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【史上最年少六冠ロード】藤井聡太竜王(19)王座戦本戦1回戦、大橋貴洸六段(29)との対局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月6日10時。大阪・関西将棋会館において第70期王座戦本戦トーナメント1回戦▲大橋貴洸六段(29歳)-△藤井聡太竜王(19歳)戦が始まりました。

 対局がおこなわれるのは水無瀬(みなせ)の間。ずっとネット中継を見てきた藤井ファンにとってはなじみの深い光景でしょう。将棋界序列1位の藤井竜王であれば、御上段(おんじょうだん)の間の最上席になりそうなところ。しかし現在でも中継がおこなわれる対局は、この水無瀬(みなせ)の間によく配されます。

 先に対局室に入ったのは藤井竜王。規定により上座に着きます。四段に昇段したのは藤井竜王、大橋六段ともに2006年10月。棋士番号は藤井307、大橋308です。

 続いて現れたのは大橋六段。対局時には地味な服装をする棋士が多い中で、大橋六段は独自の道を行きます。今日の上着はグレーで「あれ、今日は地味だな・・・」と筆者は第一感思いました。しかしパンツはピンク。さらにはバッグもピンクで、早くもさすがのファッションセンスを見せられた感があります。

 振り駒の結果、「歩」が2枚、「と」が3枚出て、先手は大橋六段と決まりました。大橋六段は現在藤井竜王に3連勝中ですが、それはいずれも若干不利な後手をもっての勝利でした。

「それでは時間になりましたので、大橋先生の先手番でお願いします」

 記録係が告げて、両者「お願いします」と一礼。持ち時間各5時間(チェスクロック方式)の対局が始まりました。

 大橋六段はしばし瞑目。そして初手、7筋の歩を一つ前に進め、角筋を開きます。記録された消費時間は1分51秒。チェスクロック方式のため、1秒単位でカウントされていきます。

 藤井竜王はいつものように紙コップを口にします。そしてやはりいつものように、8筋の歩を前に進めました。消費時間は39秒です。

 戦型は矢倉模様に進みました。後手の藤井竜王はオーソドックスな「金矢倉」には組まない、現代調の構えです。

 藤井竜王は先日、叡王戦五番勝負第1局で出口若武六段に勝ちました。

 通算成績は266勝52敗(勝率0.836)です。

 一方の大橋六段は174勝71敗(勝率0.710)です。

 勝率7割を超える大橋六段。いつタイトル戦に登場しても、まったくおかしくはありません。

 藤井竜王は、番勝負で敗退したことはありません。しかしノックアウト方式のトーナメントでは、1回負ければそれまでです。挑戦権をつかむまでも大変。その上で、さらにタイトルを六冠、七冠、そして八冠と増やしていくことはできるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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