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「A’s ローレアーノはレーザービームというよりバズーカ?」 豊浦彰太郎の観戦記@MLB.com

豊浦彰太郎Baseball Writer
東京でのプレシーズンマッチでも好プレイを披露した(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

MLB.comのストリーミングで、アスレチックス対レッドソックス戦を観戦した。アスレチックスが、4本の本塁打と今季から先発ローテーション入りしたアーロン・ブルックスの6回無失点の好投で、7対0でディフェンディング・ワールドチャンピオンを圧倒した。しかし、この試合最大の見せ場は、2回表にアスレチックスのセンター、ラモン・ローレアーノが決めた本塁捕殺だった。

この場面はアスレチックスの公式ツイッターで確認できる。一死からザンダー・ボガーツが二塁打で出塁。続くミッチ・モアランドが中前に弾き返すとボガーツは当然のことながら本塁生還を狙ったが、アスレチックスのローレアーノのノーバウンドのバックホームで憤死となった。このプレイはチャレンジの対象になったが、判定は覆らなかった。

しかし、ぼくが感銘を受けたのはこれだけではなく、その直前のボガーツの右中間ダブルに対するローレアーノのプレイも同様だった。

彼は、ボガーツの放った右中間を抜けていきそうな鋭いグラウンダーをスライディングしながら止めると、完全に立ち上がる前の体勢のまま反対方向の二塁ベースに向け矢のような送球を送ったのだ。ここで強調しておきたいのだが、ローレアーノは右投げだ。右中間の打球を体勢を崩してなんとか押さえた状態での二塁への送球はもっとも難しい。結果的に、送球はハーフバウンドになり、ベースカバーの遊撃手マーカス・セミエンは必ずしも守備の名手ではないためこれを捕球することはできなかったが、タイミング的にはアウトだった。

ローレアーノは昨年8月3日にメジャーデビューした。同月12日のエンジェルス戦では、左中間の大飛球を捕球するとそこから一塁に(これも反対方向だ)ノーバウンドの送球で一塁走者を刺した。このプレイは全米でバズった。

強肩の外野手というと、日本のファンは「レーザービーム」イチローを想起するだろう。彼の場合は、地肩の強さというより捕球時に送球に最適な体勢を確保するアジリティと、送球自体の正確さ、とっさの判断力の秀逸さが印象的だが、ローレアーノはもっと野性的だ。その点では、昨年殿堂入りを果たしたブラディミール・ゲレーロや、ボビー・アブレユに近いが、時として大暴投もあった彼らよりは洗練されている。

ローレアーノは、先月の東京での開幕戦シリーズでもプレシーズンマッチを含め全4試合に出場したので、記憶しているファンも多いだろう。

現在24歳のローレアーノ、将来大スターになるほどの器ではないが、アクロバティックなプレイで地元オークランドでは人気者だ。守備で名を売るが、ちなみにこの試合でアスレチックスが放った4本の本塁打のうちの一本は、ローレアーノの今季第1号だった。

東京シリーズでは2連敗を喫したアスレチックスだが、米本土開幕後は巻き返し、この日の勝利で4勝3敗と勝ち越しに転じた。一方のレッドソックスは昨季は圧倒的な強さを見せたが、今季ここまではまさかの1勝4敗スタートだ。

2019年4月1日 於 : オークランド・コロシアム

OAK 7 ー 0 BOS

W : A・ブルックス 1勝0敗

L : D・プライス 0勝1敗

HR : K・デービス(5) R・ローレアーノ(1) C・ピンダー(1) M・チャップマン(2)

試合時間 : 2時間42分

観客 : 12,417

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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