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甲子園球場でのファーム交流試合・阪神-巨人戦は1勝1敗で終了《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
12日、江越選手の放った当たりは惜しくもファウルの判定でしたが、もしかしたら…?

ウエスタン・リーグとイースタン・リーグのチームが対戦する『ファーム交流試合』が始まって、ことしで11年目となりました。ウエスタンのチームにとって巨人との顔合わせは多く、阪神の場合も今季を入れて9シーズンあります。そのうちジャイアンツ球場での開催は初年度の2005年と昨年の2度、甲子園球場は2014年が最初で今季が2度目です。

ちなみに2014年は5月31日と6月1日で、1戦目は秋山投手が先発して、小宮山選手が甲子園では自身初となるホームランを放つなど6対2で勝利。2戦目は榎田投手が先発、陽川選手の2ランが出たものの2対2の引き分けで終わっています。これが甲子園初のファームT-G戦だったわけで、1日目は4478人というお客様!2009年以来の数字を記録し、2日目と合わせると7101人でした。

掛布監督と巨人・斎藤雅樹監督によるメンバー交換。ちょうど10歳違いなんですね。
掛布監督と巨人・斎藤雅樹監督によるメンバー交換。ちょうど10歳違いなんですね。
掛布監督がグラウンドに姿を現すたび、スタンドから「掛布さ~ん!」の声。
掛布監督がグラウンドに姿を現すたび、スタンドから「掛布さ~ん!」の声。

でも、ことしはゴールデンウイークの5月3日~5日のウエスタン・広島戦で連日の1万人超え(3日間で計33436人)だったのは記憶に新しいところです。今回はT-G戦ということもあって、掛布監督の背番号にちなみ2日間で“31000人”という目標だったみたいですけど、11日が6841人、12日は5008人という結果。とはいえ、昨年までの甲子園開催ゲームを思えば、驚くほど大勢の方が来てくださっています!

掛布監督がお目当ての方も多数いらっしゃいましたが、球場で若い選手を観てファンになっていただけたら、それが監督にとっては一番嬉しいこと。きのう12日は試合開始直後から雨が降り続いたにもかかわらず、ほとんどの方が最後までご覧になっていて、本当にありがたいですね。次の甲子園開催は今月24日からの中日3連戦となっています。ぜひお出かけください。

ミス連発で落とした試合

さて11日の1戦目は、巨人の先発・マイコラス投手からペレス選手と上本選手がホームランを放つなど6点を取って、投げては秋山投手が6回5安打無失点の快投!計8奪三振だった秋山投手ですが、交代間際の6回に、ガルシア選手、岡本選手、堂上選手のクリーンアップから奪った3連続三振は圧巻でした!8回に好調・筒井投手が岡本選手に8号ソロを浴びたものの、6対1で勝っています。

12日は、エラーが4つも出て7点を献上してしまい(投手の自責点は1)、打線は3安打のみ。上本選手の二塁打と鶴岡選手の中前タイムリーで5回に1点返したのですが、反撃はこれだけ…。5回と6回を除いてはノーヒットでした。

《ファーム交流試合》6月12日

阪神-巨人 2回戦 (甲子園)

巨人 100 300 102 = 7

阪神 000 010 000 = 1

◆バッテリー

【阪神】●田面(3敗)-金田-山本-岩本 / 鶴岡-小宮山(6回~)

【巨人】長谷川(4回1/3)-○田原啓(3勝)(2回2/3)-乾(1回)-矢貫(1回) / 宇佐美-河野(8回~)

◆本塁打 岡本9号2ラン(岩本)

◆三塁打 岡本

◆二塁打 ガルシア、上本

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]一:中谷  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 1) .276

