呼べるような立ち位置のカメラです。つまり初めて一眼カメラを使うような人でも手が出しやすい価格帯で、手軽に本格的な撮影を楽しめるカメラであるということです。まさに EOS Kiss の「簡単・きれい・コンパクト」というコンセプトを体現したカメラと言えるでしょう。
エントリーユーザー向けのカメラに 「Kiss」 と名付けなかったことについて、キヤノンは「時代の変遷とともに、カメラへのニーズのあり方も多様化し、従来の Kiss シリーズの枠を超えた商品価値をお客様に提供するため」と説明したようです。
参考:さらば「EOS Kiss」 登場から30年でブランド終息へ 後継モデル「R50」登場 - ITmedia NEWS
キヤノンは以前から EOS Kiss の名前をあくまで日本の市場限定で使用しており、海外のマーケットでは同じカメラにも異なる名称をつけて販売していました。例えば EOS Kiss M は海外では EOS M50 です。つまり海外のユーザーからすれば EOS M50(EOS Kiss M) や EOS M50 Mark II(EOS Kiss M2)の流れをくんだ機種が EOS R50 であると、より自然に受けとめられるわけです。
参考:【デジタル一眼レフカメラ・ミラーレスカメラ】海外機種一覧
EOS Kiss の名前から脱却し海外の名称と同じカメラに統一することで、従来のEOS Kiss シリーズが培ってきたコンセプトを重んじながらも「新しい時代のカメラ」を強調したい狙いがあるのかもしれません。新しい時代が始まり、これまでの時代を担ってきたキヤノンの一眼レフカメラや EOS M シリーズのカメラは着実に終息へと向かっているようです。これらのカメラも販売やサポートは続くものの、今後新しくキヤノンのカメラを買うユーザーは EOS R シリーズに集中することとなるでしょう。