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羽生善治九段(52)苦境をしのいで鮮やかに逆転! B級1組順位戦8回戦、郷田真隆九段(51)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月10日。東京・将棋会館において第81期順位戦B級1組8回戦▲郷田真隆九段(51歳)-△羽生善治九段(52歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時57分に終局。結果は84手で羽生九段の勝ちとなりました。

 リーグ成績は羽生九段3勝4敗、郷田九段1勝6敗となりました。

羽生九段、巻き返しに向けて大きな勝利

 郷田九段先手で、戦型は矢倉。対して羽生九段は急戦をにおわせる現代調の布陣です。互いにじっくりと駒組を進める進行にはならず、早い段階で戦いが始まりました。

 46手目。羽生九段は角を切って銀と刺し違えます。そして52手目、手にした銀を相手の飛車の頭、いわゆる羽生ゾーンと言われる2七の地点に打ち込んでの猛攻。

対して郷田九段は冷静にしのいで反撃に転じ、郷田九段優勢で終盤に入りました。

 63手目。郷田九段は最短の寄せを逃したようです。本譜の進行でもわるいわけではありません。とはいえ少し紛れる余地が生じ、逆転の余地を与えることになったのかもしれません。

 67手目。郷田九段は1時間13分の長考で羽生陣に香を打ち込みます。これで羽生玉は左右はさみうちの形。やはり郷田九段優勢は変わりません。

 しかし69手目。郷田九段が自陣に歩を打って相手の飛車先を止めた手が、結果的には緩手。コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は一気に逆転しました。羽生九段は手順に飛車を回り、郷田玉に照準を合わせます。

 72手目。羽生九段は金を寄せて逃げ道を開きます。絶体絶命に見えた羽生玉は上部へと逃げ出すかっこうとなり、大ピンチを脱しました。

 84手目。羽生九段は金取りに歩を打ちます。ここでは郷田玉に詰みがあったようですが、羽生九段は自玉に詰みがないことを見切っていて、勝ちに変わりはありません。

 羽生九段は苦境を逆転でしのぎ、順位戦での連敗も止めました。ここから逆転昇級に向けて、巻き返しなるでしょうか。

 羽生九段の今年度成績は18勝8敗となりました。

 羽生九段はこの先も重要な対局が続いていきます。本局の勝利は大きなはずみになることでしょう。

 郷田九段は今期順位戦まだ1勝で苦しい星取り。現在の成績は最下位です。しかし長丁場の順位戦ですので、当然まだまだ残留の可能性は残されています。

 かくして両者の85回目の対戦は終わり、通算成績は羽生57勝、郷田29勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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