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養育費を支払って貰うためにもっと子どもを父親に会わせてはどうか?

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

独立行政法人『労働政策研究・研修機構(JILPT)』のコラムに、「なぜ離婚した父親から養育費を取れないのか?」という男性に対してひどく一方的な記事が掲載されていました。

日本では、離婚後に父親が子どもの養育費を踏み倒し、それに泣き寝入りする母子世帯が非常に多い。厚生労働省が行った「全国母子世帯等調査2011」によると、6割の離婚母子世帯は、父親から養育費を一度も受け取ったことがない。また、離婚直後は養育費を受け取っていたものの、途中で支給が途絶えたケースも多く、実際に養育費を受け取っている離婚母子世帯は、全体の2割程度でしかない。母子世帯の相対的貧困率は50%を超えている中、養育費の確保は貧困解消の切り札となるのか。

出典:コラム:なぜ離別父親から養育費を取れないのか/独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

コラムは「執筆者個人の意見を表すものであり、当機構の見解を示すものではありません」とのことですが、読んだかぎり男性としてはとても不快な内容でした。

ただ、「不快です」と表明しても何の意味もありませんから、離婚母子家庭と離婚父子家庭においての養育費の支払いがどうなっているのか調べてみました。

すると、予想通り父子家庭の方が養育費を貰っていなかったのです。

厚生労働省が平成23年に調査した統計データによると、養育費と面会交流の状況は次のようになっています。

養育費の取り決めをしている

母子家庭:約38% 父子家庭:約18%

養育費を現在も受給している

母子家庭:約20% 父子家庭:約4%

面会交流の取り決めをしている

母子家庭:約23% 父子家庭:約16%

面会交流を現在も行っている

母子家庭:約28% 父子家庭:約37%

Microsoft PowerPoint - 0708 ひとり親家庭の支援について - shien.pdf(2013年7月8日)

もちろん、父子家庭の平均年収380万円に比べて母子家庭の方が平均年収223万円と低いのも一因としてあるでしょうが、「離別した親から養育費を取れない」ことを訴えるのであれば、父親だけが払ってないかのようなデータの出し方は卑怯だと思うわけです。

子どもとの交流が養育費支払いのカギに

また、コラムでは「日本も諸外国のように養育費の強制徴収が必要だ」とも書かれています。

諸外国とは異なり、日本では養育費を支払うべきかどうかの交渉は、司法や裁判を介さず、単に家族や個人間の問題として処理されることが多い。また、日本には養育費の強制徴収を行う行政機関も存在していない。(中略)そこで、行政がいわば「エージェント(代理人)」として間に入り、母子世帯のために養育費の強制徴収を行うという対策が必要となる。

出典:コラム:なぜ離別父親から養育費を取れないのか/独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

そこで、欧米主要国のなかでもとくに養育費の取り立てが厳しいとされるアメリカの養育費の徴収状況について調べたみたところ、面白い研究結果を見つけました。

子どもとの交流がない親ほど、養育費を支払っていないのです。

調査によると、共同監護や交流を行っている監護親の77%は養育費の全部か一部を得ているのに対し、共同監護を行っていない監護親の56%しか養育費を得ていないことが分かっている。

出典:アメリカの養育費制度についての一考察(※PDF)

給与の天引きなど養育費の強制徴収が行われているアメリカですら、子どもと会わない(会えない)親は養育費の支払いが渋くなります。ということは、逆に子どもと会わせることで養育費の支払いを引き出せるのではないでしょうか?

厚生労働省のデータでは、母子家庭の約28%しか子どもと父親を会わせていないとあります。離婚の理由によっては父親と会わせられないこともあるでしょうが、いくらなんでも残り72%すべてがそういう環境ではないはずです。

給与の天引きなど養育費制度の創設にはまだまだ時間がかかるでしょうが、親子の交流を持たせる共同監護は今の環境でも十分に可能です。

養育費の支払いをスムーズにするためにも、まずは子どもと会わせることで“別れた相手が養っている子ども”ではなく、“離れて暮らしている自分の子ども”と感じてもらうことから始めてみてはどうでしょうか。

親権も、子どもとの交流もなく、養育費だけ払えでは難しいでしょう。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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