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高等教育の無償化・専門家の私がガイドします!大学・専門学校生・高3は4月手続き絶対に#虐待被害者 も

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

大学・専門学校生のみなさん、そして保護者のみなさん、ご入学・新学年おめでとうございます!

この記事を読んで条件にあてはまる場合には、4月に必ず高等教育の無償化(高等教育の修学支援)の手続きをしましょう。

新高校3年生の方は、大学・専門学校進学のために、この4月に予約申し込みができますので、やはり忘れずに手続きしましょう!

記事トップのQRコードから、文部科学省 高等教育の修学支援LINEアカウントに登録しておくとサクサクと情報が得られますので、すぐに登録おすすめします(YouTubeチャンネルで、わかりやすい説明動画も見ることができます)。

※なおこの記事の最後には、虐待被害者が高等教育の無償化を受けるためのアドバイスを示しています。

該当する方は、すぐに大学・専門学校は学校の奨学金担当の窓口(新高3は学校の信頼できる先生や、事務室の先生に相談しましょう)。

1.高等教育の無償化、どんな制度か?

・授業料の減額・免除と返済不要の奨学金が受けられる!

住民税非課税世帯の大学生・専門学校生が受給対象

 4人家族の場合、おおむね年収380万円未満世帯ですが、子の年齢や家族構成によって所得制限は変化します。

 まず日本学生支援機構の進学資金シミュレーターから、利用できそうかを確認します。

 またコロナ禍の影響で、最近、家計が急変し、おおむね年収380万円未満に収入が落ち込んだ場合にも申し込みができます。

・社会的養護(児童養護施設、里親養育等)の大学・専門学校生(新高3も)が受給対象

※文部科学省による説明動画はこちら

2.どうやって申し込むのか?

ステップは3つです。

(1)学校が高等教育の無償化の対象になっているか確認する(学校のHP等から確認、または文部科学省による対象校リストから確認、Excelファイル)。

(2)日本学生支援機構のシミュレーターで家族構成・家計収入を入力、条件にあてはまるかを確認する。

(3)大学・専門学校で書類をもらって学校の確認ののち、日本学生支援機構スカラネットからオンライン申込する。

 (新高3は高校で書類をもらって、学校の確認ののち無償化のオンライン申し込みをする。)

文部科学省による動画説明はこちら

前半5分が新高3向けの説明、後半6分程度が大学・専修学校在学者向けの説明になっています。

とてもわかりやすいです!

文部科学省・高等教育の修学支援新制度YouTubeチャンネルより
文部科学省・高等教育の修学支援新制度YouTubeチャンネルより

申し込みには必要な書類があるので、確認しながら進めること。

書類の取得方法がわからない・遅れそうな場合にも学校に相談を。

今年は、大学・専門学校での説明会が開催されるケースも多いです。

私の勤務する日本大学文理学部では4月6日と4月11日に説明会が開催されます。

大学・専門学校に電話やメールなど説明会の有無や日程を確認してみましょう。

また、アルバイトや引っ越しなどで忙しい場合もあるでしょうが、なるべく参加しましょう。

どうしても都合がつかず参加できない場合にも、学校側は個別に説明・相談してくれますので、その場合にも相談です。

※生活が厳しい学生さんは、とにかく学校のやさしい職員さんや信頼できる先生に相談するのが基本です。やさしい職員さんや先生の名前は覚えておくようにして、早めに相談できるようになるといいですね。

3.なぜ4月に申し込まないといけないのか?

大学・専門学校生の次の申し込みは9月です。

いま申し込まなければ半年間、損をします。

せっかく返さなくてよい奨学金や授業料免除があるのですから、必ず利用しましょう、そしてしっかり学び、卒業して社会で活躍しましょう!

4.高等教育の無償化、利用の注意点は?

・在学申し込みができるのは2浪生までです(3浪生以上は高等教育の無償化は受けられません、学校の授業料免除制度や貸与奨学金を利用することになります)

・支援を受け続けるための成績要件があります(大学では取得単位数が年間31単位程度の「標準取得単位」を下回る場合など)。

・留年した場合には、高等教育の無償化は打ち切りとなってしまいます。

※心配な方、詳しい基準は文部科学省・高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)をご確認ください。

浪人要件、成績要件が厳しすぎる、苦しい家計を支えるためにアルバイトをしていたら成績要件を満たさなかったり、留年してしまったら、高等教育の無償化が打ち切られるのはおかしい、私もそう思います。

これについては、文部科学省だけでは改善できません。

この仕組みを決めた与党(自民党・公明党)にも早急な改善をお願いしていきますが、ルールはルールです。

貸与奨学金も併用してアルバイト時間数を減らして勉学に専念する、留年になる前に1年休学してお金を貯めて復学するなど、学校の教職員含め信頼できる大人とも相談しながら、計画的に大学・専門学校生活を過ごすことが重要です。

5.虐待被害者が高等教育の無償化を受けるためには?

実は高等教育の無償化は、虐待被害者にも適用される場合があります。

高等教育の無償化を担当する日本学生支援機構では以下の場合、父母ではなく学生本人を「生計維持者」とする方式を採用しています。

○家庭内暴力(DV等)により父母と別居している場合

※ほかにも父母と死別し祖父母や兄弟姉妹等から援助を受けられない、学生結婚で自身が配偶者を扶養しているなどのケースの認定が示されています。

くわしくは日本学生支援機構のホームぺージよりご確認ください。

学生自身が「生計維持者」であり、所得要件を満たしている場合には、もちろん高等教育の無償化の対象となります。

警察への相談票、高校の先生や高校のソーシャルワーカーなど児童虐待の事実を知っている人への相談歴、児童相談所の担当者への相談歴など「特別な事情の説明」が必要です。

学校の担当者から、日本学生支援機構もしくは文部科学省に直接確認してもらうことも重要です。

当事者の経験談も参考になります(たとえばゆきこさんによる「未成年・学生のための家出戦略」「何もわからない人向けの奨学金の話」)。

私の願いはたったひとつ、学びたいみなさんが、安心して学び続け、卒業し、活躍したり自分らしい人生を送ることです。

この記事の情報も参考に、利用できる支援制度につながってください!

応援しています!

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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