超加工食品の摂取がお腹の赤ちゃんのアトピーリスクを高める可能性
【妊娠中の食生活が赤ちゃんの肌に与える影響】
妊娠中のお母さんの食生活が、生まれてくる赤ちゃんの健康に大きな影響を与えることは、多くの研究で明らかになっています。特に近年、アトピー性皮膚炎(以下、アトピー)との関連が注目されています。
アトピーは、乾燥してかゆみのある赤い肌が特徴の慢性的な皮膚の炎症です。赤ちゃんの5人に1人が発症するとも言われる、とても身近な皮膚疾患です。
韓国で行われた最新の研究では、妊娠中のお母さんの食生活、特に超加工食品の摂取量が、生まれてくる赤ちゃんのアトピー発症リスクと関連していることが分かりました。
【超加工食品とは? 妊婦さんの摂取量の実態】
超加工食品とは、工業的に加工された食品のことを指します。具体的には、インスタント食品やスナック菓子、清涼飲料水などが該当します。これらの食品は便利で美味しいものが多いですが、栄養面では問題があると指摘されています。
研究では、妊婦さんの1日の総エネルギー摂取量のうち、平均12.4%が超加工食品由来だったそうです。この数字は、アメリカ(54.4%)やノルウェー(31.8%)と比べるとかなり低いものの、決して少なくない量と言えるでしょう。
日本の状況はどうでしょうか。残念ながら、妊婦さんに特化した調査結果は見当たりません。ただ、一般成人を対象とした調査では、1日の総エネルギー摂取量の約17.8%が超加工食品由来だったという報告があります。
日本人の食生活は比較的健康的だと言われていますが、超加工食品の摂取量は決して少なくありません。特に若い世代では、コンビニ食やファストフードの利用頻度が高い傾向にあります。妊婦さんも例外ではないでしょう。
【研究結果から見えてきた超加工食品とアトピーの関係】
韓国の研究チームは、816組の母子を対象に調査を行いました。その結果、妊娠中に超加工食品からのエネルギー摂取量が最も多かったグループ(総エネルギー摂取量の15.5%以上)では、最も少なかったグループ(6.8%以下)と比べて、生まれた赤ちゃんが1歳までにアトピーを発症するリスクが2.19倍も高くなることが分かりました。
この関連性は、お母さんの年齢や体格、家族の収入レベル、喫煙状況、アレルギー歴などの要因を考慮しても変わりませんでした。さらに、全体的な食事の質を表す指標(韓国版健康的食事指数)で調整しても、超加工食品とアトピー発症リスクの関連は維持されたのです。
では、なぜ超加工食品の摂取がアトピーのリスクを高めるのでしょうか。研究チームは、以下のような可能性を指摘しています:
- 超加工食品に含まれる添加物や保存料が、赤ちゃんの免疫系に影響を与える可能性がある
- 超加工食品に多く含まれる糖分や不健康な脂肪が、体内の炎症を促進する可能性がある
- 加工過程で生成される物質(例:糖化最終生成物)が、免疫反応に影響を与える可能性がある
ただし、これらはあくまで可能性の段階であり、詳細なメカニズムの解明には更なる研究が必要です。
この研究結果は、妊婦さんの食生活が赤ちゃんの健康に大きな影響を与えることを改めて示しています。特に、超加工食品の摂取を控えめにすることが、赤ちゃんのアトピー予防につながる可能性があります。
もちろん、完全に超加工食品を避けることは現実的ではありませんし、必要もないでしょう。大切なのは、バランスの取れた食生活を心がけることです。新鮮な野菜や果物、タンパク質源としての魚や肉、良質な脂肪を含むナッツ類など、できるだけ自然に近い形の食品を中心に食事を組み立てることをおすすめします。
妊娠中の食事について不安がある場合は、産婦人科医や栄養士に相談するのも良いでしょう。専門家のアドバイスを受けながら、赤ちゃんとお母さん、両方の健康を守る食生活を目指しましょう。
最後に、この研究はあくまで韓国で行われたものであり、日本人を対象としたものではありません。食文化や生活習慣の違いを考慮すると、結果をそのまま日本に当てはめることはできません。日本人を対象とした同様の研究が行われることを期待したいと思います。
参考文献:
Jang et al. Nutrition Journal (2024) 23:67
https://doi.org/10.1186/s12937-024-00969-7