米国 メキシコ国境警備パトロールに犬型ロボット導入へ:人間や犬より優れた犬型ロボットの脅威
アメリカの国土安全保障省は2022年2月にメキシコとの国境で犬型ロボットが国境警備のパトロールを行う研究をしていることを発表した。犬型ロボットはゴーストロボティクス社が開発。国土安全保障省のブレンダ・ロング氏は「メキシコとの国境は人間や動物にとっては難所であるため、人間や動物がパトロールするよりもロボットの方が適している」とコメントしている。国境警備パトロールの犬型ロボットは自律的に歩き回って警備し、リモートコントロールも可能。リアルタイムに動画を送る。武器や兵器などの搭載は明らかにしていない。
犬型ロボットによる追跡と襲撃の脅威
AI技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。ロボットは人間よりも3D業務(Dangerous:危険な、Dirty:汚い、Dull:退屈な)に優れている。疲れることもないし24時間稼働できるし、壊れたら代わりの軍事ロボットを持って来ればよい。特に国境警備は3D業務の典型であり、人間の軍人よりもロボットの方が適している。もちろん動物の犬よりも優れている。動物の犬のように餌代もかからないし、怪我もしないし、老齢化して働けなくなることもない。
ネットフリックス(Netflix)で「ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ」というアニメ番組が配信されているが、2021年12月にYouTubeで「Killer Robot Chase in the Arctic Biome Jurassic World Camp Cretaceous」という動画が公開された。キラーロボットに森で追われるという10分程度のアニメ動画である。アニメの中では主人公らが犬型キラーロボットに追われて森の中を逃げ回る様子が描かれているフィクションアニメである。このような犬型ロボットが大量に追いかけてきたら、たとえ武器を搭載していなくてもかなりの脅威だろう。
警察、収容所などでは囚人を監視するための訓練された犬がいるが、そのような警備犬はかなり恐ろしいらしい。ナチスドイツがユダヤ人殺害を目的に設置していたアウシュビッツ絶滅収容所ではナチスが訓練したシェパードがユダヤ人を嚙み殺していた。人間によって訓練された犬は、ご主人様の指示通りに敵を嚙み殺す。
AIが搭載された犬型ロボットであれば、標的を検知して認識したら襲いかかっていくのだろう。動物の犬と違って検知力も精確でロボットだから、水の中や森の深い場所など、どこまでも徹底的に追いかけてくるだろう。棒などで殴っても動物の犬のように怪我もしないし殺すこともできない。このような犬型ロボットが大量に追いかけてきたら相当な恐怖である。
レナ・コルンレイフ・ゲリッセン氏というアウシュビッツ絶滅収容所から生還してきた人が著書の中で以下のようにアウシュビッツ絶滅収容所の犬の恐怖を語っている。
犬が唸りながら私たちのそばを駆け抜けていく。娘は両手で顔を覆う。犬は胸に飛び掛かり、地面に押し倒す。娘の悲鳴が空を引き裂き、私たちの口から声にならない声を引き出し、心が粉々になる。耳をふさぐことができない。息もできない。これほど恐ろしい声はこの世にはない。娘の血まみれの腕が空を切る。犬がその喉元に食らいつく。亡くなった娘は、足で踏みつぶされた小さな蜘蛛のような格好をしている。親衛隊は犬の頭を軽く叩いている。「いい子だ」という声。犬は前足をなめている。(PP158-160)
私が心配しているのは、血の臭いのせいで犬に襲われないか、ということ。収容所の恐怖の中で犬が一番怖い。もしも犬に襲われて死ぬことになったら、叫び声を上げずに死ねますようにと祈る。(PP178-179)
レナ・コルンレイフ・ゲリッセン・ヘザー・D・マカダム著、古屋美登里訳『レナの約束』(中公文庫、2011年)
▼ゴーストロボティクス社の犬型ロボット
▼ネットフリックスのアニメ「Killer Robot Chase in the Arctic Biome Jurassic World Camp Cretaceous」