〃一:荒木  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .241

2]左:緒方  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .236

3]指:ペレス (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .333

4]中:江越  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .232

5]右:伊藤隼 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .227

6]二:上本  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 2) .292

7]三:板山  (2-0-0 / 2-1 / 1 / 1) .267

8]捕:鶴岡  (1-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .346

〃捕:小宮山 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .293

9]遊:植田  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .087

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

田面 5回 90球 (5-4-4 / 4-1 / 5.08) 145

金田 2回 21球 (1-0-0 / 1-0 / 3.06) 149

山本 1回 19球 (0-1-1 / 0-0 / 2.30) 138

岩本 1回 22球 (2-1-0 / 2-0 / 3.72) 142

試合経過

先発は田面投手。いきなりヒットと味方エラーでピンチ。
先発は田面投手。いきなりヒットと味方エラーでピンチ。
140キロ台後半をポンポンと投げ込む金田投手。
140キロ台後半をポンポンと投げ込む金田投手。
山本投手は8回に登板し、無安打無失点。
山本投手は8回に登板し、無安打無失点。
9回に登板した岩本投手は、2死二塁からカーブを2球
9回に登板した岩本投手は、2死二塁からカーブを2球
それをレフトスタンドへ…。岡本選手、2試合連続HRです。
それをレフトスタンドへ…。岡本選手、2試合連続HRです。

田面は1回、先頭のガルシアに初球を中前打され、犠打で二塁へ。さらに田面の牽制球を上本が取れず三塁へ。そこから3連続四球を与え、押し出しで先制を許します。なおも1死満塁のピンチは、6番の北を空振り三振に、和田恋は二飛(上本がお手玉してスタンドがどよめくも、再度キャッチ)に打ち取って3者残塁。よく1点でしのぎましたねえ。2回と3回は三者凡退、立ち直った田面です。

ところが4回、1死から北に中前打され、2死後に四球を与えて一、二塁。9番・重信は初球を打たせて一ゴロ…と思ったら中谷の伸ばしたグラブに触れることなく、一塁線を打球が抜けていきました(記録はエラー)。二塁から1人還って、なおも一、三塁。続くガルシアに三塁方向へライナーを打たれます。これを板山がグラブに当てながら逸らして、2者生還。記録はヒットで2点タイムリー二塁打です。

5回は2死から堂上にセカンド内野安打(上本、2度お手玉…)、北に中前打されるも、江越から三塁へボールが返ってきて堂上を挟み、板山がタッチしてアウト!田面は5回を投げて5安打4失点、自責は1回の押し出しによる1点でした。

2人目は金田。6回は三者凡退ですが、7回は先頭のガルシアをサード板山のエラー(一度はじいて、捕ってからの送球も少し逸れる)で出し、犠打などで2死三塁として4番・岡本に左中間へのタイムリー三塁打を浴びます。ただし、これもレフト緒方が追いつき、グラブに入ったと思ったら捕れていなかったもの。記録はヒットですが、金田の自責はありません。8回は山本が2死からの1四球のみで無失点。

3回無死一塁で、鶴岡選手は盗塁を助ける空振り。
3回無死一塁で、鶴岡選手は盗塁を助ける空振り。
板山選手は見事、二盗成功!まだ土煙が上がっています。
板山選手は見事、二盗成功!まだ土煙が上がっています。
その前に、チーム初ヒットの二塁打を放った上本選手が生還。
その前に、チーム初ヒットの二塁打を放った上本選手が生還。

9回は岩本が登板しています。1死から2番・藤村の二ゴロ上本が捕り、今度は悪送球。2死後に盗塁を許して、岡本には102キロのカーブをレフトスタンドへ運ばれました。第9号の2ランで2点追加。しかし岩本の自責も、やはり0点です。

一方の打線は、巨人のルーキー・長谷川の前に1回、2回と三者凡退。3回は板山が四球とを選んで初の走者となります。すかさず今季2つ目の盗塁を決め、鶴岡は死球で無死一、二塁。続く植田はバントのサイン、初球を当てて…しかしキャッチャーが捕り三塁へ、さらに一塁へ転送されて併殺。4回も三者凡退。そして5回、1死から上本が左翼線にチーム初ヒットの二塁打を放ち、2死後に鶴岡が中前タイムリー!

6回にはペレスの右前打もありましたが難なく抑えられ、結局ヒットはそれだけ。7回から9回まで、リリーフ陣にパーフェクトピッチングを許して試合終了です。

不甲斐ないけど、“意味のある負け”に

試合後は全員が一塁線上に並んで一礼。いつもは勝ちゲームの際に行っている挨拶ですが、雨の中で最後まで声援を送ってくださった多くのお客様に感謝の気持ちを伝えます。雨が強くなっていたため、ミーティングもベンチ裏の部屋で行われました。そのあとテレビのインタビュー、我々の囲み取材と続いた掛布監督の話からご紹介しましょう。

