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「留学生」は「就労ビザ」取得が難しい?~「吉野家」が就労ビザを理由に就職説明会参加を断る

竹内豊行政書士
吉野家が就労ビザ取得困難を理由に留学生の就職説明会参加を断りました。(写真:イメージマート)

牛丼チェーン「吉野家」が、外国籍を理由に、学生の就職説明会への参加を断っていたことが報道され大きな反響を呼んでいます(ただし、実際に断られた女性は日本国籍)。報道によると、吉野家が主催する採用説明会を予約した女性はその翌朝、次のようなメールが吉野家から届いたというのです。

女性は、吉野家が主催する採用説明会を予約。しかし、翌朝、目を疑うようなメールが届きました。今月1日に届いたメール:「外国籍の方の就労ビザの取得が大変難しく、ご縁があり、内定となりました場合も、ご入社できない可能性がございます。従いまして、大変申し訳ございませんが、今回のご予約は、キャンセルとさせて頂きますことをご了承下さい」  「外国籍」であることを理由に、説明会への参加を一方的にキャンセルされたのです。

引用:吉野家 名前“カタカナ”で「外国籍」と判断か…「日本国籍」の就活生“拒否”で憤り

では、外国人留学生(以下「留学生」といいます)の就労ビザ(正確には「ビザ」ではなく「在留資格」といいます)の取得は実際に難しいのでしょうか。

留学生が日本で就職するには在留資格を変更しなければならない

留学生が大学や専門学校を卒業して、引き続き日本に在留して就職するためには、在留資格「留学」から就労可能な在留資格へ変更しなければなりません。そのため、内定を得た留学生は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署へ在留資格変更許可申請を行い、就労可能な在留資格へ変更許可を得た後、就職することとなります。したがって、内定を得ても就労可能な在留資格への変更許可が得られなければ就職できないことになります。

許可には「相当の理由」が必要

出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます)は、在留資格の変更の許可要件について、在留資格の変更申請をした外国人が提出した文書により、在留資格の「変更を適当と認めるに足りる相当の理由」があるときに限り、これを許可することができると定めています(入管法20条3項)。そして、出入国在留管理庁は、「在留資格の変更,在留期間の更新許可のガイドライン」において、「この相当の理由があるか否かの判断は、専ら法務大臣の自由な裁量に委ねられ、申請者の行おうとする活動,在留の状況,在留の必要性等を総合的に勘案して行っている」とした上で、この判断にあたって考慮する事項を公表しています。

留学生が就労可能な在留資格へ変更許可を得るポイント

留学生が就労可能な在留資格へ変更許可を得るためのポイントはいくつかありますが、その内の一つとして、留学して大学等で修得した知識が、就職して実際に行う職務内容と関連性があることが挙げられます。したがって、例えば、経営学部を卒業した留学生が、就職先でマーケティングを行うのであれば関連性があると認められると考えられますが、システムエンジニアを行うのであれば関連性があるとは認められず不許可となる可能性が高いと考えられます。なお、受入機関である企業等は、就職した外国人に対して「日本人と同等以上」の給与を支払うことも許可要件の一つです。

就労可能な在留資格への許可率は約80%

令 和 元 (2019)年 に お い て、「 留 学 」 等 の 在 留 資 格 を も っ て 在 留 す る 外 国 人が日本 の 企 業 等 へ の 就 職 を 目 的 と し て行 っ た 就労可能な在留資格へ変更するために行った在 留 資 格 変 更 許 可 申 請 に 対 し て 処 分 し た 数 は38,711人 で 、こ の う ち 30,947人 が 許 可 さ れ ています(以上、出入国在留管理庁「令 和 元 年 に お け る 留 学 生 の 日 本 企 業 等 へ の 就 職 状 況 に つ い て」より)。許可率は79.94%で変更許可申請を行った約8割の留学生が就労可能な在留資格(その約9割が在留資格「技術・人文知識・国際業務」)を許可されています。

以上ご覧いただいたとおり、留学生の素行に問題がなく、大学等で修得した知識が就職先で活かすことができるのであれば、就労可能な在留資格への許可が得られる可能性が高いと考えられます。そして、実際に変更許可申請を行った約80%が許可されています。

大学等で修得した技術や知識を活かして企業の戦力として活躍している外国人労働者はもちろん大勢います。その外国人労働者を戦力として活かし、企業の発展につなぐことができるかは、受け入れる企業の入管法の理解にかかっているとも言えるのではないでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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