なぜメッシはパリSGを選んだのか?ネイマールとの”再会”と豪華攻撃陣形成の可能性。
新たな時代が、訪れようとしているのかもしれない。
先日、リオネル・メッシのバルセロナからの退団が発表された。昨季限りでバルセロナとの契約が満了を迎えていたメッシは、新契約締結に向けて交渉を続けていたが、最終的には選手登録の問題などが障害となり退団が決まった。
メッシは昨年夏、バルセロナからの退団を申し出ていた。自身の契約に2019−20シーズン終了時に希望すれば退団できる条項があると主張し、弁護士を通じてBurofax(ブロファックス/内容証明郵便)でそれをクラブに伝えたのだ。
ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長とメッシの関係は最悪だった。エルネスト・バルベルデ元監督の実質上の解任、チャンピオンズリーグでのバイエルン・ミュンヘン戦の大敗(2−8)、ルイス・スアレスの突然の退団…。メッシの我慢は限界に達していた。
昨年夏、メッシは残った。しかし、今夏は残留を望みながらバルサを去ることになった。彼は、2度裏切られ、それでも前を向いて移籍先を決めようとしていた。
■パリSGとバルセロナの関係性
そのメッシに、強い関心を寄せていたのがパリ・サンジェルマンだ。
バルセロナの“弱体化”の遠因はパリSGにあると言っても過言ではない。言わずと知れた、2017年夏のネイマールの移籍である。当時、バルセロナにはメッシ、スアレス、ネイマールと最高級のアタッカーが揃っていた。「MSN」と称された3トップはスペインと欧州中の脅威になっていた。だがネイマールの契約解除金2億2200万ユーロ(約288億円)がパリSGによって支払われ、一瞬にして世界が変わってしまった。
バルセロナのような伝統あるクラブが、新興勢力の象徴であるパリSGに、主力を引き抜かれる。その衝撃は大きかった。以降、バルセロナはウスマン・デンベレ(2017年夏加入/移籍金1億500万ユーロ/約136億円)、フィリップ・コウチーニョ(2018年1月加入/移籍金1億4000万ユーロ/約181億円)、アントワーヌ・グリーズマン(2019年夏加入/契約解除金1億2000万ユーロ/約156億円)と次々にネイマールの代役を獲得したものの、その穴を埋めることはできなかった。
「クラブは目標を達成するために水面下で動いている。時々、こういうチャンスが訪れる。何か情報があれば、なるべく早く発表したい。すべての可能性を模索している。(メッシ獲得は)その可能性のひとつだ」
これはマウリシオ・ポチェッティーノ監督の言葉である。指揮官が認めていたように、パリSGは虎視淡々と機会をうかがっていた。
2011年にナセル・アル・ケライフィ会長が就任してから、パリSGは毎年のように大型補強を行ってきた。最初の補強は、ハビエル・パストーレだった。奇しくも、メッシと同じくアルゼンチン人である。パリSGはパルマに移籍金4200万ユーロ(約54億円)を支払い、将来を嘱望されていたパストーレを引き入れた。その夏、パリSGは補強に1億700万ユーロ(約131億円)を投じた。前年の夏に比べ、その夏の補強費は9800万ユーロ(約128億円)増だった。
以降、2011年から2021年にかけて、パリSGは13億9100万ユーロ(約1808億円)を補強に投じている。オイルマネーと“国家クラブ”の恐ろしさを、ヨーロッパのクラブは身をもって知ることになった。
ネイマール、キリアン・エムバペ、アンヘル・ディ・マリア、マウロ・イカルディ、マルコ・ヴェッラッティ、マルキーニョス…。パリには、スター選手たちが揃っている。
加えて、この夏、セルヒオ・ラモス、アクラフ・ハキミ、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ジャンルイジ・ドンナルンマが到着した。メッシが加入すれば、まさに“ドリームチーム”の陣容だ。
パリSGはメッシに年俸3500万ユーロ(約45億円)、2年契約+1年延長オプションのオファーを準備したようだ。ネイマールやエムバペに匹敵、あるいはそれを超える年俸額である。このクラブが目指すのは、当然、チャンピオンズリーグ制覇だ。その本気度に、もはや疑いの余地はない。