まず試合を振り返って「きょうは不甲斐ない試合で申し訳ない気持ちしかないですねえ。ミーティングでコーチから厳しい言葉もありました。これだけのファンの前でやる野球ではなかったという気がします」と掛布監督。『コーチからの厳しい言葉』については、のちほど書かせていただきます。

この日は試合に負けましたが、全員整列してお礼の挨拶。声出しは植田選手(左)です。
この日は試合に負けましたが、全員整列してお礼の挨拶。声出しは植田選手(左)です。

続けて「上本にもつまらない守りのミスがあったし、そういうとこをクリアしていかないと上で長くやれる選手になれない。本人が一番よくわかってる。もう一度、1軍に挑戦する姿を見せることが、ファームにもいい影響を与えてくれる。ファンの方には申し訳ないけど、きょうのような結果はファームにとっては“いい試合”と受け止めないといけないかな」と、自身に言い聞かせるようなコメントでした。

甲子園での巨人戦、ということに関しては?「きのうマイコラスを打って勝った。気持ちの中で、変な余裕を感じながらスタートしたような…。そういう意味では僕の甘さかもしれない。受け止め方が間違ってしまったかな。長いシーズン、こういう負けを受け止めて、あしたにつながる意味のある負けにしないと。でもジャイアンツと、いい2試合だったと思います」

今後の戦いは「とにかく1軍の勝つことが目標。そのためにファームとしては、すべて1軍につながる野球をやろうとしているので、きょうのミスを考えれば、良い野球だったと言えますね。1軍に言い選手を送りこめればいい」とのことです。

「きょうのゲームは鶴岡さまさま!」

5回のピンチは0点に抑えて戻る、笑顔の鶴岡捕手(左)と田面投手のバッテリー。
5回のピンチは0点に抑えて戻る、笑顔の鶴岡捕手(左)と田面投手のバッテリー。

続いて記者陣による囲み取材で、田面投手のことを聞かれた掛布監督は「最初はどうなるだろうという…。でもギリギリのところで踏ん張ってくれた。ゲームを壊さずに投げて。それが田面の成長。前だったら、そうはいかなかった。きょうの鶴岡、ベテランのリードなのかなと。変化球をうまく使っていた。真っすぐだけなら絶対に打たれていたでしょう。例えばカウント3-1から投げたカーブ。変化球を投げさせた勇気だよね。きょうは鶴岡さまさまじゃない?」と話しています。

その裏の攻撃で、鶴岡選手は2死二塁で鶴岡選手が中前タイムリー!
その裏の攻撃で、鶴岡選手は2死二塁で鶴岡選手が中前タイムリー!

そして「失点はエラー絡みで可哀想な部分もあった。あれだけミスすればゲームは取れませんね。できれば勝ちたかったんだけど、きのうマイコラスを打って安心してしまったかなあ」と繰り返す監督。「きょうの先発、長谷川投手って打ちづらいでしょう?なめたようなスライダーとか、やる気なさそうな雰囲気とか(笑)。ベンチで見ていても、崩すの難しいんじゃないかなと思った。つかみどころがないというか。若い選手が打つには我慢したり、難しかったと思いますね」

最後に「これだけ(お客さんが)来てくれて、いい試合と悪い試合の両方を見せた。ある意味、これがファームの試合。ミスの出るのがファームだから。ファームの試合をやらせてもらいましたね」と締めくくった掛布監督でした。

次に向けても、入りと制球が課題

1回の3連続四球に「タイミングが合わなくて、修正できず…続いちゃいましたね」と田面投手。でも押し出しの1点だけで済んだのはよかった?「そう思えばいいんですけど、内容的には」と浮かない表情を見せます。「そのあと、初回よりは修正できたかなと。3点取られた回も、もうちょっと踏ん張れるかなと思いました。カーブが結構よかった。カーブを投げると良くなったりするんですけど、鶴岡さんもそういうのをわかってくれてたみたいで」

連続四球で満塁とした田面投手。試合開始10分で早くも久保コーチの登場。
連続四球で満塁とした田面投手。試合開始10分で早くも久保コーチの登場。

1回、北選手から三振を奪ったのは?「フォークです。けっこう使い出してきて、低めに決まれば空振りも取れる。ストンと真下に落ちるんじゃなくて、ツーシーム気味。握りがフォームなのでフォークと」。なるほど。北選手の三振した球は、まさにそんな感じでした。今後に向けて「内、外と出し入れしていかないとダメですね。そういう制球が課題です。それと前回同様に入りが悪かったので、次またチャンスがあれば修正して頑張ります」と話していました。

