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ここまで契約合意した先発投手から考える今オフの田中将大の市場価値

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズンの田中将大投手はどのユニフォームに袖を通すのか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【未だ所属先が決まらない田中投手】

 今オフにヤンキースとの7年契約が終了し、FAとなった田中将大投手の新しい所属先が未だに決まっていない。

 すでに本欄を含め多数で報じられているように、今オフは新型コロナウイルスの影響でFA市場が稀に見る停滞を続けており、今オフ一番のFA選手といわれていたトレバー・バウアー投手も、未だに所属先が決まっていない。

 米メディアの報道によれば、田中投手サイドは1年契約で1500万~2000万ドルの年俸を求めているとしているが、果たして希望通りの契約で合意することができるのだろうか。

【1月に入り7人の先発投手が契約合意】

 FA市場が停滞しているとはいえ、スプリングトレーニング開始まで1ヶ月を切る中、ここ最近は毎日のように契約合意のニュースが届くようになった。

 バウアー投手と同様に、今オフの大物FA選手の1人だったジョージ・スプリンガー選手も、ブルージェイズと6年総額1億5000万ドルで合意に達している。

 さらに1月に入り、ここまで7人の先発投手がメジャー契約で契約合意に達しており、彼らの契約内容からある程度今オフのFA市場動向を判断することができるはずだ。

 そこで下記の表をチェックして欲しい(資料元:FAN GRAPHS)。

(筆者作成)
(筆者作成)

【全員が1年契約で前年比減額に】

 表をみてもらえば明らかなように、7人の先発投手全員が前年比で減額を受けている。しかも昨シーズン1000万ドル以上の年俸だった5投手は、コーリー・クルバー投手以外すべて年俸1000万ドルを下回っている。中でもタイラー・チャッドウッド投手に至っては、前年比で77%減という大幅ダウンで契約している。

 ちなみにジョン・レスター投手も75%減の大幅ダウンになっているが、彼の場合はカブスから2021年のオプション契約分の契約解除料として1000万ドルが支払われているので、実質的な年俸は1500万ドルということになる。それでも前年比で減額している状況に変わりない。

 さらに注目すべきなのは、彼ら7人全員が1年契約で合意しているということだ。FA市場全体を見渡しても、複数年契約を結べた先発投手は、マイク・マイナー投手、クリス・フレクセン投手、有原航平投手の3人しかいない(3人とも2年契約)。ある意味有原投手の契約内容は、決して悪くなかったということだ。

【実績、評価は田中投手の方が上】

 ただ契約合意した7投手よりも、田中投手の2020年成績は明らかに上回っている。また今オフのFA市場でも『MLB TRADE RUMORS』では、先発投手部門で4番目バウアー投手、マーカス・ストローマン投手、ケビン・ゴースマン投手に次ぐ4番目の高い評価を受けていた。

 ちなみにストローマン投手とゴースマン投手は、所属チームから提示されたクォリファイングオファーを受け入れ、FA市場に回らずチーム残留を決めている。

 さらにオフシーズンが開幕して間もなく、ブレーブスがチャーリー・モートン投手とドリュー・スマイリー投手と、それぞれ1500万ドル、1100万ドルで1年契約を結んでいる。モートン投手は前年比で現状維持、スマイリー投手は175%増という例もある。

【市場動向を考えると1年1000万ドル前後か?】

 モートン投手とスマイリー投手の場合、まだFA市場の動向が固まっていないうちに契約合意しているので、むしろ彼らは幸運だったといえるだろう。

 1月に契約合意した7投手の契約内容こそ、今オフのFA市場動向を示したものであり、今後各チームの補強が進んでいけば補強予算は今後さらに減っていくため、ますます厳しい契約内容になっていくと予想される。

 つまり今オフのFA市場では、メジャー契約を結んだほとんどの先発投手が1年契約に留まり、年俸も基本的に前年比で減額を受けているというわけだ。

 そうなると、田中投手のケースも1年で1000万ドル前後の年俸になりそうで、米メディアが報じた1500万~2000万ドルの年俸を求めるのはかなり厳しいと考えるべきだろう。巨人がMLB挑戦を断念した菅野智之投手と年俸8億円で契約したことを考えれば、復帰を待ち望む楽天でも対応可能な契約内容ともいえる。

 果たして今シーズンの田中投手は、どのチームのユニフォームを着ることになるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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