続いて久保投手コーチの談話です。「田面、きょうはちょっと良くなかったですね。あまりこういうのを見せると不安にさせてしまう。以前の田面が顔を出すんじゃないかと危惧してしまったけど、でもまあ何とか。5回までいったというか、投げさせました。岩本は真っすぐに関しては良くなってるんだけどね。最後の三振(北選手)を取った、あれはよかった。理想的!あの形を求めてる。チェンジアップを練習していて、それがよかったですね。ただ岡本のホームランが…。2球続けてカーブを投げて打たれたのが解せん。経験がある割には、まずい攻めだったかな」

「うまく捕ろうと引いた捕球」が問題

なお試合後のミーティングでの話は、藤本守備走塁コーチに聞いています。まず内野を守っていた外野手、中谷選手と板山選手のエラーについて。

一塁コーチを務める藤本守備走塁コーチ。
一塁コーチを務める藤本守備走塁コーチ。

「アウトにするってのが前提。でもミスする形が悪すぎる。積極的なミスに関しては次につながるものなんですよ。2人とも外野手だけど、それでも2人は“引いた”から。うまく見せようとして引いた。何とかアウトにしようというのが見えなかった。上手に捕るとかは求めていない。きょうみたいなエラーは何のプラスにもならないので、しっかりゼロに戻って積極的にやってほしいと、本人たちに言いました」

また上本選手には「2つのエラーは何でもないエラー。本人も反省してると思いますが、どう生かすか。1軍であれだけやってきた選手なのでね。送球も悪いし、ボールに対する足さばきも悪い。自分でもわかっていると思います」とのことです。失点7、自責1という結果が物語るようにミスで負けたといってもいい試合でしたが、その形に問題あり、ということなんですね。

植田が“特バン”敢行、江越はそろそろ

初めて走者が出た3回、連続四死球により無死一、二塁となった場面で植田選手のバントした打球は、2-3-5と渡って併殺という最悪の結果になりました。掛布監督は「足があるので右打ちも考えたが、1軍に向けて彼がやるべきことを思ったら、ああいうプレッシャーがかかったとこで経験させていかないと。左打席では、まだ打つよりバントの方が怖いでしょうね」と言います。

3回無死一、二塁で送りバント…しかし併殺に。
3回無死一、二塁で送りバント…しかし併殺に。

さらに、掛布監督らしい気遣いもありました。「もっと楽な野球を選択してあげることもできたんですが、海くんに厳しい野球をやらせてしまった。試合が終わって今ごろ、室内でバント練習やってるでしょう。彼の野球にとってプラスにしてもらいたいね」。海くん、と呼ばれた植田選手のコメントも聞いています。

この前も失敗しちゃったし、やっぱり左打席のバントは難しい?。セーフティーは成功したけど。「そうですね。きょうのバントは弱すぎました。練習します」。三塁方向には行ったものの、勢いを殺し過ぎたかもしれませんね。掛布監督は、あえて厳しい選択をしたと。「やらないとダメですね」。この話を聞く前に、もう室内練習場で“特打”ならぬ“特バン”を「いっぱいしました。左手の握力がない…」と植田選手。次は絶対決めましょう!前日にはショートで素晴らしい守備を見せ、甲子園のお客様を沸かせていましたね。

9回裏2死で江越選手。バットを止めるもスイングを取られ、三振で試合終了。
9回裏2死で江越選手。バットを止めるもスイングを取られ、三振で試合終了。

最後に、4番・江越選手は2試合ノーヒットでしたが、掛布監督は「ゲームで結果が出ていないけど、バッティング練習ではいいか勝ちで打てるようになっていますよ。もうそろそろ出てくる。そろそろ江越が爆発する。4番にふさわしい野球をやる時期が来るんじゃないかなと思っています」と、とても前向きな言葉でした。

きのうの第2打席(2回)でも、初球を完璧に捉えた当たりがレフトポール際へ飛ぶ第ファウルとなっています。本人もポールを巻いたと確信したのでしょう。バットの放り投げ方がそんな感じで、いい写真も撮れました。冒頭のタイトル画像が逸れです。今度は一目瞭然のホームランを、ぜひ甲子園で打ってください!もちろん1軍で構いません。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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